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Netflix韓国映画『バッドランド・ハンターズ』あらすじと解説 / ポストアポカリプスの世界を超絶アクションで描く濃度100パーセントの“マ・ドンソク映画”

Netflixオリジナル韓国映画『バッドランド・ハンターズ』は、マブリーの愛称でおなじみのマ・ドンソク主演のアクション超大作だ。

 

未曽有の大地震によって世界が崩壊し無法地帯の荒野と化したソウルを舞台に、怪しげな団体に連れ去られた少女スナ(ノ・ジョンウィ)を救出するため、恐れ知らずのハンター、ナムサン(マ・ドンソク)は弟分のジワン(イ・ジュニョン)と共に危機の中に飛び込んでいく。

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パク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』(2003)など多くの作品でスタントマンやアクション俳優として活躍し、「犯罪都市」シリーズ(2017~)、ドラマ『ナルコの神』(2022)、『天命の城』(2018)などの武術監督やスタント・コーディネイトを手がけてきたホ・ミョンヘンが本作で監督デビューを果たした。

 

2024年1月26日よりNetflixで配信開始。  

 

目次

『バッドランド・ハンターズ』作品情報

(C)Netflix

2024年製作/韓国映画/108分/原題:황야(英題: Badland Hunters)

監督:ホ・ミョンヘン 脚本:キム・ボトン クァク・ジェミン 撮影:변봉선

出演:マ・ドンソク、イ・ヒジュン、イ・ジュニョン、ノ・ジョンウィ、アン・ジヘ、パク・ジフン、チャン・ヨンナム、パク・ヒョジュン、ソン・ビョスク、チョン・ヨンジュ  

『バッドランド・ハンターズ』のあらすじ

ヤン・ギス博士は自分の娘の命を救うため、危険な研究を続けていた。実験台として多くの人が命を落としており、ついに当局が強制捜査に乗り出したその日、未曽有の大地震が起き世界は崩壊してしまう。

 

生き残った人々は瓦礫が散乱する中テントを張り、助けあいながら生活していた。不自由な暮らしの中でもとりわけ人々を悩ませていたのが深刻な水不足だ。崩壊から三年が経っても、もとのような生活に戻るのは不可能と考えられていた。

 

ナムサンは弟分のチェ・ジワンと共に、野生の動物を狩り、その肉を売って生活していた。ナムサンは娘のようなハン・スナをかわいがり、彼女の祖母のことも気にかけていた。時々、愚連隊のような連中が姿を見せるが、ナムサンにはかなわず、逃げて行くのが落ちだった。

 

ある日、スナの前に「先生」と名乗る女性が現れ、水と食べ物が豊富なマンンションでスナのような子どもを特別に保護する機関があると告げる。そのマンションには子どもとその肉親しか入れないと言われ、スナに密かに思いを寄せているジワンはがっかりする。

 

祖母はスナのためにはこんなチャンスはないと考え、移住を承諾することにした。ナムサンたちもこんなところにいるよりはずっといいと彼女たちを暖かく送り出した。

 

移住のために集められたほかの人たちと一緒に長い距離を歩く中、スナの祖母と別の家族の年配の男性が疲れて歩けなくなってしまう。

 

先生は、近くに救護所があるから、そこで休憩して、あとから合流してもらいますと言い、男二人が付き添うことになった。スナは祖母のことを心配しながらも、一行についていくしかない。

 

スナの祖母と老人はしばらく男たちに支えられながら歩いていたが、「着きました」という男たちの言葉に驚いて立ち尽くした。なぜならそこは何もない廃墟だったからだ。老人はいきなり谷底にけり落され、祖母も殺されてしまう。

 

たまたま狩りのために遠征していたナムサンたちはその現場を目撃してしまう。男たちは凶器を手にナムサンとジワンに襲い掛かって来たが、ナムサンの鋭いパンチにすぐにダウンしてしまう。

 

ところが、彼らはどんなに殴ろうが鉈で切り付けようが、再び、蘇って来る不死身の男たちだった。戸惑うナムサンたちの前にイ・ウンホ軍曹と名乗る女性が現れる。

 

不死身の男たちを倒すには頭を狙えという彼女の助言のもと、ナムサンたちはようやく男たちを倒すことが出来た。

 

ウンホ軍曹はナムサンが凄腕であるといううわさを聞き、助けを求めてやって来たのだ。唯一地震で崩れずに残ったマンションの地下に仲間が捕らえられているという。スナが何者かに連れ去られたことが明らかになった今、ナムサンたちも彼女を救うために急いでマンションへと向かわなければならなかった。

 

マンションで権力を握っていたのは、あのヤン・ギス博士だった。彼は汚染水を濾過して新鮮な水を作るシステムを発明し、皆の希望の星として慕われていた。軍人たちは不死身の身体を手に入れ、博士の手下となって、このひとつの「国」を管理していた。

 

スナは祖母がいつまでたっても到着しないことに疑問を持ち、また、自分と同じくらいの子供たちが皆、耳たぶの後ろに傷のようなものがあることに気が付く。彼ら、彼女たちは皆、生気のない顔をして教室にじっと座っているのだ。

 

ヤン・ギス博士は子どもたちを集め、危険な実験を行っていたのだ。スナにも魔の手が近づいていた・・・。  

 

『バッドランド・ハンターズ』解説と感想

【参考動画】

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本作は2024年に日本でも劇場公開された『コンクリートユートピア』の続編的位置づけにある作品だ。

ホ・ミョンヘン監督自身は「続編ではない」と述べているらしいが、地震で世界が崩壊したあとの生存者たちの姿を描く点(ただし、『バッドランド・ハンターズ』は地震から三年が経過している)、たった一棟、崩壊を免れたマンションの形が『コンンクリートユートピア』で登場したマンションとそっくりなことなど共通点も多い。ただ、作風はまったく違っていて『コンクリートユートピア』が極限状態の人間の姿を観察し、社会風刺をこめたパニック・スリラーになっていたのに対し、『バッドランド・ハンターズ』は徹頭徹尾、エンターティンメントに特化した究極のポストアポカリプス映画に仕上がっている。

 

『コンクリートユートピア』が普通の人間の怪物化を描いたのに対し、本作でマ・ドンソクが闘う相手は、不死身化したソルジャー(ゾンビではない)とマッド・サイエンティストだ。そういう意味ではあまり新味がなく、『コンクリートユートピア』の持つ深みを期待すると物足りなく感じるだろう。

 

だが、元スタントマンで武術指導を長らく担当して来たホ・ミョンヘンが監督を務めているだけあって、アクションシーンは抜群の切れ味を見せている。

 

マ・ドンソク扮するナムサンは、背中に鉈を背負い、彼の弟分であるチェ・ジワン(イ・ジュニョン)は弓を武器にしている。相手がソンビのように頭をふっとばさないといけない怪物なので、剣もライフルもマシンガンも使用するが、基本的にはマ・ドンソクの圧倒的な腕力がものを言い、そのパンチの重さが画面からリアルに伝わって来る。

さらに、マ・ドンソクが筋肉隆々の余り、背中に手が回らず鉈が取れないというお約束のギャグや、階段で8階まで上がる際、「膝が痛いぜ」と少々お疲れの描写など、コミカルなタッチも随所に盛り込まれている。

 

ナムサンたちと共に行動することになる特殊部隊の女性軍曹イ・ウンホに扮するアン・ジヘは、『スレイト』(2020)などの作品で知られるアクション俳優で、本作でも一切のスタントを使わずアクションに挑んだという。敵の脚を狙うという彼女の闘い方が、本作のアクションに新しいバリエーションをもたらしている。

 

ヴィランであるマッド・サイエンティストを演じているのは『1987、ある闘いの真実』(2017)、『KCIA 南山の部長たち』(2019)などの作品で知られるイ・ヒジュンだ。彼の行為はマッド・サイエンティストと呼ばれて当然のものだが、彼が、新しい世界を自分の支配に置きたいといった野望に満ちたタイプかというとそうではない。

彼がスナのようなティーンエイジャーを集めるのも、若い優秀な遺伝子で新しいタイプの「人類」を増やしていくというようなSFチックな発想が生んだものではなく、単純に自分の娘と同じくらいの年頃の人間を実験台にしたいからだ。彼の行動のすべては娘を助けたいという執念によるものなのである。

 

尤も、この悪役に同情する余地はない。彼の指導のもと、子どもも、老人も、子どもを愛するがために抗議した親たちも、ある意味潔い良いほど、あっさり殺されてしまう。その無常観の中から一棟残ったマンションでの尋常でない状態が可視化されるのだ。

 

本作はポストアポカリプスの世界を描いた壮絶なアクション映画だが、まず何よりも「THEマ・ドンソク映画」である。彼がいるということの安心感とアクションのハラハラドキドキ感が程よく両立していることにマ・ドンソク映画の面白さがある。

(文責:西川ちょり)

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