元特殊要員から主夫になった男と、夫の過去をまったく知らない強力犯罪捜査隊のエースの妻。いつもこまめに家事をこなし愛情豊かな夫が女と会っているという事実を部下から知らされた妻は、夫を尾行するが・・・。図らずも2人は危険な犯罪に巻き込まれていく。
Netflix映画『クロス・ミッション』は、パワフルなアクションと笑いの要素が融合した痛快アクションコメディだ。
夫のパク・ガンムを『ベテラン』(2015)、『人質 韓国トップスター誘拐事件』(2021)、『ソウルの春』(2023)などの作品で知られる韓国のトップスターのひとり、ファン・ジョンミンが演じ、妻のカン・ミソンに『密輸1970』やドラマ『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』のヨム・ジョンアが扮し、ぴたりと息のあったところを見せている。
他にチョン・ヘジン、チョン・マンシク等、実力・個性派俳優が顔を揃え、愉快で爽快な世界を作り上げている。
Netflixにて2024年8月9日より配信中。
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目次
Netflix映画『クロス・ミッション』作品情報
2024年製作/100分/韓国映画/原題:크로스(英題:Mission: Cross)
監督:イ・ミョンフン 脚本:イ・ミョンフン、チェ・ヨンリム
出演:ファン・ジョンミン、ヨム・ジョンア、チョン・ヘジン、チョン・マンシク、キム・ジュホン、チャ・レヒョン、キム・チャンヒョン、イ・ホチョル、キム・ジュンハン、オク・ジャヨン
Netflix映画『クロス・ミッション』あらすじ
仕事のあと、しこたま飲んできた妻のミソンが脱ぎ散らかした服を回収する夫のガンム。
ハードな仕事の妻のために毎朝、漢方薬と愛情たっぷりの食事を用意し、昼ご飯と着替えを持たせることも忘れない。妻のミソンは強力犯罪捜査隊に所属する敏腕刑事だ。ガンムは主夫として彼女を支える日々を送っていた。
ある日、ソウルのど真ん中で銃乱射事件が起こる。被害者の女性は倒れた際、頭を打ったらしく意識不明ですぐに病院に運ばれたが、彼女は防弾チョッキを着ていたことが判明する。
現場に駆け付けたミソンは、この事件はなんらかの組織的犯罪だと睨む。そしてマスコミには女性は死亡したと発表するようにと部下に命じた。生きているとわかれば犯人はまた女性を襲いにやってくるに違いないからだ。
一方、ガンムは買い物に街へ出かけた際、男たちに追いかけられている女性を見かけ、男たちを倒して女性を救った。実はガンムはかつて特殊要員として活動していたことがあり、女性はその時の部下のヒジュンだったのだ。
特殊要員時代、ガンムはヒジュンたちと共にロシアのウラジオストクで北朝鮮へ密輸される軍の武器を積んだ船を調査していた。
リーダーだったガンムは危険な武器が北朝鮮に渡ることを危惧して、独自の判断で動くが、船が北朝鮮行きではなく、韓国行きだと知り愕然とする。
ガンムと部下のグムソクは捕えられ、部下のグムソクは熱湯に放り込まれる拷問を受けて死亡してしまう。
ガンムはかろうじて助かるが、独善的な行動をしたことを理由に組織から解雇されてしまう。彼は特殊要員であった自分の過去を妻には内緒にしていた。
ヒジュンもしばらくして仕事を辞め、その後、同じくガンムの部下だったキム・ジュンサンと結婚。しかし、キム・ジュンサンは調査していた敵に拉致されてしまったという。
ガンムとヒジュンがバス停で座って話をしていた時、たまたま近くにいたミソンの部下のヒョンギとドンソが二人を目撃していた。
彼らはガンムが女性と浮気していると思いこみ、そのことがミソンの耳にも届く。珍しく帰りの遅かった夫は明日、車を貸してほしいと言う。翌日、ミソンは部下のサンウンに車を用意させ、夫の車を尾行。そしてついに夫が女と一緒にホテルにはいっていくのを目撃する。
頭に血が上ったミソンは、消火器を振りかざして二人が入った部屋を襲おうとするも、サンウンにもっと証拠を固めてからと説得され、渋々消火器を下ろした。さらに出動の連絡が入ったため、ミソンは現場に急行しなければならなかった。
そのころ、ガンムとヒジュンはヒジュンに連絡して来た謎の男と会っていた。男はジュンサンがいる場所を知っているという。
ヒジュンは男を疑うが、ガンムはジュンサンの行方を知る他の方法がないことから彼の話を聞くことにした。
男が語ったのは、国防省が発表した防衛プロジェクトの実態が3兆5000億ウオンにものぼる軍納不正で、それを指導したのが、パク将軍という謎の人物であること、裏金は将軍でなく安保司令部が管理しており、ジュンサンはチームを組んで将軍を追っていたこと。ジュンサンは裏金口座を奪って隠し、将軍が現れるのを待ったが逆に拉致されてしまったことを告げた。ジュンサンが監禁されているのは旧国軍精神教育院というところだという。
ガンムはジュンサンの子を妊娠中のヒジュンの代わりに自分が現場に向かうことにする。旧国軍精神教育院は銃を持った男たちが周りを囲み、忍び込むのは至難の技に見えた。ヒジュンは現場に問題なく入れる車と偽の許可書などを準備し、後方からガンムを支えることになった。
その頃、ミソンもまた、意識が回復した女性から、パク将軍に関する証言を得ていた。彼女はキム・ジュンサンが作ったチームのひとりだった。警察もまたキム・ジュンサンの行方を追うこととなる。
こうして図らずもガンムとミソンは共に大きな陰謀に関わることとなり、ミソンは、意外な場所で思いもしない夫の姿を目撃し、目を見開く・・・。
Netflix映画『クロス・ミッション』感想と解説
映画『クロス・ミッション』は、スリルと笑いが絶妙に調和したウェルメイドなバディアクション・コメディーだ。
特別野心的な作りでもなければ、斬新な見どころがあるわけでもないが、ジャンル映画のツボをしっかり押さえた、ワクワク感と楽しさで一杯だ。
一度喰いついたら離さない捜査の仕方から"ワニ"の異名を持つミソン(ヨム・ジョンア)は、射撃国家代表出身(アジア2位)の強力犯罪捜査隊の刑事だ。ミソンの夫のガンム(ファン・ジョンミン)は妻に元特殊部隊員だった過去を隠したまま主夫として暮らしている。
ファン・ジョンミンとヨム・ジョンアの相性は、すこぶる良く、完璧なハーモニーを奏でていると言っていいだろう。
ファン・ジョンミンの多くの出演作品の中でも本作はもっともコミカルな部類に位置し、その穏やかで愛情豊かなキャラクターは誰もが好感を持つだろう。
一方のヨム・ジョンアは『密輸 1970』(2023)でも見せた軽やかなユーモアを身にまとい、抜群の存在感を見せている。序盤の麻薬のガサ入れの場面では、敵をスタンガンで次々となぎ倒していくのだが、「犯罪都市」シリーズのマ・ドンソクよりも狂暴で恐ろしい。
そんなある日、突然夫の浮気騒動が勃発する。ガンムが過去を隠していたが故の誤解なのだが、ミソンの部下を演じたチョン・マンシク、チャ・レヒョン、イ・ホチョルの3人が、ガンムと彼の元部下のヒジュン(チョン・ヘジン)の台詞を勝手に捏造して吹き替えのようにしゃべるシーンは特に愉快だ。
一方、アクションの方も、カーチェイスあり、ガンアクションあり、拷問シーンもきっちりありとみどころたっぷりで、カーチェイスは、ある大型車のホースを切り離して、相手を阻む武器にしており、コミカルでユニークなアイデアを爆発させている。
夫婦が互いに援護しながら連携を取り、ばんばん敵を倒していく様は、ここまでやるの?というぐらい、ためらいもなく迷いもなく徹底していて、え?2人はスパイではなくただの刑事と民間人ですよねという戸惑いも、やがて爽快感に変わっていく。
通常なら、序盤はどことなくぎこちない感じの夫婦が、事件での「クロス」を経て、絆や愛を確かめる物語という終着点に落ち着くところだが、この作品ではここまでやってもミソンは「夫婦は歩み寄りが大事」という結論に達しており、この浮つかないところが真の夫婦円満の秘訣なのだなと感心させられる。