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WKW 4K / 映画『恋する惑星』4K あらすじ・感想 / 永遠に色褪せないウォン・カーウァイの世界(関西上映情報も)

(C)1994 JET TONE PRODUCTIONS LTD. (C)2019 JET TONE CONTENTS INC. ALL RIGHTS RESERVED

【WKW 4K ウォン・カーウァイ 4K】 と題して、香港の名匠、ウォン・カーウァイ監督の5作品4Kレストア版が全国順次公開されている。

 

関西では塚口サンサン劇場で『恋する惑星』2022年11/4(金)〜10(木)『天使の涙』11/4(金)〜10(木)『ブエノスアイレス』11/11(金)~17(木)『花様年華』11/11(金)~17(木)『2046』11/18(金)~24(木)のスケジュールで公開される他、109シネマズ箕面〈『恋する惑星』『ブエノスアイレス』『花様年華』11/18(金)~ /『天使の涙』『2046』11/25(金)~〉、シネ・ヌーヴォ〈11/19(土)~25(金)〉での公開が予定されている。(その他のスケジュールは公式HPで、詳しい上映時間は各映画館のHPでご確認ください。)

 

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劇場にウォン・カーウァイ作品がかかっている限り、追いかけて見続けねばならない。『恋する惑星』で金城武が「なんにでも期限がある」と言ったように、いつか何事にも終わりがあるのだから。一方で、ウォン・カーウァイ作品の輝きは永遠に色褪せることはない。

 

目次

 

『恋する惑星』作品情報

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1994年/ 香港/ 原題:重慶森林 (英題:Chungking Express)/102分/広東語  監督・脚本・制作:ウォン・カーウァイ   撮影:クリストファー・ドイル、アンドリュー・ラウ 美術・編集:ウィリアム・チョン 編集:カイ・キットウァイ、クォン・チーリョン 録音:レオン・タッ、レオン・リクチー、チャン・ワイハン 音楽:フランキー・チャン

出演:トニー・レオン、フェイ・ウォン、ブリジット・リン、金城武、ヴァレリー・チョウ、

『恋する惑星』のあらすじ・感想・評価

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重慶マンション*1のせまい通路(そしてインド人が常にたむろしている場所)を金髪でトレンチコート姿の女(ブリジット・リン)が通り過ぎていく。アンドリュー・ラウによるコマ落とし、コマ伸ばしの大胆な撮影がダークな雰囲気を作り上げる。

 

金城武扮する刑事223番はエイプリルフールに失恋したばかりだ。彼はデリカテッセン〈ミッドナイト・エクスプレス〉の前の公衆電話から片っ端に電話して広東語、北京語、日本語、英語で会話するが、望むようなコミュニケーションはほとんどとれない。彼は願掛けで期限のせまったパイン缶ばかりを買ったりするが、その缶詰も期限が迫れば店内から除去されてしまう。何にでも期限があると彼は呟く。

 

ジュークボックスからレゲエが流れたあと、インド音楽が軽快に流れだしてドラッグディーラーのブリジットの麻薬売買の準備があわただしく行われている。しかしこの計画は空港でインド人にまんまととんずらされるというオチで、すっかり赤っ恥をかかされたブリジットは彼ら全てに報復する。

 

金城とブリジットは重慶マンションで一度すれ違っている。“その時、彼女との距離は0.1ミリ。57時間後、僕は彼女に恋をした” この台詞、いかにも90年代的ではあるけれど古びてないというか、気恥ずかしくないのは、彼らの恋が人生の真実の一旦を垣間見せてくれるからに違いない。

 

刑事と犯罪者、深いかかわりもない他人同士なのに、ささいなたった一言で誰よりも心が通じた一瞬。人は何気ないことで落ち込みもするし、立ち直ることも出来るのだ。犯罪と青春ものが、見事にリンクする物語が素晴らしい。

もし、仮に金城がブリジット・リンと出会っていなければ、彼は新しいデリカテッセンの売り子に興味を示したかもしれない。しかし彼は、フェイ・ウォンを男性に間違える始末。よって彼はこの場からフェード・アウト。フェイ・ウォンとトニー・レオンの物語へと変わるのだが、これが、なんといっても素晴らしいの一言につきるのだ。

トニー(刑事633番)に一目惚れしていながら、ちょっとつっけんどんな態度しかとれなかったり、トニーに会うために遠出の大変な仕事を買ってでたり、フェイ・ウォンのいちいち可愛らしいことといったらない。

 

挙句は留守中に彼の部屋に入り込むというストーカーまがいのことをし始めるのだけれど、ストーカーというよりは彼女にとってこれはちょっとした冒険なのだ。自身の気持ちは知られずに彼に関連するものに自由に触れられる空間。ある種の秘密基地めいたもの。こんな素敵なもの(時、空間)ないじゃない!とばかり彼女は音楽に体を揺らせてリズムを取り、恋する乙女を表現する(勿論、彼女自信は無意識)。

そして、トニー・レオン。甘い二枚目であるには違いないが、ひと目でイケメン!と大騒ぎするほどの天下の美青年かというと、それほどでもない(ファンの人ごめんなさい。でも筆者の一番好きな俳優はトニーです)。落ち着いていて、優しげで、品のあると表現したほうがしっくりくるだろう。

 

しかし、彼は時折、ものすごく男っぽくなる時があって、この作品ではフェイ・ウォンが彼の留守中に部屋に入っていたことがばれて、トニーが足が疲れている彼女を座らせ足をもみほぐすシーンがそうだ。男の色気というのだろうか艶っぽさがとても出ていて、フェイ・ウォンがいつもと違う彼の雰囲気に不安気な顔を見せるのが非常にリアルに感じられた。

恋してる時のうきうき感と、恋が実るかもしれないという喜びと、それに伴う不安が画面に満ちあふれている。

 

ラスト、トニー・レオンは制服を脱ぎ、フェイ・ウォンは制服を着用している。完全に服装が入れ替わっている。彼らの恋の成就はその段階がなんとしても必要だったのだ。

 

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*1:香港の九龍、尖沙咀にある雑居ビル