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Netflix映画『セーヌ川の水面の下に』あらすじ・感想/ パリに突如出現した人喰いザメに立ち向かう女性科学者を主人公にした正統派「サメ映画」

2024年のパリオリンピックを目前に、セーヌ川を舞台としたとびきりの「サメ映画」が誕生した。Netflixで2024年6月5日から配信の映画『セーヌ川の水面の下に』だ。

 

トライアスロンの国際大会を控えたパリ、セーヌ川に、巨大ザメが生息していることが判明。かつてそのサメに夫や仲間の研究員を殺された科学者のソフィアは、流血の惨事を防ぐためトラウマを克服し、河川警察と共に立ちあがるが・・・。

 

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監督を務めたのは、映画『FARANG ファラン』(2022)やNetflix配信のドラマシリーズ『Lupin/ルパン』シーズン3の最後の3話を監督したザビエ・ジャン

 

夫のミシェル・アザナビシウス監督の『アーティスト』(2011)でアカデミー賞にノミネートされたベレニス・ベジョが主人公の海洋科学者ソフィア・アサラスを演じている他、『FARANG ファラン』で主演を務めたナシム・リエスが、軍隊時代の出来事でトラウマを抱えた河川警察官を演じている。

 

目次

Netflix映画『セーヌ川の水面の下に』作品情報

(C)Netflix

2024年製作/104分/フランス映画/原題:Sous la Seine/配信:Netflix

監督:ザビエ・ジャン 製作:バンサン・ロジェ 製作総指揮;ダニエル・ドゥリューム 原案:エドゥアール・デュプレ セバスチャン・オーシャー 脚本:ヤニック・ダアン、モード・ハイバン、ザビエ・ジャン、ヤエル・ラングマン、オリビア・トレス 撮影:ニコラ・マサール 美術:ユベール・プイユ 衣装:カミール・ジャンボン 編集:リワノン・ル・ベレ 音楽:アンソニー・ダマリオ、アレックス・コルテス、エドゥアール・リゴディエール キャスティング:ステファニー・ドンカー

出演:ベレニス・ベジョ、ナシム・リエス、レア・レビアン、アンヌ・マリビン、森本渚、サンドラ・パルフェ、アクセル・ユストゥン、オレリア・プティ、マルビン・デュバル、ダウダ・ケイタ、イブラヒム・バ

Netflix映画『セーヌ川の水面の下に』あらすじ

(C)Netflix

ソフィアと彼女の海洋研究チームは、北太平洋のガベージパッチ(太平洋ゴミベルト)を調査し、人間による汚染が海洋生物に与える影響を追跡調査しているグループだ。

 

彼らの主な研究対象はサメだったが、リリスと名付けたサメに久しぶりに対面した一行は、リリスが驚くほど巨大化していることに驚きを隠せないでいた。リリスは突然、凶暴になりソフィアの夫を含む調査隊に襲いかかった。海は血の色で染まり、船で待機していたソフィアはあわてて海に飛び込むが、そのまま意識を失ってしまう。彼女は命を取り留めるが、助かったのは彼女だけだった。

 

3年後、もう海に戻ることは出来ず、パリの水族館で子ども相手の解説員を務めていたソフィアは、ミカという女性から声をかけられる。彼女はソフィアたちの活動に触発された若い環境保護活動家だった。

 

ミカはリリスがパリのセーヌ川に生息していると言う。当初、ソフィアは信じることが出来なかったが、古い探索機を取り出してみたところ、探索機はリリスがセーヌ川にいることを示していた。ありえないことだが、何らかの理由でリリスは淡水でも生きられるようになったらしい。

さらに悪いことに、パリオリンピックのプレイベントであるトライアスロン大会が数日後にセーヌ川で開催されることになっていた。

 

パリ河川警察は実際に川に潜り、リリスが生息していることを確認する。すぐに市長に報告しに行くが、市長はトライアスロン大会を中止する気は全くなく、サメが本当にいるのなら、駆除するよう命じる。

 

地下墓地の水路にいることを確認したソフィアたちは、サメを捕獲して海に戻す計画を建てるが、現場にはサメは環境保護に必要だと主張するミカたち環境保護団体のメンバーが集結していた。

 

どうやらリリスはここで子育てをしているらしい。小さなサメが水路を行き来しているのが見えた。

 

ミカは潜水服を着てリリスと接触を試みようとしていた。警官やソフィアが何度も危険だと忠告しても耳をかそうとしない。

 

そんな中、リリスが突如巨大な姿を現し、ミカはあっという間に呑み込まれた。逃げ惑う若者たちが水面に次々と落ち、多数のけが人と死亡者が出てしまう。警官もひとり犠牲になった。

 

報告を受けた市長はそれでもトライアスロンを中止しないと言い張り、事件を隠蔽する。ソフィアはリリスの恐ろしい秘密を発見。このままでは大変なことになると河川警察と共にある計画をたてるが・・・。

Netflix映画『セーヌ川の水面の下に』感想と解説

(C)Netflix

「サメ映画」はホラー映画のジャンルのひとつとして確立されており、玉石混交入り混じる作品が次々と製作されている。

 

荒唐無稽な作品も多い中、Netflixで配信されている『セーヌ川の水面の下に』は、比較的シリアスに、大真面目に進行する「サメ映画」だ。

まず、2024年の夏にオリンピックを控えたパリのセーヌ川が舞台だという点で、極めて政治的だ。

オリンピックの前哨戦としてトライアスロン大会が開催されることになっていて、セーヌ川に人喰いサメがいることがわかっても、市長はトライアスロンを中止にせず、秘密裏に駆除を試みた際、多数の負傷者が出たことも隠蔽してしまう。トライアスロン大会開催に際してこれまでかかった巨額の費用を「損切り」できないという事態は、今の日本社会でもそこかしこに身近に感じられる事象だ。

 

もっとも、スピルバーグ監督の『ジョーズ』でも、ロイ・シャイダー扮する警察署長が海水浴客を襲うサメの存在を知りビーチを閉鎖しようとするも、ロングアイランドの稼ぎ時を逃したくない市長がそれを却下していた。『セーヌ川の水面の下に』は、『ジョーズ』にオマージュを捧げた正当な継承作だと言えるだろう。

 

また、人喰いザメのリリスという存在は、海水汚染と切り離せないという設定で、科学的な原因が明確に説明されることはないが、とにかく、汚染のせいで生態が変化して巨大化し、一般的なサメとはまったく違うモンスターになってしまったことが語られる。セーヌ川の水も淀んでいて、川底には様々な物が沈んでいる様子が何度も描写される。

 

そこに登場するのが、環境保護団体の若者たちで、彼らの姿は、『HOW TO BLOW UP』(2022/ダニエル・ゴールドハーバー)で気候危機に対する過激な破壊行為を試みるために集まった若者たちを思い出させる。こうした描写からも、本作は環境問題に深く踏み込んだ作品と言えるだろう。

 

と書いていくと、なんだか堅苦しい物語かと思われそうだが決してそんなことはない。どうしてサメが淡水で生きることが出来るのかと誰もが思う疑問にも「生体の変化」という一点張りで押し通す。適度にいい加減で、出て来る人々は皆、頑固で言うことを聞かず、そして、その人たちが、正しいか、正しくないかに関わらず、皆、平等にサメの餌食になっていく展開には、まさに「サメ映画」に人々が期待するものがみっちり詰まっている。

 

激しいアクションと、サメによる人間への攻撃は残酷で血なまぐさい。トライアスロンの選手が一人、また一人水中に引きずり込まれていく場面も悪夢的だが、逃げ惑う選手を陸にいる人々が助けようとして一緒に水中に落下していくシーンが最も恐ろしかった。セーヌ河岸にいる限り、いや、リリスが地下墓地の水路を自在に行き来している事実を考えれば、パリに安全圏などどこにもないのだ。

ラスト近くの大掛かりな展開もきっちり伏線が貼られていて、上出来の「サメ映画」に仕上がっている。

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