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Netflixドラマシリーズ『自由研究には向かない殺人』(全6話)あらすじ・感想/ ホリー・ジャクソンの大ベストセラーをドラマ化。主役を演じるのはエマ・マイヤーズ!

イギリスののどかな小さな町で、17歳の少女が殺され、彼女の恋人だった同級生が殺人を告白後、自殺した事件から5年。

かつて2人と親交のあった高校生のピップは、少年が犯人だとは到底思えず、夏休みの研究課題としてこの殺人事件を調べ始める・・・。

 

原作はブリティッシュ・ブックアワードを受賞し、全米で大ベストセラーとなったイギリスの作家ホリー・ジャクソンの謎解きミステリー。

 

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日本でも大ヒットし、『ハヤカワ・ミステリマガジン ミステリが読みたい!』海外篇1位、『このミステリーがすごい! 2022年版』海外編第2位、『2022本格ミステリ・ベスト10』海外篇第2位など、各ミステリ大賞で高い評価を受けた作品だ。

 

ポピー・コーガンが脚色を担当し、『さざなみ』(2015)、『ある女流作家の罪と罰』(2018)などに出演した俳優で脚本家のドリー・ウェルズが監督を務めた。

 

Netflixのドラマシリーズ『ウェンズデー』で狼男のルームメイト、イーニッドを演じたアメリカ人女優エマ・マイヤーズが17歳の素人探偵ピッパ・"ピップ"・フィッツ=アモビに扮し、知性と温かみのあるキャラクターを作り上げた。

 

英国BBCが製作し、2024年8月2日(金)よりNetflixにて配信開始。

目次

Netflixドラマ『自由研究には向かない殺人』作品情報

(C)Netflix

 

2024年製作/イギリス/(全6話 40~48分)/原題:A Good Girl's Guide to Murder

監督:ドリー・ウェルズ、トム・ヴォーン 原作:ホリー・ジャクソン『自由研究には向かない殺人』(創元推理文庫) 脚色:ボビー・コーガン エグゼクティブプロデューサー:マシュー・リード、マシュー・バウチ、フリス・ティップレディ、ホリー・ジャクソン、ポピー・コーガン、ドリー・ウェルズ プロデューサー:フローレンス・ウォーカー 製作:BBC Three・ムーネイジ・ピクチャーズ

出演:エマ・マイヤーズ、ザイン・イクバル、アーシャ・バンクス、ヤスミン・アル=クダイリ、ヘンリー・アシュトン、カーラ・ウッドコック、マシュー・ベイントン、インディア・リリー・デイヴィス、ラーフル・パットニー、ジャクソン・ビューズ、ゲイリー・ビードル、アンナ・マクスウェル・マーティン、ジュード・モーガン・コリー

 

Netflixドラマ『自由研究には向かない殺人』あらすじ

(C)Netflix

イギリスの小さな田舎町リトル・キルトン。

17歳のピップは愉快な仲間たちと共に、楽しい学校生活を送っていた。彼女は成績優秀で、ケンブリッジ大学への進学を希望していた。ケンブリッジ大学トリニティカレッジはピップの亡くなった父の母校で、ピップがケンブリッジに入学したらお父さんは誇りに思うでしょうねというのが母の口癖だった。

 

ピップは父親のことはほとんど覚えていなかった。母はナイジェリア人の今の父と再婚。ピップは弟ともよい関係を築いていた。

 

そんなピップだったが、彼女にはずっと気になっていた事柄があった。実は5年前、この町では大きな事件があったのだ。

 

17歳の高校生のアンディ・ベルが行方不明になり、彼女のボーイフレンドであるサル・シンが「ぼくがやった」という告白文を残して自殺。アンディの遺体は未だにみつかっていなかったが、容疑者が自殺したことで事件は終結していた。

 

ピップは、優しかったサル・シンが、恋人を殺すなど信じることが出来なかった。

5年前、ピップがひとり、ロッカーの前に立っていたとき、アンディがやってきて、口元に指をあてて「黙っていて」と合図した。その後すぐに、サルがやって来て、ピップにアンディを見なかったかと尋ねた。彼女が答えあぐねていると、話がしたいだけなんだとサルが言ったので、向こうに行ったよとピップは指さした。

 

あの時、私は間違ったことをしてしまったのだろうか。でもどうしてもサルがそんなひどいことをしたとは思えない。

彼女は、大学進学のための研究課題として、この殺人事件の真相を暴こうと決意する。

 

ピップは自分の部屋のボードに事件の概要や、当時の新聞、関係者の写真などを貼り、事件を整理してみた。

 

アンディは2019年の4月19日に、車で自宅を出たまま行方不明になった。夕食会に行った両親を迎えにいくはずだったのだが、そこには現れず、同夜リトル・キルトンの森で、サル・シンの自殺遺体が発見された。

 

ピップはサルの弟であるケビンに接触したが、ピップがサルの話を持ち出すと、彼はすぐに表情を硬くし、家の中に入ってしまった。事件のあと、一家は、たくさんの嫌がらせに遭い、今も失意の中で暮らしていた。

 

ピップは、事件があった夜、サルと一緒に過ごしていた友人のナオミに話を聞くことにした。その日、ナオミは、マックスの家で、サルとジェイクとマックスの四人でゲームをしていたという。10時半になってサルはマックスの家を出て行き、帰宅したのは12時を過ぎていたという。彼はその間、何をしていたのだろうか。

 

別の日、ピップは友人のカーラと一緒にマックスの両親の銀婚式のバイトとしてマックスの家に潜入することに成功する。

 

最初は真面目にバイトをこなしていたピップだったが、マックスが席をはずしたのを見て、ひとり、彼を追って邸宅の中に入って行った。

質問ひとつごとに酒を飲むという条件を呑んで、ピップはマックスに質問を始めた。彼も同じように四人でゲームをしていたというが、ナオミが言っていたゲームとは違うゲームだった。

家は金持ちで親もまっとうな人のように見えるのに彼はひどくひねくれている印象だった。アンディのことは知らない、話したこともないと彼は言うが本当だろうか。

 

酒が回って気持ち悪くなりながらもピップは、ケビンを訪ねた。ケビンはピップが兄の無実を信じてくれていることに心を動かされる。ケビンが見せてくれた兄のスマホには「ぼくがやった」と言う言葉が書き込まれていたが、それは明らかに他の文章とは文体が違うものだった。これは誰か別の人が書いたものだとピップは確信する。

 

次にピップが訪ねたのはアンディと仲の良かったエマ・ハットンだった。彼女とナット・ダ・シルビアとアンディは仲良し三人組として知られていた。

 

エマ・ハットンはアンディには何も変わったことはなかったと言い張り、ピップが深く追及しようとすると気分を害して怒り始めた。

 

ピップとケビンは、もうひとりの友人ナットに接触し、アンディには謎の年上男の交際者がいたという証言を引き出す。

また、ピップたちは、アンディは金を得るために「クスリ」を売っていたという衝撃の事実を掴む。スマホに残されたサルとアンディのやり取りから、サルがアンディに何かをやめさせようとしていたことが推測されたのだが、このことだったのだ。

 

真相を知るためにピップは、秘密裏に行われている「カラミティパーティー」へ侵入することにした。でもこれは招待制で、ピップたちのような地味な生徒には誰も声をかけて来ない。ピップはアナグラムを解析してパーティーの場所を割り出すことに成功。友人2人と共に出かけていくが、会場は森の中でこんなところでパーティーが開かれていたことに3人は驚きを隠せない。

 

パーティー会場は退廃の雰囲気が漂い、本当のヤクの売人までいた。怖い思いをした分、収穫もあったのだが、家でピップがくつろいでいる時に、何者かが、彼女のスマホを鳴らした。

 

そこには「手を引け」と書かれており、さらにピップの着ているパジャマについて言及されていた。誰かが近くまで来て、ピップを見張っているらしい・・・。

 

Netflixドラマ『自由研究には向かない殺人』感想と解説

2019年.イギリスの架空の町リトル・キルトンで、暗い夜道を一人の若い女性が歩いているところから物語は始まる。

彼女は額に傷を負っていて、彼女が手を後頭部に回すと手に血のようなものがつく。大怪我を負ったこの女性が17歳のアンディ・ベルで、この姿を最後に行方不明になり、恋人だった同級生のサル・シンが殺人を告白した後、自殺するという事件が起こったことについてはもう少しあとで知らされることになる。

 

うって変わって、緑の中で美しく輝くリトル・キルトンの町並みが映し出される。町には大聖堂があり、典型的なイギリスの田舎町の平和の象徴のような光景が広がっている。この景色を俯瞰で捉えたショットは、以後、全編を通して何度も何度も繰り返される。

 

あれから5年が経って、町は平穏を取り戻したように見えるが、ひとりの高校生ピップが、大学入学のための課題の論文で事件の真相に迫ろうと行動を始めると、まだその痛みが随所に残っていることがわかってくる。

 

「素人高校生探偵」というと、ちょっとわくわくした高揚感のようなものを感じてしまうが、「日常の謎」ものではなく、れっきとした殺人事件なので、画面自体は重々しい空気が漂っている。

 

ピップがこの事件にこだわるのは、どうしてもサル・シンが犯人だと思えないからだ。あんな優しい人が殺人なんて出来るはずがない。

人々は事件を忘れようとしており、ピップの質問に、そう簡単に答えてくれるわけではないのだが、それでもピップは重要な証言を引き出していく。

 

へたをすれば、他者を傷つける人間として反感を持たれてしまう可能性もある中、エマ・マイヤーズは、役柄に知性と温かさを吹き込み、思わず応援したくなるキャラクターを作り上げた。

なにより素晴らしいのは、彼女がとても勇敢なことだ。ピップが学校の仲間たちとキャンプに行ったとき、何者かが、テントの近くまで脅しにやって来たことがわかるのだが、彼女は、怖がるどころが、暗闇の中に駆け出していく。また、自宅の庭に何者かが忍び込み脅迫メールを送って来たときも彼女は怯むどころか家から飛び出していく。

その行動はあぶなっかしくはあるのだけれど、それは「殺人事件」に取り組む覚悟が彼女にはしっかりできている証であり、その芯の強さ故に、私たちは彼女に絶大の信頼を起き、思わず応援してしまいたくなるのだ。

 

一方で、サルの弟のケビンと協力して捜査に当たる際は、どちらがシャーロックで、どちらがワトソンか(彼女たちにとってはどちらがカンバーバッチでどちらがマーティ・フリーマンか)でもめたり、張り込みをするときにもっともふさわしい食べ物を考えたり(それは見てのお楽しみ)といった高校生らしいほのぼのエピソードもあって、ほっこりとした気分にもさせられる。

 

シャーロック×ワトソン論争は結局、結論は出ないのだけれど、「素人高校生探偵」ならではの大胆な行動も本作の見どころのひとつだろう。

ちょっとワルの高校生たちだけの秘密の招待制パーティーに潜入したり、ある家に忍び込み、証拠品を見つけたり(法的には違法だが、彼女たちはとにかく真相が知りたいのだ)。とりわけ後者では、みつかりそうになり、そのスリルたっぷりのカメラワークは、私達までクローゼットに隠れているような気分になってドキドキしてしまった。

 

ストーリー的には原作が世界的ベストセラーで、日本でも「ミステリ大賞」海外編の類で1位、2位にランクされるほどしっかりしたものなので、中途で破綻してしまうこともなく安心して見ていられるのだが、青春ものとしても見どころが多い。

 

夏が終われば最終学年になる彼女たちは、将来を見越して進路を決めなければならない。自分が進もうと思っている道は本当に正しい道なのか、周りの大人たちの期待を盲目的に受け入れているだけではないのかという悩みや、愛情や友情の問題など、この年齢特有の主人公の心の揺らぎに共感する人も多いだろう。

 

また、彼女は、事件の真相を追いながら、人間の「悪」の面に対峙することになるわけだが、その中で、ある人物が人間の内面には「悪」の要素がもともと存在しており、自分が悪いことをしたのはその内面の「悪」がそうさせたのだとピップに語るシーンがある。しかし、ピップは「あなた自信がその“悪”を選択したのよ」と言い返す。

彼女はこの物語を通じて、人間の「善」と「悪」について考え続けており、本作はピップという聡明な高校生の「成長物語」の側面も持っていると言えるだろう。

 

ホリー・ジャクソンの原作は3部作として発表されており、それら全てがBBCによってドラマ化され、Netflixでの配信が予定されている。

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