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【解説】『黒い司法 0%からの奇跡』あらすじ・感想 / マイケル・B・ジョーダンが冤罪に立ち向かう弁護士を演じる

冤罪の死刑囚たちのために奮闘する弁護士ブライアン・スティーブンソンの実話を映画化した『黒い司法 0%からの奇跡』

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人種差別が根深い1980年代のアラバマ州を舞台に、身に覚えのない罪で死刑を宣告された黒人男性の容疑を晴らそうとする黒人弁護士の奮闘を描く人間ドラマだ。

 

多数の映画賞を受賞した『ショート・ターム』のデスティン・ダニエル・クレットンが監督を務め、冤罪に立ち向かう新人弁護士を『クリード チャンプを継ぐ男』などのマイケル・B・ジョーダンが演じている。

 

 

目次

 

『黒い司法 0%からの奇跡』の作品情報

2020年制作 137分 アメリカ映画 原題:Just Mercy 監督:デスティン・ダニエル・クレットン 原作:ブライアン・スティーブンソン 脚本:デスティン・ダニエル・クレットン 撮影:ブレット・ポウラク 美術:シャーロン・シーモア 

出演:マイケル・B・ジョーダンジェイミー・フォックスブリー・ラーソン、ティム・ブレイク・ネルソン、オシェア・ジャクソン・Jr、ローダ・グリフィス、ロブ・モーガン、エリザベス・ベッカ、ロン・クリントン・スミス

 

『黒い司法 0%からの奇跡』のあらすじ

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

18歳の白人女性を殺した疑いで黒人のウォルターという男が逮捕される。全く見に覚えがなくそのうち無実がはらされるだろうと楽観していたウォルターだったが、ろくな弁護も受けられないまま、死刑判決を下される。

何度も希望を踏みにじられ誰も信じられなくなったウォルターは、すべてを諦め、固く心を閉ざしていた。

 

そんな彼の元にブライアン・スティーブンソンという弁護士が現れる。彼は貧しいがゆえにきちんとした弁護を得られない人々のためになろうとこの地にやって来たハーバード大卒の若い黒人弁護士だった。

 

面会をする際、ブライアンは囚人と同じように裸にされボディチェックを受けるという屈辱を味わう。アメリカ南部の人種差別の根の深さをまざまざと痛感するブライアン。

 

ブライアンはウォルターに不服を申し立てることが出来ると説明するが、心を閉ざしているウォルターは聞く耳を持たない。

 

ブライアンは事件の資料全てに目を通し、ウォルターの無実を確信。無罪であることを証明するための証拠を集め始めるが、様々な妨害が彼を待ち受けていた。

 

彼は唯一の目撃証言をした男に会いに行くのだが・・・。  

『黒い司法 0%からの奇跡』の感想

(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

アラバマ州モンロビールを舞台にマイケル・B・ジョーダン扮する駆け出しの弁護士ブライアンが白人女性殺害の罪で死刑宣告された黒人男性ウォルター(ジェイミー・フォックス)の冤罪を晴らすために再審請求に挑む物語だ。

 

時代設定は1980年代後半から1990年代初頭。ブライアンは実在する弁護士で、実際にあった事件を元にして構成されている。

監督は『ショート・ターム』(2013)、『シャン・チー テン・リングスの伝説』(2021)などの作品で知られるデスティン・ダニエル・クレットン。

『ショート・ターム』、『ガラスの城の約束』(2017)でもクレットンとタッグを組んだブリー・ラーソンがブライアンの助手役を演じている。

 

「困っている人を助けたい」という正義感から、アラバマ州にやって来たブライアン。もっとエリートの道を歩めるにもかかわらず、わざわざ黒人への差別が根強い地域に赴任することに母親は反対したが、その反対を押し切って彼はやって来たのだ。

 

着いて早々、ブライアンは、杜撰な捜査や司法を目のあたりにする。中でも前任者の弁護士のいい加減な仕事ぶりには驚くしかなかった。

ブライアンが担当する囚人ウォルターの両隣に収監されている囚人たちも、弁護士が親身に仕事をしたようには見えない。

伝えなくてはならない証拠を伝えず、挙げ句に弁護費用が払えないとわかるととんずらしているのだ。

彼らも弁護士を志したときには少なからず正義感もあったはず。しかし、黒人なら犯人に仕立て上げてもまったく問題がないと考えている権力に跳ね返されているうちに初心を忘れ、金儲けだけが目当てに成り下がってしまったらしい。

 

そんな弁護士たちとブライアンの違いはなんだろう? それはブライアンが「良心」を信じていたことにあるだろう。彼はニセの証言をした囚人や、地方検事を「良心」の一点で説得する。人を信じることが人を動かすのだ。マイケル・B・ジョーダンは、様々な感情を瞳に宿らせながら「困難の中にいる人を助けたい」という信念を持つ主人公を静かなトーンで、熱く演じている。

 

 

 

そして、デスティン・ダニエル・クレットンもまた人間を信じている。というのも接見にやってきたブライアンを犯罪者のように取り扱った若い白人警官が、次第に心を取り戻すように変化していく様子を描いているからだ。もっともそれは、信じるというよりも寧ろ願望に近いものなのかもしれないけれど。

 

『黒い司法 0%からの奇跡』をよりよく理解するために 関連作品:『13th 憲法修正第13条』(2016)

『黒い司法 0%からの奇跡』をより理解するために、『13th 憲法修正第13条』というドキュメンタリー作品を紹介したい。

(C)Netflix

『グローリー 明日への行進』などの作品で知られる女性監督エバ・デュバーネイが、アメリカの歪んだ刑務所制度に目を向け、根底に人種差別問題があることに切り込んだNetflix制作作品だ。

「統計上、アメリカの人口は世界の人口の5%だが、受刑者数は世界の25%を占める」という台詞から映画は始まる。1972年には30万人の受刑者だったのが現在は230万人もいるという。なぜこのようなことになっているのか。

 

タイトルとなっているアメリカ合衆国憲法修正第13条とは奴隷制の廃止と2度と復活せぬよう永久的な奴隷制の廃止を保証するアメリカ合衆国憲法の修正条項のひとつだ。しかしその中の「ただし犯罪者(criminal)はその限りにあらず」という例外規定が悪用されていると映画は主張する。つまり黒人を囚人として確保し、労働力として搾取するという、奴隷制となんらかわらないことが公然と行われているというのだ。

 

D・W・グリフィスの映画『國民の創生』などにより、黒人男性が危険な存在であるという概念が白人社会に植え付けられ、黒人を簡単に逮捕する理由とされてきたこと、公民権運動を「犯罪」と結びつけ、撲滅していったこと、「麻薬戦争」という名にすり替えて、黒人の検挙を行ったこと、その際、最も安価なクラックを所持していたものが最も重い罪を受けるという理不尽な実態だったことなどが、豊富な映像や資料や専門家たちのインタビューによって明らかにされていく。そんな中で警官の力は異様に大きくなっていった。

さらに驚かされるのは1980年代に刑務所が民営化され、囚人が多ければ多いほど、運営会社が儲かること、こうして集められた囚人たちは搾取され、彼らの労働で大きな利益を上げている企業が少なくないことなどが言及される。一部の力のある人間たちが、利権のために黒人たちを食い物にしているのだ。

 

法の手続きも曖昧に、弱く貧しい人を狙い撃ちにして逮捕する例は、まさに『黒い司法 0%からの奇跡』で描かれた世界そのものだ。ウォルターたちがあのような環境に置かれていたのにはこのような背景があるのである。

『13th 憲法修正第13条』2016年製作/100分/アメリカ/原題:13th 監督:エバ・デュバーネイ(Netflixで配信中)

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