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映画『犯罪都市 THE ROUNDUP』公開!/ 極悪非道の悪役を演じ話題の俳優ソン・ソック出演ドラマ&映画5選!

マ・ドンソクが強力班の怪力刑事マ・ソクトに扮し、警察と韓国ヤクザ、中国マフィアによる三つ巴の抗争を描いて大ヒットとなった映画『犯罪都市』(2017)。

あれから四年、その続編『犯罪都市 THE ROUNDUP』が2022年11月3日より全国公開されている。

前作も悪役のユン・ゲサンがめちゃくちゃ強くて恐ろしかったのだが、今回の悪役もさらに強力だ。

極悪非道のナイフ使いの犯罪人カン・ヘサンを演じているのは、ドラマ、映画で活躍し、人気、実力ともに、急上昇中の俳優、ソン・ソックだ。Netflixで配信されているドラマ『私の開放日誌』でファンになった方も多いだろう。

 

ここではそんなソン・ソックの魅力が詰まったこれまでの出演作をセレクトしてみた。  

 

目次

ソン・ソックのプロフィール

ソンソック(손석구)

1983年生2月7日生まれ。中学時代からアメリカに留学し、シカゴ芸術大学に進学。ドキュメンタリー監督を志す。その後、演技の勉強を開始し、韓国へ戻り舞台俳優として活動。2014年の舞台『愛が燃える』では俳優として出演すると共に、芸術監督もこなした。

32歳のときに仏韓合作『Black Stone(原題)』(2015)で映画デビューを果たす。悪役からラブコメまで様々な役柄を幅広く演じて俳優としての階段を確実に登り、2022年に放送されたドラマ『私の解放日誌』で謎の男、ク氏を演じて大ブレイクを果たした。

 

ドラマ『サバイバー 60日間の大統領』(2019) 全16話   

出典:tvN

【作品情報】原題:60일, 지정생존자  tvN 演出:ユ・ジョンソン 脚本:キム・テヒ 出演:ソン・ソック、チ・ジニ、イ・ジュニョク、ホ・ジュノ、カン・ハンナ、ペ・ジョンオク、チェ・ユニョン、イ・ハユル、キム・ギュリ(キム・ミンソン)

 

国会議事堂の爆破テロにより、大統領以下の閣僚と現役議員がほぼ全員死亡するという大惨事が起こる。生き残ったのは、ただ一人、たまたま議会を欠席していたKAIST(韓国科学技術院)の元教授で環境庁長官に抜擢されたパク・ムジン(チ・ジニ)だけ。

必然的に彼が「大統領権限代行」として仕事を引き継ぐことになる。次の大統領を選ぶ選挙が行われるまでの期間、ムジンと彼を支える人々が様々な困難に直面しながら、国と家族を守るため尽力する姿がエキサイティングに描かれたドラマだ。

アメリカABC放送局の人気ドラマ『サバイバー: 宿命の大統領』の韓国リメイク作品だが、北朝鮮との戦争勃発危機など、韓国が抱える様々な政治問題、社会問題に焦点があてられており、リアルなポリティカルドラマに仕上がっている。

 

現実の腐敗した政治の世界にはほとほとうんざりさせられているだけに、この理想に溢れた誠実な大統領には、これがフィクションで、一種のファンタジーだと判っていても、肩入れしてしまう。

既存の権力を一掃することでやっと新しい才能にチャンスが与えられ、これまでにない試みが行われることを描いている点で、『シン・ゴジラ』を連想する人もいるだろう。

 

この作品でソン・ソックが演じるのは秘書室長のヨンジンだ。冷静で、有能で、ひとつのスキもないように見える彼が、学級肌であくまでも正義を貫き、誠実さを重んじ、おまけに頑固なパク・ムジンに反発し意見しながらも、支え、心を通わせて行く姿を堂々と演じている。

ひとつのスキもないようなクールな彼が、時折人間らしさを見せる姿が実にチャーミングで、誰もがヨンジンに心惹かれずにはいられないだろう。俳優ソン・ソックの出世作と言ってもいいのではないだろうか。  

映画『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』(2019) 

(C)2019 SHOWBOX AND HODU&U PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.

【作品情報】原題:뺑반(英題:Hit-and-Run Squad)韓国映画 133分  監督:ハン・ジュニ 撮影:キム・デギョン 美術:チャン・グニョン 武術監督:ホ・ミョンヘン 

出演:コン・ヒョジン、リュ・ジュンヨル、チョ・ジョンソク、ヨム・ジョンア、チョン・ヘジン、ソン・ソック、キム・ゴウン、イ・ソンミン

 

ブコメの女王”、“視聴率の女王”などの異名を持つ人気女優コン・ヒョジンが、上層部の圧力で内査課からひき逃げ専門捜査班に左遷された警官ウン・ションを演じ、あるひき逃げ事件と贈収賄事件の背後に隠れた巨悪を追求していくサスペンス・アクション。

ひき逃げ専門捜査班のメンバーは、妊婦のウ課長(チョン・ヘジン)と若い巡査のミンジェ(リュ・ジュンヨル)だけというなんとも小さな部署だが、その捜査方法は独特だが理にかなっていて、ションも大いに刺激される。

ミンジェが追っていた謎多きひき逃げ事件の容疑者として巨大企業JCモーターズの会長を務めるチョ・ジェチョル(チョ・ジョンソク)が浮かび上がり、ションはJCモーターズのパーティーに潜り込みチョ・ジェチョルを内偵。この時に、ションと同席するションの恋人である検事のキ・テホを演じているのがソン・ソックだ。

映画の冒頭では、シャワーを浴びている彼のたくましい上半身姿も映し出されている。検事という、権力のある職業につきながら、彼は常に恋人にリードされ、振り回されている。犯人を追い詰めるために危険な自動車レースにまで出場させられている。このような終始受け身のキャラクターが多くの女性の母性本能をくすぐったのは間違いないだろう。

この作品が作られる以前は、韓国映画は圧倒的に男性俳優が中心で、女性俳優は活躍の場に恵まれないことが多かった。コ・ヒョジンや、彼女の元上司役のヨム・ジョンアが演じた役柄も少し前なら男性俳優が演じていただろう。現在、韓国映画界の女性の活躍は以前に比べて随分向上している。ある意味、本作は女性の活躍を予言する過渡期の映画だったと言ってもよいかもしれない。そんな作品で、エリート男性ながら女性を支える立場のキャラクターを演じたソン・ソックが、その後着実にキャリアを積み上げていったのは必然といえるかもしれない。

 

ドラマ『D.P. 脱走兵追跡官』(2021)全6話

(C)Netflix

【作品情報】 原題: D.P. 監督:ハン・ジェニ 原作:キム・ボトン『D.P.犬の日』 脚本:ハン・ジュニ、キム・ボトン Netflix配信 

出演:チョン・ヘイン、ク・ギョファン、キム・ソンギュン、ソン・ソック、チョ・ヒョンチョル、シン・スンホ、ホン・ギョン、キム・ドンヨン、イ・ジュンヨン、コ・ギョンピョ

 

兵役義務のある韓国では、若い男性は一定期間、軍に入隊しなくてはならない。本作は入隊する若い青年たちに焦点をあて、これまでタブーとされてきた軍隊におけるいじめ=暴力を暴いていることで、社会現象となった作品だ。社会への暗部や権力に果敢に挑む韓国のドラマや映画の姿勢にはいつも羨望さえ覚えてしまう。

 

本作の主人公アン・ジュンホ(チョン・ヘイン)は入隊後、厳しい訓練を受け、憲兵に配属される。そこでは壮絶ないじめが行われていた。ジュンホもそのターゲットになるが、彼を見込んだパク・ボムグ(キム・ソンギョン)中佐から「D.P.」で仕事をするよう命じられる。

「D.P.」とは”Deserter Pursuit=脱走兵追跡”の略で、軍から脱走した兵士を逮捕する組織のこと。原作のWeb漫画を描いたキム・ボトン氏も兵役時代「D.P.」だったそうだ。

 

ジュンホは、脱走者を逮捕というよりは救おうとして懸命に行動する。ク・ギョファン扮するホユルとのバディ映画的な面白さもあり、見事な社会派エンターティンメントに仕上がっている。

全6話を演出したのは、前述した『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』のハン・ジュニ監督だ。

 

さて、この作品でのソン・ソックの役柄は陸軍憲兵隊に新たに赴任した大尉(正式には第103歩兵師団憲兵隊長補佐官)イム・ジソプ。柔軟で有能に見える人物として登場するが、パク・ボムグ中佐にマウントをとろうとしたり、憲兵大将には逆らえず手のひら返しをしたり、怒鳴り込んできた若い兵士の母親にたじたじとしたりと人間味溢れる演技を見せている。表情も豊かで、新たなソン・ソックの魅力を見出すことができるだろう。

 

本作はシーズン2の制作が決まっており、キャストもシーズン1を踏襲するものとなるらしい。今回の経験を経て大尉がどのような変化を見せるのか、今から非常に楽しみだ。  

映画『恋愛の抜けたロマンス』(2020)

 (C)2021 CJ ENM Co., Ltd., TWELVE JOURNEY ALL RIGHTS RESERVED

【作品情報】原題:연애 빠진 로맨스(英題:Nothing Serious)韓国映画 95分 監督:チョン・ガヨン 脚本:チョン・ガヨン、ワン・ヘジ 撮影:イ・ソンジェ 編集:ナム・ナヨン 音楽:サンウジョンア

出演:チョン・ジョンソ、ソン・ソック、コン・ミンジョン、キム・スルギ、ペ・ユラム、キム・ジェファ

 

恋愛するのはもうこりごりだが寂しいのは嫌いな女性ジャヨン(チョン・ジョンソ)と雑誌の編集者で恋愛体験記を書くよう編集長から無茶振りされた男性ウリ(ソン・ソック)がマッチングアプリで出逢う。直ぐ様、体の関係を持ったふたりだったが・・・。

 

インディーズ作品『ビッチ・オン・ザ・ビーチ』(2016)で知られているチョン・ガヨン監督のメジャーデビュー作だ。チョン・ガヨンはこれまで演出と共にヒロインも自分自身で演じてきたが、今回は『バーニング 劇場版』(2018)や『ザ・コール』のチョン・ジョンソが務めている。

 

性欲丸出しのかなりきわどい会話に少しばかりハラハラさせられる一種の艶笑コメディーだが、いやらしさを感じさせず、根本にあるピュアな部分をうまく表現している。すこぶる愉しい大人のラブコメで、ソン・ソックの可愛らしい(としかいいようのない)素敵な笑顔には誰もが魅了されるだろう。

 

ドラマ『私の開放日誌』(2022)全16話

出典元:JTBC公式Facebook

【作品情報】原題:나의 해방 일지/My Liberation Diaryso JTBC  監督:キム・ソギュン 脚本:パク・ヘヨン 音楽:キム・テソン 

出演者:イエル、イ・ミンギ、キム・ジウォン、ソン・ソック、イ・ギウ、チョン・ヘジン、チョン・ホジン、イ・ソンギョン、キム・ロサ、チョン・スヨン、ハン・サンジョ、チョ・ミンギ、チョン・ヨンジュ 

 

郊外のサンポ市に暮らす、ヨム家の三きょうだい、長女ギジョン(イ・エル)長男チャンヒ(イ・ミンギ)次女ミジョン(キム・ジウォン)は、毎日、電車とバスを乗り継ぎ、ソウルまで1時間半以上かけて通勤している。

 

通勤だけでも大変なのに、彼らの職場はいずれも理不尽さやストレスにあふれていて、上の二人は常に元気なほど不平をまくしたてているがミジョンはいつも静かで淡々としている。

 

彼らの両親は朝から晩まで働き、休むことを知らない。そんな家族に混じって、父親の家具工場を手伝い、きょうだい以上に農作業も手伝う寡黙な人物ク氏を演じているのがソン・ソックだ。

ク氏は、ある日、ふらっと町にやって来て住みついた素性もわからない謎の男で、アルコール依存の気がある。なにやら秘密を持っているらしいが黙して語らないこの男を、ソン・ソックは、淡々と飾らず、しかし雰囲気たっぷりに演じている。

 

そんなク氏にある日、ミジョンが言う。「私を崇めて」と。その言葉をきっかけに、寡黙な二人の中で何かが変わっていく。次第に自分自身を開放させていくク氏。二人は心を通わせていくが、それは世間一般で言うところの恋とは少々違っている。ミジョンはクに酒をやめろとはいわないし、彼の以前の職業に驚きはするものの、詮索はしない。彼女は、クという人物だけを真っ直ぐ見て、彼を認めているのだ。そして自分自身を開放させていく。

ク氏のアウトサイダー的な魅力が、ソン・ソックに非常にマッチしている。それでいて、ミジョンに心開いていくク氏の姿は愛らしくさえある。これもまた、ソン・ソックにとてもマッチしている。

 

本作は、彼ら二人以外の展開も素晴らしいのだが、さすがに長くなりすぎるので、今回はこのへんで。

(文責:西川ちょり)

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