マ・ドンソクが主演は勿論のことシナリオの原案や企画、制作まで務め上げる「犯罪都市」シリーズの第四弾。全8作が予定され、スピンオフの計画もあるという人気シリーズだ。
マ・ドンソク扮する怪力刑事マ・ソクト刑事とソウル広域捜査課がとびっきりの悪人と戦うこのシリーズ、本作の相手は『悪人伝』でもマ・ドンソクと共演したキム・ムヨル演じる元傭兵のペク・チャンギと、『エクストリーム・ジョブ』のイ・ドンフィ演じる組織のオーナで“ITの天才と呼ばれる“チャン・ドンチョルだ。
彼らはデリバリーアプリを使った麻薬犯罪に手を染めていて、マ刑事たちは、サイバー捜査隊の力を借りながら凶悪なデジタル犯罪に挑む!
監督を務めたのは、前3作でアクション演出を手がけ、Netflixオリジナル映画『バッドランド・ハンターズ』で監督デビューを果たしたホ・ミョンヘン。韓国国内ではシリーズ史上最高のオープニング成績を記録し、累計韓国動員数4,000万人を突破する大ヒットを記録した。
目次
韓国映画『犯罪都市 PUNISHMENT』作品情報
2024年製作/109分/PG12/韓国
監督:ホ・ミョンヘン 企画:マ・ドンソク 製作:キム・ウォンフン 脚本:オ・サンホ、マ・ドンソク、キム・ヒョンソク 撮影:イ・ソンジェ 美術:パン・ギルソン 武術:ユン・ソンミン 衣装/メイク:ナム・ジス 編集:キム・ソンミン 音楽:ユン・イルサン
出演:マ・ドンソク、キム・ムヨル、パク・ジファン、イ・ドンフィ、イ・ボムス、キム・ミンジェ、イ・ジフン、キム・ドゴン、キム・ジフン、ヒョン・ボンシク、イ・ジュビン、キム・シンビ
韓国映画『犯罪都市 PUNISHMENT』あらすじ
新種合成麻薬事件から3年後の2018年。ヤクザも恐れる怪物刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)とソウル広域捜査課は、デリバリーアプリを悪用した麻薬密売事件を捜査していた。
アプリを作った開発者の身元を割り出すと、その男はフィリピンに良い就職先があると言って出国した後、何者かに殺害されたことがわかった。遺体の状況から見るに、監禁され暴力を受けていたようだ。
マ刑事たちは彼の死の背後に、フィリピンに拠点を置く国際IT犯罪組織の存在を突き止める。
組織のリーダーは、韓国の違法オンラインカジノ市場を掌握した特殊部隊出身の“元傭兵”ペク・チャンギだった。彼はあまりにも残虐な行為を繰り返したため、特殊部隊をやめさせられたという逸話の持ち主で、競争相手が現れれば容赦なくつぶし、殺人も辞さない。開発者を殺したのも彼だった。
ペク・チャンギは、組織のオーナーで幼いころから“ITの天才“と呼ばれて来たチャン・ドンチョルの下で働いていたが、「大きな分け前をやる」と言いながらも口だけのドンチョルに対して不満を抱いていた。
マ刑事は、サイバー捜査隊の力を借り、さらにオンラインカジノ事業の経験を持つチャン・イスに捜査協力を依頼し、史上最大規模のIT犯罪計画殲滅に立ちあがる。
韓国映画『犯罪都市 PUNISHMENT』感想と評価
前作『犯罪都市 NO WAY OUT』は、これはこれで面白かったのだが、それまでの二作と比べるといささか物足りなさを感じる仕上がりであったことは否めない。だが、第四作目となる『犯罪都市 PUNISHMENT』は、物語の構成においても、キャラクターにおいても、前作で覚えた不満点を払拭し、従来の面白さを取り戻している。
前作はマ・ドンソク以外のソウル広域捜査課の刑事たちが現場に駆け付ける前に、マ・ドンソク扮するマ刑事がひとりで敵と闘い、倒した時にやっと他のメンバーが現れて「遅いよ」とマ・ドンソクに言わせるのをひとつのギャグにしていたが、あまりにマ・ドンソクにおんぶにだっこになり過ぎており、そのせいで敵役の強さが感じられなかった。
だが今回は、広域捜査の仲間たちも序盤からフルに身体を張って活躍しており、また、キム・ムヨル演じる元傭兵のペク・チャンギというキャタクラーも、シリーズ第一作の『犯罪都市』のユン・ゲサンを彷彿とさせる狂暴ぶりを発揮していて実に魅力的だ。
この男はナイフの使い手で、香港映画『ドラゴン×マッハ!』に登場した凄腕ナイフ使いを思い出させる。ナイフ使いの魅力といえば、なんといってもその手際の良さとスピーディーな動きだ。キム・ムヨルはそうしたアクションシーンを颯爽とこなすと共に、何をしでかすかわからない異様な威圧感と神秘性をキャラクターに吹き込んでいる。
派手なガンアクションや爆発シーンに頼らず、マ・ドンソクのこぶしの重圧感と、悪役俳優との肉体と肉体のぶつかり合いを最大限にいかした演出が冴える。警察対凶悪犯罪者の物語という「犯罪都市」シリーズの核となる部分はきっちり保持しながら、今回はサイバー犯罪を題材にしているところが新味だ。
序盤、広域捜査課のチーフが「サイバー犯罪に取り組んでもあまり評価されないんだ」と首を振るシーンがあるのだが、映画的に言っても、サイバー犯罪を画として魅力的に描くのはかなりの難題に思われる。チーフのつぶやきはある意味、映画制作者側の本音のようなものだろう。
しかし、本作はオンラインカジノの世界に焦点をあてることで、画的にもユニークなものを生み出すことに成功している。もうひとりの敵役、イ・ドンフィ演じるITの天才、チャン・ドンチョルという知能派キャラクターも今までにないタイプで新鮮だし、オンラインカジノ事業の経験を持つということでマ刑事に召喚されたパク・ジファン扮するチャン・イスが大活躍するのも実に楽しい。
また、マ刑事の人間味溢れる様も随所に見られ、フィリピンで無残に殺されたアプリ開発者の若者の母親が遺した言葉を心に留め行動する姿はとりわけ胸を打つ。
その一方で、イ・ジュビン扮するサイバー捜査官とITオンチのマ刑事のまったく通じ合わないやり取りや、カメオ出演の韓国初のプロファイラー、クォン・イリョン氏が演じた警察庁長官のありがたいお言葉をマ刑事がことごとく間違えて部下に伝え、みんなをキョトンとさせるエピソードなどユーモラスなシーンも満載で大いに笑わされる。
こうしたお約束をシリーズの醍醐味として踏まえながら、今後、キャラクターと物語がどのように進化していくのか、これからも「犯罪都市」シリーズから目が離せない。
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