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映画『沓掛時次郎 遊侠一匹』あらすじ・ネタバレ/ 加藤泰による戦後股旅時代劇映画の最高峰

映画『沓掛時次郎 遊侠一匹』は、カフェ併設型映画館『Stranger(ストレンジャー)』の特集上映「東映スペシャルセレクション」(11/17(木)~12/8(木)にて上映!

長谷川伸による戯曲『沓掛時次郎』の映画化は1929年の大河内傳次郎主演で制作された『沓掛時次郎』(日活)を皮切りに8本作られているが、本作は、加藤泰監督、中村錦之助主演で制作された1966年の作品。

加藤泰にとって長谷川伸の原作の映画化は『瞼の母』(1962)に続く二作目。戦後股旅時代劇映画の最高峰のひとつとして知られ、加藤泰の最高傑作とも称される一本だ。

 

目次

 

『沓掛時次郎 遊侠一匹』の作品情報

1966年公開/東映京都作品/カラー スコープ/90分 監督:加藤泰 原作:長谷川伸 脚本:鈴木尚之、掛札昌裕 撮影:古屋伸 照明:中山治雄 美術:井川徳道 音楽:斉藤一郎 主題歌:フランク永井「遊侠一匹」

出演:中村錦之助、池内淳子、東千代之介、弓恵子、高松錦之助、那須伸太朗、小山田良樹、松下次郎、志賀勝、岡崎二朗、中村信二郎

 

『沓掛時次郎 遊侠一匹』のあらすじ・ネタバレ・解説

(C)東映

橋である。仁義を切っている男たちの頭が見えてくる。だんだん全身が見えてきて、これをずっと固定カメラで撮っている。

「おひけぇなすって」と言っているのは、実は時次郎(中村錦之助)を慕う渡世人、見延の朝吉(渥美清)で、時次郎の真似をしてみせているのだ。しみじみ、親分は凄いなぁと言っている朝吉のアップ。

継いで気付けば海辺、砂浜で親分が三人の男たちに囲まれている。

三人をあっさりばっさり血飛沫上げて斬る時次郎。場面変わって安宿。画面前方に顔を正面に向けて肘をついて横たわっている時次郎。その後ろでは女と客たちがわいわいやっている。と、突然雨が降り出す。

 

朝吉は遊郭へ。ここの女たちが面白い。しっかりご飯を食べていて、朝吉を待たせている。朝吉は猫とじゃれていたりする。焼き芋をえんえんと食べている女。この女、朝吉より立派な刺青を背負っているのだ。扮するは三原葉子。コミカルないい場面である。

さらにここのおかみさん・お葉(弓恵子)はもっと凄い刺青を背負っているという。そのお葉が時次郎を自分たちの争いごとの味方につけようと画策するのだが、その結果、威勢よく一人乗り込んでいった朝吉は無残に殺されてしまう。

地面すれすれのローアングルで時次郎の草鞋を履いた足を手前に、奥に、滝を映し出す。朝吉の遺骨を入れた壷をそっと流す時次郎。

 

時次郎が渡し舟に乗っていると、おきぬ(池内淳子)親子が船に乗り込んで来て、舟の客に、一人ずつ柿を渡している。前に座っている時次郎にも柿を渡すおきぬ。舟を降りたあと、おきぬの息子、太郎吉(中村二郎)を肩車している時次郎。束の間の幸福なひと時だ。

 

ところが、皮肉な運命というか、一宿一飯の恩義にやくざものを斬った時次郎だったが、その男はおきぬの夫だった。おきぬを託された時次郎。三人の奇妙な同居生活が始まる。おきぬと時次郎はひかれながらも結ばれることはない。夫の仇だが恩人でもある時次郎への複雑な思いに苛まれ、おきぬは一旦彼の前から姿を消すが、ふたりは再び巡り合う。

 

おきぬの容態が悪くなり、時次郎は、薬を買う金、十両のためにやくざの戦いに参加する。「あの人が帰ってくるときに綺麗な顔でいたい」とおきぬは紅を震える指で唇につける。しかし、時次郎がただいま戻りました!と元気に帰ってきたときには、世話をしていた夫婦が遅かったよ〜と泣き崩れる。

 

ラスト、太郎吉を連れて山道を歩いていると、因縁のあるやくざ志望の若者(岡崎二朗)が襲ってくる。「百姓に戻りなせえ」と若者を峰打ちにし、川に落とす。子どもを抱きかかえて去っていく時次郎。

 

抜けに抜けられぬ渡世の因果、結ばれることのない男女の情愛、突然降りしきる雨や雪、加藤泰の美学がたっぷり詰まった戦後股旅時代劇映画の至高の一本。井川徳道による美術も素晴らしい。

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www.chorioka.com

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