デイリー・シネマ

映画&海外ドラマのニュースと良質なレビューをお届けします

日本映画レビュー

映画『ほつれる』あらすじと感想/繋がってもすぐにほつれる人間関係をソリッドに描いた加藤拓也の二作目の長編映画

『ドードーが落下する』で第67回岸田國士戯曲賞に輝いたのを始め、演劇やテレビ脚本でいくつもの受賞歴を誇る劇団た組主宰、わをん企画代表、加藤拓也の二作目の長編映画監督作品『ほつれる』。 youtu.be 夫と冷え切った関係にある綿子は、友人の紹介で知り…

映画『初春狸御殿』あらすじと感想(木村恵吾)若尾文子、市川雷蔵、勝新太郎等、若手オールスターが勢揃いした愉快な和製オペレッタ

京都文化博物館フィルムシアターで開催されている特集上映「映画の中の少女たち」。その中から、2023年9月27日(水)、30日(土)に上映される1959年大映作品『初春狸御殿』を取り上げたい(上映時間は京文博公式HPでご確認ください)。 『初春狸御殿』は、和…

映画『ピストルライターの撃ち方』あらすじ・感想/2度目の原発事故が起こった地方を舞台に閉塞感の中でもがく人々を描く

映画『ピストルライターの撃ち方』は2023年6月17日より渋谷ユーロスペース他にて全国順次公開! www.youtube.com 映画『ピストルライターの撃ち方』は、遠くない未来に、再び原発事故が起こったある地方を舞台に、社会の底辺でもがきながら生きる人々の姿を…

映画『波紋』(2023)あらすじ・感想・解説/人間の本音をあぶり出す荻上直子監督による痛烈なブラック・コメディー

『かもめ食堂』(2005)、『彼らが本気で編むときは、』(2017)の荻上直子が監督・脚本を手がけた映画『波紋』は、日本社会が抱える様々な問題を背景に、誰もが心の中に持つ本音をあぶり出したブラック・ユーモアたっぷりのヒューマンドラマだ。 youtu.be 震災…

映画『ストレージマン』あらすじ・感想/パンデミックが顕にした社会のひずみと人間の弱さを描くソーシャルスリラー

映画『ストレージマン』(萬野達郎監督)は2023年5月20日(土)より 池袋シネマ・ロサにて2週間劇場公開! youtu.be コロナ不況のため仕事を解雇された森下は、住む家も家族も失い、トランクルームで息を潜めながら生活をするようになる—。しかしトランクルー…

映画『ハマのドン』あらすじ・感想/カジノ誘致問題で権力の暴走に警鐘を鳴らす“ハマのドン”こと藤木幸夫を追ったドキュメンタリー映画

映画『ハマのドン』は2023年5月5日(金・祝)より新宿ピカデリー、ユーロスペース、なんばパークスシネマ、MOVIX堺 5月6日(土)より第七藝術劇場、5月19日(金)より京都シネマ、5月20日(土)より元町映画館ほかにて全国順次公開! youtu.be カジノ誘致問題に揺…

【4Kデジタル完全修復版】映画『ツィゴイネルワイゼン』あらすじ・感想/何度もぞっとさせられる鈴木清順美学の最高峰

鈴木清順監督作品『ツィゴイネルワイゼン』の4Kデジタル完全修復版が、鈴木の生誕100年を記念し2023年4月15日より東京・ユーロスペースで公開されている。 『ツィゴイネルワイゼン』(1980)、『陽炎座』(1981)、『夢二』(1991)の三作品は「浪漫三部作」と呼ば…

映画『道草』あらすじ・感想/片山亨監督が主人公の売れない画家を通して描いたものとは!?

映画『道草』は2023年4月8日(土)より大阪シネ・ヌーヴォ、6月3日(土)より神戸・元町映画館にて公開! youtu.be (シネ・ヌーヴォでは片山享監督の2022年制作作品『わかりません』、『とどのつまり』と共に「片山享特集上映」として上映されます。詳しくは…

【Nikkatsu World Selection】映画『幕末太陽傳』あらすじ・感想/フランキー堺の身のこなしが秀逸な川島雄三の代表作

日活110周年記念特集上映「Nikkatsu World Selection」が全国の映画館で順次開催されている。(関西では大阪・シネ・ヌーヴォにて4月8日(土)~21日(金)の期間、神戸・元町映画館にて5月13日(土)~26日(金)の期間、それぞれ上映される。上映時間は各映画…

映画『ナナメのろうか』あらすじ・感想/姉妹と思い出の家がもたらす極めて刺激的な映画体験

映画『ナナメのろうか』は2023年5月26日(金)より出町座、5月27日(土)より元町映画館にて上映! 長編映画第一作『ある惑星の散文』がフランスのベルフォール国際映画祭やアメリカポートランド美術館で上映されるなど、その豊かな映画表現とロケーションから着…

映画『洲崎パラダイス 赤信号』あらすじ・感想/”境界線”に立ち寄る男女を見つめる川島雄三の代表作

2023年2月26日(日)~4月22日(土)の期間、ラピュタ阿佐ヶ谷で特集上映「映画監督 川島雄三 才気煥発の極み」が開催されている。 上映される37作品の中から、今回は1956年の作品『洲崎パラダイス 赤信号』を取り上げたい。 洲崎遊廓の入口の飲み屋周辺に…

【大映4K映画祭】映画『赤い天使』あらすじ・感想/増村保造&若尾文子コンビの映画史に残る壮絶な反戦映画

「大映4K映画祭」が全国の映画館で順次開催されている。 大映4K映画祭|トップ その中から今回は1966年の作品『赤い天使』を取り上げたい。 youtu.be 日中戦争を題材にした有馬頼義の原作を笠原良三が脚色、増村保造が監督した壮絶な反戦映画だ。 増村監督…

映画『人生劇場 飛車角』あらすじ・感想/鶴田浩二、高倉健主演の「東映やくざ路線」の先駆的作品を考察する

映画『人生劇場 飛車角』は、昭和8年(1933年)に発表された尾崎士郎の『人生劇場 残侠篇』を原作に、沢島忠が監督を務めた1963年制作の作品だ。 これまでの『人生劇場』の映画化作品とは違い、本作は、小説では脇役だったやくざの飛車角が主人公として描かれ…

映画『エゴイスト』あらすじと考察/鈴木亮平と宮沢氷魚によるクィア映画が描く「愛」について

『羽生結弦は助走をしない』などの作品で知られるエッセイスト・高山真の自伝的小説『エゴイスト』を、『トイレのピエタ』(2015)、『ハナレイ・ベイ』(2018)の松永大司監督が映画化。 (C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会 ファッション誌の編…

映画『生きててごめんなさい』あらすじと感想/黒羽麻璃央・穂志もえかW主演で描く「生きづらさ」のドラマに漂うもの

『新聞記者』(2019)、『余命10年』などの藤井道人が企画・プロデュースを務め、現代の日本の若者たちが抱える「生きづらさ」に焦点を当てた映画『生きててごめんなさい』。 (C)2023 ikigome Film Partners 藤井監督の下で多くの作品に携わり、綾野剛主演ドラ…

映画『#マンホール』あらすじと感想(ネタバレなし)/ 中島裕翔の熱演が光るソリッドシチュエーションスリラー

結婚を明日に控えるエリート会社員は、同僚たちに呼び出され、独身最後の飲み会に参加するが、帰宅中、マンホールに落ちてしまう。SNSを駆使してなんとか脱出しようと試みる彼だったが、思いもよらぬ展開が待っていた。 youtu.be 「Hey! Say! JUMP」の中島裕…

【大映4K映画祭】映画『祇園囃子』(溝口健二)あらすじと感想/木暮美千代と若尾文子の共演で魅せる京都・花街の物語

「大映4K映画祭」が全国の映画館で順次開催されている。 大映4K映画祭|トップ その中から今回は【大映4K映画祭関連企画 「Road to the Masterpieces」】で上映される1953年の映画『祇園囃子』を取り上げたい。 youtu.be 『祇園囃子』は、『オール読物』に…

【大映4K映画祭】『しとやかな獣』あらすじ・感想/川島雄三が描く団地映画の最高峰

「大映4K映画祭」が全国の映画館で順次開催されている。 その中から今回は1962年の作品『しとやかな獣』を取り上げたい。 youtu.be 映画『しとやかな獣』は、『幕末太陽傳』(1957)などで知られる川島雄三監督の代表作のひとつ。 団地の一室を舞台に、エゴイ…

【大映4K映画祭】映画『近松物語』あらすじ・感想/溝口健二による道ならぬ恋の美学

「大映4K映画祭」が全国の映画館で順次開催される。 youtu.be その中から今回は溝口健二の1954年の作品『近松物語』を取り上げたい。 原作は近松門左衛門の“姦通もの”の人形浄瑠璃「大経師昔暦」。川口松太郎が劇化したものを、依田義賢が脚本に仕上げた。 …

映画『恋のいばら』あらすじと感想/城定秀夫監督が松本穂香、玉城ティナ主演で描く「いばら姫」からの脱却

一人の男性と、その元恋人、そして現在の恋人による奇妙な三角関係を描く映画『恋のいばら』。 www.youtube.com 2004年に制作された香港映画『ビヨンド・アワ・ケン』(原題:公主復仇記、Beyond Our Ken)を『アルプススタンドのはしの方』(2020)の城定秀夫…

映画『そして僕は途方に暮れる』あらすじと感想/三浦大輔監督が藤ヶ谷太輔主演で描く逃避行の行き着く先

三浦大輔が作・演出を務め、アイドルグループ「Kis-My-Ft2」の藤ヶ谷太輔が主演し、2018年に上演された舞台を三浦自身が映画化。 www.youtube.com きまずい状況になるとすぐに逃げだすフリーターの男性・裕一を舞台と同じく藤ヶ谷が演じ、裕一の恋人役の前田…

映画『ジャパニーズスタイル/Japanese Style』あらすじと感想/吉村界人と武田梨奈が”終わらせる旅”に出る年の瀬ロードムービー

俳優の吉村界人と武田梨奈が自ら企画し、主演を務めた映画『ジャパニーズスタイル/Japanese Style』は年の瀬を突っ走るロードムービーだ。 www.youtube.com 亡くなった妻の肖像画を完成させたいのにどうしても瞳を書き込めない画家の男が、偶然妻とよく似た…

映画『簪』(清水宏監督)あらすじと感想/田中絹代主演で描く温泉宿を舞台にした清水流”ヴァカンス映画”

ラピュタ阿佐ヶ谷でモーニングショーとして「田中絹代」特集が組まれている。その中から清水宏の1941年の作品『簪』を取り上げたい(ラピュタ阿佐ヶ谷での上映期間は2023年1月29日~2月4日 詳しくは劇場HPをご覧ください)。 ©1941 松竹 井伏鱒二の小説集『…

映画『按摩と女』あらすじと感想・評価/清水宏が描く日本の“ヴァカンス映画”

早稲田松竹で「清水宏特集」が開催されている(2023年1月6日まで) wasedashochiku.co.jp 上映される4作品の中から今回は『按摩と女』(1936)を紹介しよう。 映画『按摩と女』は、温泉場で働く按摩が東京から来たいわくありげな女にほのかな恋心を抱くさまを…

映画『有りがたうさん』(清水宏)あらすじ・感想/上原謙がバスの運転手を演じるユーモラスな作品から見えてくるもの

2022年12月31日~2023年1月6日の期間、早稲田松竹で「清水宏特集」が開催される。 清水宏監督特集 | 早稲田松竹 official web site | 高田馬場の名画座 上映される4本の作品の中から今回は『有りがたうさん』(1936)を紹介しよう。 川端康成の掌篇「有難う」…

映画『風の中の子供』あらすじ・感想/坪田譲治の同名作品を映画化した清水宏の代表作

2022年12月31日~2023年1月6日の期間、早稲田松竹で「清水宏特集」が開催される。 清水宏監督特集 | 早稲田松竹 official web site | 高田馬場の名画座 上映される4本の作品の中から今回は『風の中の子供』(1937)を紹介しよう。 児童文学者・坪田譲治が「東…

映画『やくたたず』感想・レビュー /三宅唱の驚くべき長編監督作品第1作

映画『ケイコ目を澄ませて』が2022年12月16日(金)よりテアトル新宿、シネ・リーブル梅田他にて全国ロードショーされる三宅唱が2010年に撮った長編監督作品第1作。 youtu.be 一面雪に覆われた札幌郊外を舞台に、若者たちの生命の息吹を美しいモノクロームの映…

『夜の罠』(日本映画・大映)、『黒い天使』(米)あらすじ・感想/ 同じ作品を原作とした2本の映画

映画『夜の罠』は、渋谷シネマヴェーラで開催の「大映80周年記念KADOKAWA✕名画座連動企画 日本のマストロヤンニ 船越英二」(2022年12月3日~12月23日)にて上映! 富本壮吉監督、若尾文子主演の1967年製作の大映映画『夜の罠』はサスペンス作家として知られ…

映画『ある男』あらすじ・感想・評価 / 平野啓一郎の原作を妻夫木聡✕窪田正孝✕安藤サクラで描く

第70回読売文学賞を受賞した、平野啓一郎の同名小説を、『愚行録』(2017)の石川慶(監督)、向井康介(脚本)コンビで映画化。 www.youtube.com ある男性と再婚した女性は、家族4人で幸せな暮らしを送っていたが、夫が事故で急死。親族に連絡を取ると、夫は…

映画『猫と庄造と二人のをんな』あらすじ・感想/森繁久彌、山田五十鈴、香川京子で描く嫉妬と確執の三角関係

映画『猫と庄造と二人のをんな』(1956)は神保町シアターの特集企画「没後10年 女優・山田五十鈴」(11月26日~12月23日)にて上映! 谷崎潤一郎が昭和11(1936)年、雑誌「改造」に発表した小説を、文芸作品で定評のある豊田四郎監督、八住利雄脚色で映画化。…