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韓国映画『THE MOON』あらすじ・感想/ ソル・ギョング、ド・ギョンス共演の宇宙サバイバルSF超大作ドラマ

韓国映画『THE MOON』は、「神と共に」シリーズ(2017、2018)や、『カンナさん大成功です!』(2006)、『国家代表!?』(2009)などの作品で知られるキム・ヨンファ監督によるSF超大作映画だ。

 

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2029年、大韓民国は月探査船ウリ号の打ち上げに成功。全国民からの期待と世界からの注目が集まる中、月への着陸を目前にして、不慮の事故がウリ号を襲い、三人の乗組員のうちベテランの二人が亡くなってしまう。

宇宙センター関係者たちは探査船の設計者で宇宙センターの前責任者キム・ジェグクを呼びよせ、一人残されたソヌ隊員を救うべく尽力するが、次から次へと難題が降りかかり・・・。

 

人気K-POPグループ「EXO」のド・ギョンスが『神と共に 第二章:因と縁』(2018)に続きキム・ヨンファ監督作に出演。宇宙飛行士ソヌ役で兵役後初の長編映画出演を果たした。

韓国を代表する俳優のひとり、ソル・ギョングがナロ宇宙センターの前責任者キム・ジェグクを、映画『ユンヒへ』(2019)や大ヒットTVシリーズ『夫婦の世界』(2020)のキム・ヒエが、NASAの統括ディレクターであるユン・ムニョン役を演じている他、実力派俳優が多数顔を揃えている。

 

目次

韓国映画『THE MOON』作品情報

(C)2023 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS, BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED

2023年製作/129分/韓国映画/原題:더 문(英題:The Moon)

監督・脚本・キム・ヨンファ 撮影:キム・ヨンホ 製作総指揮:ク・チャングン 共同製作総指揮:コ・ギョンボム 製作:キム・ヨンファ、ソ・ホジン 共同製作:イ・ソンヨン プロデューサー:チェ・ジソン プロダクション・デザイン:ホン・ジュヒ 衣装:チョ・サンギョン ヘアメイク:パク・ソン 編集:チョン・ジウン 音楽:イ・ジェハク 照明:ファン・スンウク VFXスーパーバイザー:チン・ジョンヒョン サウンド・スーパイザー:チェ・テヨン 録音:イ・サンジュン デジタル・インターミディエイト:キム・イルグァン 特殊効果:チョン・ドアン、リュ・ヨンジェ スタント・コーディネーター:ホ・ミョンヘン、ユ・ミジン

出演:ソル・ギョング、ド・ギョンス、キム・ヒエ、チョ・ハンチョル、パク・ビョンウン、チェ・ビョンモ、ホン・スンヒ、イ・ソンミン、キム・レウォン、イ・イギョン

 

韓国映画『THE MOON』あらすじ

(C)2023 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS, BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED

2029年12月、韓国はアメリカに次ぐ二番目の有人月探査の成功を目指し、宇宙船ウリ号を打ち上げた。

 

5年前に宇宙船ナレ号を打ち上げた際は、離陸直後に爆発し、乗員全員が死亡するという悲劇に見舞われていた。

 

その事故のせいで、韓国の宇宙機関は国際宇宙委員会から除名され、開発を単独で行わざるを得なかった。 ウリ号打ち上げは韓国の宇宙機関にとっては悲願であり、国にとっては歴史的な瞬間だった。

 

宇宙船は順調に月の軌道に近づいていたが、予期せぬ太陽フレアのために技術的なトラブルが発生。船長と副船長が船の外に出て修理を行っていると突然強い太陽風が吹き荒れ、巻き込まれた2人は死亡してしまう。

 

3人の宇宙飛行士の中で最も経験が浅いUDT(特殊作戦部隊)出身のファン・ソンウだけが船内にいたために生き残った。彼は目の前で起こったことが理解できずパニック状態だった。

 

ナロ宇宙センターの責任者は、ソンウを無事に帰還させるために、5年前にナレ号事故の責任を負ってソベク山天文台で隠れるように暮らしていた前任のセンター長キム・ジェグクを呼び寄せる。

 

宇宙船の設備を知り尽くしているジェグクはソンウに指示を出し、ソンウも落ち着きを取り戻すが、通信が途切れてしまう。しばらくして通信は回復するが、ソンウは月面着陸を試みると宣言。

 

ジェグクが一人では危険だからと説得するが、彼は自分は最初のミッションの失敗の責任を取り自殺したファン・ギュテの息子だと明かし、父のため、国民のため、任務を遂行すると言う。

キム・ジェグクが父の同僚だったことを知るや、ジェグクは激しく反発し、あなたの指示などに従えないと、あくまでも月面着陸を主張。

 

ナロ宇宙センターもその意志を尊重し、彼を支援することになった。ナロ宇宙センターの指示をひとつひとつこなしたソンウはついに月への着陸に成功する。しかし氷のサンプルを採取して、再び、船内へ戻ろうとした際、流星雨が発生。

 

早く着陸船に移動するよう指示を受けたソンウは爆弾のような激しい流星雨をなんとかかいくぐって、着陸船に乗り込むが、その後も流星雨の影響で、事故が続き、ソンウは意識を失って通信も途切れてしまう。

 

キム・ジェグクは、元妻であるNASA有人月周回衛星のメインディレクター、ユン・ムンヨンに助けを求めようとするが、NASAは非協力的で、彼女ひとりではどうすることもできなかった。

 

ソンウと連絡がとれないまま数日が経ち、宇宙服の酸素も尽きたと判断した政府は彼が死亡したと発表。ソベク山天文台に戻ったジェグクは、彼を救えなかったことで自分を責めていた。そんな折、ジェグクのスマホにソンウが通信を求めている動画が送られてくる・・・。  

 

韓国映画『THE MOON』感想と解説

(C)2023 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS, BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED

ラストに言及しています。ご注意ください

 

『THE MOON』は壮大なスケールで描かれた宇宙サバイバル映画だ。

 

韓国産のSF映画といえば、韓国初のスペースオペラとしてNetflixで配信されたチョ・ソンヒ監督の『スペース・スウィーパーズ』(2021)など、ハリウッドの大作にも負けないほどの視覚的効果を携えた作品が製作されており、本作も、技術的な面のクオリティは申し分ない。

 

とりわけ、月面に降り立ち、月の裏側と表側を行き来する場面や、流星雨に襲われる場面などは実際に月の姿を観客に体験させるような迫力がある。

 

物語の展開自体は、ロン・ハワードの『アポロ13』(1955)や、リドリー・スコットの『オデッセイ』(2015)、アルフォンソ・キュアロンの『ゼロ・グラヴィティ』(2013)といった作品に強く影響を受けていることが感じられるが、人と人のぶつかり合いが過剰なほどドラマチックであるのが本作の最大の特徴だろう。絶叫と号泣に溢れた「感情」の映画と言ってもいい。

 

打ち上げ失敗の責任をとって自殺した父。父の意志を次いで宇宙飛行士になった息子。5年前の宇宙船開発者のひとりで、失意の中で一線を引いて暮らしている男性と別れた妻。それぞれの過去のトラウマが交錯し合い、全ての展開が「情」に重ねられていく。ここを古臭いととるか、韓国映画ならではの強みと取るかで本作の評価も変わって来るだろう。

 

しかし、観ている最中は、そんな冷静な評価などとても無理だ。キャスト陣の熱演により、気づけば観客もナロ宇宙センターに陣取っているかのような気分にさせられるのだ。立場としては、チョ・ハンチョルが演じた韓国科学技術情通信部部長キム・インシクに近いだろう。プロフェッショナルが揃った空間でただひとり、文科系出身なので何もわからないとおろおろしながら見守るしかない彼の姿は、映画を観ている私たちの姿そのものだ。

 

若い宇宙飛行士を演じるド・ギョンスは、ほとんどを一人芝居として演じ、経験の浅さから来る心細さや恐怖心、絶望、孤独といった様々な感情を巧みに表現したかと思えば、元UDTという設定を納得させる冷静さと、粘り強さも見せ、私たちを彼の苦境に巻き込んでいく。

 

また、もう一人の主役ソル・ギョングは、5年前の打ち上げ失敗の責任を取り一線を退いていたがド・ギョンスを救うため、宇宙センターに呼び出される前センター長を演じており、あらゆる経験と知識をフル回転させる姿が胸を打つ。

 

こうした非常事態の場合、通常の手順を踏んでいては間に合わない場合がある。パク・ビョンウン演じるナロ宇宙センターの現責任者があくまでもテストが必要とこだわるのに対して、ソル・ギョングはそこを飛び越えていく。  

 

それは非常に危険な賭けでもあるのだが、そうした機転を利かせることが出来て、責任を背負うことのできる人物が現場にいるか、いないかで、人の生死が分かれる場合もあるのだ。ソル・ギョングが演じているからこそ、それらのシチュエーションがより説得力を持って迫って来る。

 

また、ド・ギョンスの父親役がイ・ソンミンだったり、早々に、事故で亡くなってしまう宇宙飛行士がキム・レウォンだったりと贅沢なキャスティングがなされており、キャスト陣の充実が本作の強みのひとつであるのは間違いない。

NASA統括ディレクター役のキム・ヒエが、終盤の見せ場として颯爽とした姿を見せているのも素晴らしい。

 

ただ、エンドロールに至っても延々と「その後」を見せていくのは、少々くど過ぎるようにも思えた。が、ラスト、あの笑顔を見せられたら、もう誰も何も文句は言えなくなるだろう。