Netflixドラマ『ウンジュンとサンヨン』(全15話)は、互いを深く理解し愛し合いながらも、羨望と嫉妬で衝突する二人の女性、ウンジュンとサンヨンの複雑な関係を描いた感動的なヒューマンドラマだ。
友情、愛情、嫉妬、裏切りが交錯する二人の物語は、10代から40代にかけて展開し、視聴者を深い感情の渦に引き込む。
映画『破墓/パミョ』(2024)や『ラブ・イン・ザ・ビッグ・シティ』(2024)で知られるキム・ゴウンが ウンジュン役として登場。明るく堅実なキャラクターを熱演している。
一方、クールな外見とは裏腹に孤独と不安を抱えるサンヨン役を、映画『秘顔-ひがん-』(2024)やドラマ『財閥X刑事』(2024)のパク・ジヒョンが繊細かつ力強く演じている。
人間の複雑な心の葛藤と変化を体現した二人の演技は圧巻で、本作は二人の新たな代表作となるだろう。
配信情報:ドラマ『ウンジュンとサンヨン』(全15話)は、2025年9月12日よりNetflixで独占配信中。
目次:
- Netflix韓国ドラマ『ウンジュンとサンヨン』(全15話)あらすじ
- Netflix韓国ドラマ『ウンジュンとサンヨン』(全15話)感想と評価
- Netfllix韓国ドラマ『ウンジュンとサンヨン』(全15話)作品情報
Netflix韓国ドラマ『ウンジュンとサンヨン』(全15話)あらすじ
脚本家のリュ・ウンジュン(キム・ゴウン)は、新しいテレビドラマの企画会議中、著名な映画プロデューサーでスワロー・ピクチャーズの代表であるチョン・サンヨン(パク・ジヒョン)のスピーチを聞いたかと尋ねられる。サンヨンは受賞式で、人生で最も大きな影響を与えてくれたウンジュンに感謝の意を表したというのだ。
ウンジュンにとってチョン・サンヨンは思い出したくない名前だった。ウンジュンが大手映画プロダクションのプロデューサーだった頃、サンヨンにウンジュンが温めていた企画を奪われたのだ。映画はヒットし、彼女は一躍名プロデューサーとして名をあげ、これまで11本の話題作を世に送っていた。
サンヨンとの出会いは、子ども時代にさかのぼる。ウンジュンが子どものころの思い出を書いた文章を同僚のチェPD(チュ・ミンギョン)は興味深そうに読み始めた。
1992年、ウンジュン(ト・ヨンソ)は小学校四年生だった。ウンジュンは8歳の時に父を亡くし、みすぼらしい半地下の家に住んでいた。近くに出来た新築の団地の清掃の仕事をしている母について行ったとき、ウンジュンはその部屋のあまりの美しさに心を奪われる。その家にはトイレが2つもあった。ウンジュンは思わず「あなたが羨ましい」と書いたメモ用紙をタンスの脇に貼り付ける。
サンヨン(パク・ソギョン)は学期の合間に転校してきた12人の生徒のうちの一人だった。サンヨンは勉強ができ、また彼女の祖父が元政治家だということもあってすぐに学級委員長に選ばれる。
担任の先生がいない間、学級委員長のサンヨンはクラスを監督する役目を担っていた。ある日、ウンジュンが隣の男子生徒の嫌がらせに抗議して声を荒げた際、サンヨンは懲罰としてその男子と共にウンジョンの手を棒でおもいっきり叩いた。そのことでウンジュンはサンヨンに対して少なからぬ怒りの感情を持つ。
5年生になるとウンジョンには友達がたくさんでき、本来の活発な性格が前に出るようになった。ドッジボールの時間、ウンジュンは執拗にサンヨンを狙い、それが意図せずサンヨンの頭にあたってしまった。サンヨンはウンジュンがわざと当てたのだと主張し、親が呼ばれる事態になる。
大ごとにはいたらずに済むが、このことをきっかけに、ウンジュンはサンヨンが彼女の大好きな先生、ユン・ヒョンスク(ソ・ジョンヨン)の娘であり、サンヨンが兄のサンハク(ムン・ウジン)と共に、あの素敵な団地の部屋に暮らしていることを知る。
やがて彼女たちはわだかまりを失くし良き友人となり、互いの家を行き来して、交友を深めるようになった。サンハクはウンジュンの初恋の人となった。ウンジュンの書いた物語はそこで終わっていた。
ドラマの原作を捜しているウンジュンのもとにある日突然サンヨンから連絡が入り、二人は再会する。サンヨンは衝撃的な知らせを告げる。自分は癌におかされていて、余命いくばくもない。そのためスイスで安楽死をするつもりだ。それに付き添いとして一緒に来てほしいというのだ。ウンジュンは激しく動揺するが、「これは大変な暴力だ」と彼女に告げ、その場を去った。
彼女たちはこの日のように何度もこれまで印象的な再会をして来た。大学での思いがけない再会。その10年後、社会人になった際の突然の再会・・・。
ウンジュンは二人が互いに認め合い大きな愛情を感じながら、すれ違い、憎み合ってしまうその複雑な関係について綴り始める・・・。
Netflix韓国ドラマ『ウンジュンとサンヨン』(全15話)感想と評価
(ネタバレしています。ご注意ください)
韓国ドラマ『ウンジュンとサンヨン』は、二人の女性の10代から40代へと続く複雑な関係を描いた叙事詩的作品だ。憧れと嫉妬、羨望と恨みが交差する複雑な感情の軌跡が、全15話という昨今のドラマの中では比較的長めの時間を費やして鮮やかに描かれている。
10代と20代のときはそれぞれ小学校と大学で、30代には社会人として同じ職場で顔を合わせることとなった二人は「あなたが壊れたらいいな。私のように」というサンウンの呪いのような言葉と共に決裂し、その後10年間、完全に絶縁状態となる。
二人が40代となったある日、ウンジュンに連絡して来たサンヨンは、自身が末期癌であることを告げ、安楽死するためのスイスへの旅に同行してもらいたいとウンジュンに要請する。ウンジュンはかつての友人の現状とその願いにショックを受け、逃れるようにその場を離れる。傷つけ絶交に至った相手に「最後の瞬間を一緒に過ごしてほしい」と願うのは何故なのか!?
物語はこのシーンを導入部として用い、小学性の時から二人が築いてきた歴史を振り返ることでそれが意味することを丹念に綴って行く。
第一話では二人の出会いが描かれる。二人の家庭環境は正反対だった。早くに父を亡くし母と幼い弟と半地下のみすぼらしい家で暮らすウンジョンに比べてサンヨンは恵まれた環境で育った
同じ小学生の中での階級格差や、差別と暴力が容認された教育など、1992年当時の韓国の教育現場の実態を取り入れながら、巧みにふたりの環境の違いが語られる。
彼女たちの友情の始まりが最初は「わだかまり」で始まったのが興味深い。貧しいが暖かい家庭に育ったウンジュンと違い、サンヨンは母と兄の愛に飢えていた。その愛の欠乏が、後にふたりの複雑な関係を作る原因の一つとなるのだが、5年生になって仲良くなった二人は互いに家を行き来しながら友情を育み、お互いになくてはならない存在となる。
しかし、サンヨンの兄の死など家庭の事情でサンヨンは突然引っ越してしまい、二人は一度は疎遠になるが、大学生になって再会する。サンヨンは、兄の死後、破産、両親の離婚を経験し、バイトに追われる苦学生となっていた。彼女がそんな暮らしぶりでなかったら、ウンジュンが一緒に暮らそうと声をかけることもなかったかもしれない。
サンヨンのために何かしてあげたいというウンジュンの思いやりがやがてサンヨンのプライドを傷つけ彼女を追い詰めて行くことになる。
20代のエピソードはほとんど一人の男性キム・サンハク(キム・ゴヌ)を巡る三角関係に費やされているが、ここにも巧みな設定がほどこされていて、サンヨンを典型的な「悪女」のようには描いていない。彼女の気持ちを思えば切なすぎるのだが、彼女は決してウンジュンと先輩の仲を裂きたかったのではない。しかし、サンヨンが絡んだことでウンジュンと先輩の関係は脆くも崩れてしまう。誤解と推測が三人の仲を完全に裂いてしまうのだ。
先輩を巡る三角関係は30代で再び繰り返されることになるが、結局のところ、三角関係自体はさほど重要ではない。本作は誰よりもお互いをよく知っているが、一方では何も理解していなかった二人の女性の物語なのだ。
「あなたにはかなわない」という羨望をお互いが抱いているのに、ふたりはそれは自分だけの感情だと思っている。相手が自分をそのように思っていただなんて想像もしていなかっただろう。感情がもつれる中、羨望はまもなく恨みへ恨みは再び羨望へとメビウスの輪のように言ったり来たりを繰り返すようになる。
二人がお互いを最もよく理解しているように見えて、実際は最も知らなかったことをドラマはじっくりと丁寧にディテールを積み重ねて描いている。他人のために何かをしたいと思っても自分の価値基準が他人にも通じるとは限らない、相手も同じだ。人を理解することは難しい。理解しようと推測するあまり誤解が生まれ、時として相手の尊厳を傷つけてしまう。本当に人が何を望んでいるかだなんて、他人にはわかるはずがないのだ。作品はこうした状況を非常に深く掘り下げ、相手を理解しようとする配慮が逆に大きな断絶を導いてしまうという複雑な事の本質を浮かびあがらせる。
こうした感情の推移は決して特別な話ではない。誰もが多かれ少なかれ、人生の痛みとして記憶しているものではないだろうか。
キム・ゴウンとパク・ジヒョンの素晴らしい演技がなければこの複雑な感情の年代記ともいうべき物語は成り立たなかったかもしれない。
キム・ゴウンはウンジュンという、極めて平凡なキャラクターを完璧にこなし、観る者が同一視できる主人公を作り上げた。陽気でパワフルな外見に潜んだ繊細な感情も鮮やかに表現している。
一方、パク・ジヒョンはすべてを完璧にこなす能力を備えながら、誰よりも深い悲しみと愛への欠乏を抱いているサンヨンの複雑な内面を完璧に自分のものにしている。クールな表情で感情を隠しているが、壊れそうな傷つきやすい内面を抱えた人間の孤独と不安を見事に体現し、この人物を類型的な悪女にしてしまう危険性から見事に脱している。
二人とも、髪型やファッションの工夫はあるとはいえ、20代から40代の女性を違和感なく演じている点も素晴らしい。
「死に至る病」がなければプライドの高いサンヨンは、ウンジュンに声をかけられなかったかもしれない。それだけ決定的に決裂してしまっていた二人なのだが、彼女たちの憎しみはまさに「愛」の裏返しであり、これはやはり、絶対的な「愛」の物語なのだ。
「尊厳死」という問題にも真摯に向き合いながら、物語は人間の死を巡って、「去る者」と「残された者」がどのような感情をたどり、どのような痕跡を残すのかを私たちに体感させ大きな余韻を残す。
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Netfllix韓国ドラマ『ウンジュンとサンヨン』(全15話)作品情報
2025年/韓国/全16話(868分)/原題:은중과 상연(英題:You and Everything Else)/配信:Netflix
監督・演出:チョ・ヨンミン 脚本:ソン・ヘジン
出演:キム・ゴウン、パク・ジヒョン、キム・ゴヌ、チャン・ヘジン、ソ・ジュンヨン、チュ・ミンギョンユン・セウン、キム・ジェウォン、イ・サンユン、コン・ミンジョン、エン、チョ・ジノ、イ・ユンジェ、チョン・ヒリン、コン・ジンソ、イ・ジョンウォン、チャン・ソン、チョ・ヒョンチョル、クァク・ミンギョ、ト・ヨンソ、パク・ソギョン