デイリー・シネマ

映画&海外ドラマのニュースと良質なレビューをお届けします

【Netflix配信】映画『ヴォルーズ』あらすじと感想/泥棒のプロの女性たちが活躍する緩く軽やかなフランス製アクション映画

どんなものでも盗み出してきたプロフェッショナルな泥棒であるキャロルは、あることをきっかけに引退を決意する。長年コンビを組んで来た相棒のアレックスと新しく引き入れた運転手役のサムと共に、最後の仕事としてコルシカ島にある修道院に向かうが・・・。

 

映画『ヴォルーズ』は、俳優として目覚ましい活躍をする一方、監督としても評価の高いメラニー・ロランが監督・主演を務めたフランス製のコミカルなアクション映画だ。

youtu.be

『ファイブ・デビルズ』(2021)、『そんなの気にしない』(2022)のアデル・エグザルコプロスメラニー・ロランの相棒に扮し、名優イザベル・アジャーニが彼女たちのボスであるゴッドマザーに扮している。

 

「ヴォルーズ(Voleuses)」はフランス語で「泥棒たち」の意。2023年11月1日よりNetflixにて配信中

目次

映画『ヴォルーズ』作品情報

(c)IMDb

2023年製作/114分/フランス映画/原題:Voleuses/配信:Netflix

監督:メラニー・ロラン 脚本:メラニー・ロラン、クリストフ・デランド、セドリック・アンジェ

出演:アデル・エグザルコプロスメラニー・ロラン、マノン・プレシュ、イザベル・アジャーニ、フェリックス・モアティ、フィリップ・カトリーヌ  

 

映画『ヴォルーズ』あらすじ

(C)Netflix

任務を終えたキャロルは、袋一杯のダイヤを手にスイスの森の中を走っていた。彼女はワイヤレスイヤホンで相棒のアレックスと連絡を取る。アレックスが待機している場所がわからなくなってしまったからなのだが、アレックスは仕事中だというのに、恋人に振られたことで頭がいっぱいだ。

 

ふたりは合流すると四輪バイクで森の中を突っ走り岐路についた。ところが二機のドローンが彼女たちを追ってきて攻撃を始めた。

なんとか二機とも撃ち落とし難を逃れた二人は、森の中に隠しておいたウィングスーツを着ると崖から飛び降りて空中浮遊を楽しんだ。

 

彼女たちは、どんなものでも盗み出すことが出来る泥棒のプロだ。長年コンビを組んでいて、主にキャロルが現場に向かい、アレックスが後方で援護する。アレックスは腕利きのスナイパーでもあった。

 

ある日、キャロルは産婦人科に行き、妊娠していることを知る。以前からこの仕事に嫌気がさしていたこともあり、これを機会に引退しようと決意する。

 

だが、ゴッドマザーが簡単に許可してくれるわけがない。しかし、キャロルは強い意志を示し、次の仕事を最後にすると宣言する。

 

引退すると聞かされたアレックスはほかに私たちに何ができるというのか、と驚くが、キャロルが引退するのなら自分も引退して、投資でお金を増やし、串焼きの店をやろうと話し始めた。

 

ゴッドマザーが指定してきたのは、サルテーヌにある女子修道院が所有する絵画「グランド・オダリスク」(アングルではなく現代美術家のマルシャル・レイス作の方)を盗むというものだった。

 

彼女たちは情報屋・手配屋のアブネルが推薦するレーシングドライバーのサムを運転手として仲間に引き入れることにした。ル・マンのレース場に行くと、男性だとばかり思っていたサムは、すらりとした若い女性で、確かな運転技術を持っていた。

 

3人はコルシカ島に飛び、アレックスはサムに銃の扱い方や、体力づくりをみっちり教え込んだ。教会の中身は改築されていて、別の場所に保管されている設計図を盗み出さなくてはいけないのだが、その仕事をキャロルはアレックスとサムにまかせることにした。サムは初めての仕事に緊張するが、アレックスの援護のもと、なんとかやり終えた。

 

いよいよ、決行の時がやって来た。簡単な任務だと聞かされていたが、当日、現場に行ってみると思いもよらぬ光景が広がっていた・・・。  

 

映画『ヴォルーズ』感想と評価

(C)Netflix

監督・主演を務めたメラニー・ロランクエンティン・タランティーノの『イングロリアス・バスターズ』(2009)で、ナチス将校に復讐を誓う主人公に扮した彼女といえば、ピンと来る人も多いだろう。その後もマイク・ミルズの『人生はビギナーズ』(2010)や、ロマンチック・コメディー『英雄は嘘がお好き』(2018)など多くの作品に出演しているフランスを代表する俳優の一人だ。また、彼女は、エル・ファニング主演の『ガルヴェストン』(2018)など、これまで7本の作品を撮っている映画監督としても知られている。

共演のアデル・エグザルコプロスは、2013年に出演した『アデル、ブルーは熱い色』(2013)でアブデラティフ・ケシシュ監督とレア・セドゥと共に第66回カンヌ国際映画祭パルムドールを授与され、カンヌ史上初めて俳優がパルムドールを手にしたと大きな反響を呼んだ。その後も順調な活躍を見せ、フランス映画になくてはならぬ俳優に成長している。

主人公2人のボス役をこなすイザベル・アジャーニに関してはもはや何も付け加える必要はないだろう。

このように、フランスを代表する名優たちが顔を揃えた本作だが、内容は驚くほど軽やかなコメディアクションに仕上がっていて、その力みのなさがこの映画の魅力のひとつとなっている。

 

何しろ、冒頭からワイヤレスイヤホンで会話を交わすメラニー・ロラン(以下役名でキャロフと記す)とアデル・エグザルコプロス(アレックスと記す)の間には緊張感がまったくなく、この大事な場面でそんな話をするの?という会話がずっと交わされるのだ。

 

この無駄話はほかの場面にも見られて、周到さが足りないようにも見えるが、これは彼女たちが、油断しているわけでは決してなくて、それだけ手慣れた熟練のプロであるという証なのだ。

そしてそんな呑気な展開のあとには、スタイリッシュなアクションシーンがやってくる。四輪バイクにまたがり、途中、運転を交代しながら、執拗に攻撃してくるドローンと戦ったり、ハイテクな作りで外からは見えないはずの森の中の隠れ家を襲撃されて、応戦するシーンなど見どころも多い。

 

が、何よりも本作を魅力的にしているのは、息のあったキャロルとアレックスの関係性だろう。二人の間には、互いに命を預ける仕事で長年コンビを組んで来たことから来る絶大な信頼と絆がある。互いを思いやる心根の優しさが画面から伝わって来て、いつの間にか彼女たちを好きになってしまっているだろう。

 

その2人の間に、運転のスペシャリストとして、もうひとり女性の仲間が増えて、彼女たちはよりダイナミズム溢れるトリオになる。  

 

ただ、チャーリーズ・エンジェルと違うのは、彼女たち(特にキャロル)が、これまで人生を無駄にしてきたと考えている点だ。ゴッドマザーの指示のもとプロフェッショナルに働き金も稼いだが、自由はなかったというのだ。

 

このあたり、デヴィッド・フィンチャーNetflix映画『ザ・キラー』(2023)の凄腕の殺し屋が、結局一概の雇われ職人であることが明らかになるのと似たような部分があるだろう。アクション映画というジャンルにおける最新型ともいうべきか。

 

本作はまた、途中でコルシカ島でのヴァカンスのような時間が待ち受けている。ノンストップのアクション活劇を期待した人にはひどく無駄なシークエンスに思えるかもしれないが、寧ろ、コルシカ島での停滞にこそ、この映画の本質があるのではないか。作品に何を求めるかで評価ががらっと変わって来るだろう。

www.chorioka.com

www.chorioka.com

www.chorioka.com

www.chorioka.com

www.chorioka.com