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【大映4K映画祭】映画『赤い天使』あらすじ・感想/増村保造&若尾文子コンビの映画史に残る壮絶な反戦映画

大映4K映画祭」が全国の映画館で順次開催されている。

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その中から今回は1966年の作品『赤い天使』を取り上げたい。

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日中戦争を題材にした有馬頼義の原作を笠原良三が脚色、増村保造が監督した壮絶な反戦映画だ。

増村監督にとっては『兵隊やくざ』(1965)に次ぐ有馬頼義原作映画である。

 

 従軍看護師として最前線に赴いたヒロインを若尾文子が演じ、戦争の残虐さ、非人間性を見つめると共に、激しい愛の形が描かれる。  

 

目次

映画『赤い天使』作品情報

(C)KADOKAWA1966

1966年/大映東京/95分/35mm/白黒

監督:増村保造 原作:有馬褚義 脚本:笠原良三 撮影:小林節雄 美術:下河原友雄 音楽:池野成

出演:若尾文子芦田伸介川津祐介、千波丈太郎、赤木欄子、小山内淳、井上大吾、仲村隆、谷謙一、飛田喜佐夫、河島尚真、池上綾子

映画『赤い天使』あらすじ・感想

(C)KADOKAWA1966

(ラストに触れています。ご注意ください)

数えきれないほどの負傷兵が運び込まれ、十分な麻酔も薬もない中、命を守るために肢体を切り落とす。戦争の無残さが生々しく描かれている。

医師はその是非を自問しながらも次から次へと運び込まれてくる負傷兵に対応しなくてはならず、精神を保つためにモルヒネ中毒になっている。

負傷した兵士は戦場に戻るまいと再び足を化膿させたり、仮病を使って欺こうとする。

冒頭、天津の野戦病院に赴任してきた若尾扮する従軍看護婦の西さくらが、長い病院暮らしに退屈した兵士から乱暴される展開に衝撃を受けた。

西はそのことを上司に告げ、兵士は戦場へ戻される。その兵士が負傷して戻って来る。

西は彼を助けようとし、芦田伸介扮する医師に麻酔を使って手術するように頼む。自分のせいで人を死なせたくないと彼女は思う。しかし手術を受けながらも男は死んでしまう。「私のせいで一人殺してしまった」と西のナレーションがはいる。  

 

戦場の中では個人の気持ちなど考える必要はない、負傷兵を人間として考えるな、と医師も上司も口を揃えて言う。情を挟んでいては、処理できないと。感情をおさえて機械的に対応せよと。

確かにこのような究極の状況の中では人間性などないに等しい。しかし、西はあくまでも個人を見据え、人間として生きようとする。医師への愛情を激しくぶつけもする。

最終的には3人の人間を自分は殺してしまったと西はつぶやく。「また殺してしまった」、「これで3人目…」と彼女は自ら十字架を背負い続ける。

死んでしまった医師にすがりつく西。戦場の中、コレラとも闘い、砂漠の中にたった一人取り残されてしまった西。

それはある意味、戦場で人と違った生き方をした彼女がたどる必然の道だったのかもしれない。

「西さくら」―。若尾が演じた多くの役の中で、これほど印象に残り、忘れられない役名はないだろう。増村保造による生々しい反戦映画である。

 

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