6人の登場人物が皆、赤い糸で結ばれている予告ポスターが象徴しているように、ドラマ『悪縁』は、悪縁で絡み合った6人の男女の運命を描くクライムスリラーシリーズだ。
ある事件をきっかけに、それぞれが抱える暗い過去や秘密が複雑に交錯し合い、運命的な繋がりによって予測不能な展開へと突き進んで行く。
チェ・ヒソンによるカカオウェブトゥーンを原作に、脚本・監督を『華麗なるリベンジ』(2016)、『復讐の記憶』(2022)のイ・イルヒョンが担当。本作がイ・イルヒョン監督のドラマシリーズデビュー作となった。
高利貸に返済を迫られ窮地に陥っている男パク・ジェヨンに映画『1987、ある闘いの真実』(2017)やNetflixドラマ『殺人者のパラドックス』(2024)などのイ・ヒジュン、ジェヨンの担当医師ジュヨンにドラマ『海街チャチャチャ』(2021)、映画『慶州(キョンジュ) ヒョンとユニ』(2014)のシン・ミナ、ジェヨンに殺人を持ちかけられる男にドラマ『D.P. ‑脱走兵追跡官‑』(2021)や映画『奈落のマイホーム』(2021)のキム・ソンギュン、不倫しているメガネ男に『タチャ ワン・アイド・ジャック』(2019) 、『僕の特別な兄弟』(2019)などのイ・グァンス、その相手の女に映画『おひとりさま族』(2021)などのコン・スンヨン、ある目撃者に『イカゲーム』などのパク・ヘスが扮し、さらにジュヨンの同僚医師をキム・ナムギル、闇金の胴元をチョ・ジヌンが演じるなど錚々たる役者が揃い、演技の火花を散らしている。
各話で異なる人物の視点が採用され、事件の全体像が徐々に明らかになって行く。ひと癖もふた癖もある彼らの行動は、めぐりめぐって恐ろしく血なまぐさい結末へと向かう・・・。
ドラマ『悪縁』は、2025年4月4日よりNetflixにて配信中。
目次
Netflix韓国ドラマ『悪縁』(全6話)作品情報
2025年製作/全6話/韓国/原題:악연(英題:Karma)/配信:Netflix
監督・脚本:イ・イルヒョン 原作:チェ・ヒソン
出演:イ・ヒジュン、シン・ミナ、パク・ヘス、イ・グァンス、キム・ソンギュン、コン・スンヨン、キム・ナムギル、チョ・ジヌン、チェ・ホンイル、パク・ミヒョン、キム・ヨナ
Netflix韓国ドラマ『悪縁』(全6話)あらすじ
深夜の廃工場で火災が起き、消防士たちの決死の作業が続いていた。工場の中に突入した消防士は、大やけどを負いながらも生きている男を発見する。
病院に運ばれ、緊急治療を受けた男は意識を取り戻し、パク・ジェヨン(イ・ヒジュン)と名乗った。 カルテに名前を書き込もうとしていた担当医師(シン・ミナ)はそれを聞いて思わず手を止める。ひどい火傷を負った男の顔を見つめる医師は明らかに動揺していた。
物語は火事の15日前にさかのぼる。ジェヨンのアパートのドアには大家から家賃を催促する張り紙が貼られていたが、彼はそれを破いて捨て去った。滞納はすでに3カ月に及んでいたがジェヨンには金がなかった。ジェヨンの携帯電話には頻繁に取り立ての電話がかかって来たが、払えないものは払えないと彼は居直っていた。彼は借金まみれの男なのだ。
ところが、男がひとり彼のアパートに侵入して来て彼はあっという間に拉致されてしまう。連れて来られたのは臓器の闇市場の手術室で、彼は手術台に縛り付けられ、外科医が別の債務者から内臓を取り出しているのを目撃させられる。 高利貸しの男はジェヨンに向かって「金を払わなければ、お前も同じ目にあうぞ」と脅し、30日間の猶予を与えるから金を作れと宣告した。
知り合いに金を融通してもらうあてもなく、困り果てた彼は父親に電話をするが、真面目で誠実に生きて来た父親は息子に失望しており、力になってくれない。ところがふとしたことから、ジェヨンは父親が5億ウォンの生命保険に入っていることを知る。
そんな矢先、ジェヨンが高校生数名に絡まれ、負傷し現金を奪われる事件が発生する。事情徴収をする警官にジェヨンは監視カメラを見ればすぐわかるでしょ!と叫ぶが、襲われた路地には監視カメラがないことが判明。それを聞いたジェヨンはよからぬことを思いつく。
なんと彼は同僚のギルリョン(キム・ソンギュン)に父親を殺すよう依頼したのだ。同僚も金に困っているようで、ジェヨンは、父親の保険が入れば山分けしようと持ちかける。
父親は教会でお祈りを捧げて家に戻るとき、いつもあの監視カメラのない路地を通るので、そこで父親をひき殺せば、誰にも気づかれずに済むはずだ。必ず事故にみせかけなければいけないとジェヨンは同僚に念を押し、自らは、その時間帯、友人と飲んだり、カラオケバーやハンバーガーショップをはしごして店員の女性たちに愛想を振り巻きアリバイ作りに専念した。
そろそろ同僚から連絡があってもいいはずだが、なかなか連絡がかかって来ない。彼は不安に襲われるが、そこへようやく電話がかかって来た。しかしそれは同僚からではなく、警察からだった。父が死んだという、待ちかねていた報せだった。
亡くなった父と対面したジェヨンは、はらはらと涙を流すが、それはここに来る前に警察署のトイレの中であらかじめ泣く練習をした成果によるものだった。
これで保険金をせしめられると内心ウキウキだったジェヨンは意外なことを知らされる。これは事故ではなく殺人の疑いがあるという。というのも、目撃者がいて、車が父を轢いた際、躊躇なくバックして二度轢いたことが判明。目撃者は車から降りて来た犯人に気づかれてあわてて逃げたという。
ジェヨンと刑事が話をしているところに、その目撃者である女性が興奮した様子でやって来た。彼女は父の通う教会の信者のひとりだった。
ジェヨンはなんてヘマをしてくれたんだと思わず頭を抱えそうになるが、さらに驚くべきことを告げられる。父の遺体はその監視カメラのない路地で見つかったのではなく、山中に埋められていたというのだ。
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遺体を発見したのは、一人で登山をしていたYouTuberの女性だった。山で一泊した後、下山中、犬の鳴き声がするので坂を下りて行くと、犬が何かを食べているのが見えた。
犬が逃げたあと、近づいてみると、人間の顔が土に埋まっているのが目に入った。彼女は恐怖で腰を抜かし、やっとの思いで警察に通報したのだ。
なぜ、ここに遺体があったのか!? それはまた別の人物たちの物語が関与して来る・・・。
Netflix韓国ドラマ『悪縁』(全6話)レビューと解説
Netflixのドラマシリーズ『悪縁』は、借金を返済するために悪意を抱いた男と、殺人を請け負った男、不倫をする男と商売熱心な女、強請屋、消えない心の傷を抱えた女などが一連のきっかけで複雑に絡み合い、円環を描くかのように巡り巡って最悪の結末へと向かう強烈なサスペンスドラマだ。
欲望と復讐で占められた悪のつながりは、絡んでしまった糸のように彼らの人生をねじれさせ、悪事はより大きな悪事へとつながっていく。この物語では、一つの浅はかな選択が取り返しのつかない結果を生み出し、登場人物たちはその因果の鎖から逃れることができない。
本作に出てくる人物は、そのほとんどが呆れるほどのクズである。例えば、借金返済のために父親を殺して保険金をせしめようとする男は、躊躇いも罪悪感もなく計画を実行する。彼らには道徳という概念が欠如しているようで、そのあまりの厚顔無恥さに呆れを通り越して笑いすらこみ上げてくる。イ・イルヒョン監督は映画『復讐の記憶』でも見せたように、本作でも暗くて陰惨な展開をふんだんに盛り込んでいる。しかし、悪人たちの人間性の欠如があまりにもあっけらかんと描かれているため、不思議な可笑しさが漂うのだ。どの人物も強烈な個性を持ち合わせているが、特にパク・ヘス演じる強請屋はその慇懃無礼な態度で善人を装いながら、口止め料を次々と要求してくる実にいやらしいキャラクターだ。彼のずる賢さと図々しさは観る者を苛立たせるが、同時に目が離せなくなる魅力を放っている。
脚本の秀逸さは特筆ものだろう。第一話のラストはそれを象徴している。交通事故を装って父親殺しを依頼した男が、警察に呼ばれて父の遺体を確認し、保険金が入ることに内心小躍りしている様子が描かれる。だが、事態は予想外の方向へと進む。父は二度も車に轢かれており、明らかに故意に殺害された痕跡がある。さらに驚くべきことに、遺体は殺人を計画した隠しカメラのない路上ではなく、山中に埋められていたことが発覚する。一体、なぜ!? この衝撃的な展開で、視聴者は一瞬にして物語に引き込まれる。複雑なパズルのようなストーリー構成は、エピソードが進むごとに激しさを増して行き、登場人物たちの関係性が絡み合うほどに緊張感が高まっていく。
前述したパク・ヘスを始め、メインで活躍する俳優たち、イ・ヒジュン、シン・ミナ、イ・グァンス、キム・ソンギュン、コン・スンヨンが個性的で堂々たる演技を見せているのはもちろんのこと、特別出演のキム・ナムギル演じるシン・ミナの同僚の医者も見逃せない存在だ。彼は物語の最後のパズルのピースとして登場し、短い出番ながらも強烈な印象を残す。彼の登場によって、物語はさらなる深みと意外性を帯びるのだ。
『悪縁』が描くのは、欲望のために犯す悪行がより大きなものとなって自分自身に返ってくるという現実である。それぞれの登場人物が下す選択は、必ず他の誰かに直接的、間接的に影響を及ぼし、その結果が新たな悲劇を生むことになる。この連鎖は避けられない事実として提示されるが、教訓めいた押し付けがましさは全くない。あくまでエンターテインメントとして昇華されており、「人生は計画通りにはいかない」という見本市のような様相を呈している。登場人物たちは自分の欲望や復讐心に突き動かされ、計算したはずの計画は次々と崩れていく。
私たちは彼らの愚かさと狡猾さに呆れつつも、その結末を見届けるために画面に釘付けになってしまう。
最終話のラストまで見終えたとき、登場人物たちの選択とその結末に、恐怖と笑いの入り混じった複雑な感情を抱くことだろう。
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