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映画『初春狸御殿』あらすじと感想(木村恵吾)若尾文子、市川雷蔵、勝新太郎等、若手オールスターが勢揃いした愉快な和製オペレッタ

京都文化博物館フィルムシアターで開催されている特集上映「映画の中の少女たち」。その中から、2023年9月27日(水)、30日(土)に上映される1959年大映作品『初春狸御殿』を取り上げたい(上映時間は京文博公式HPでご確認ください)。

 

『初春狸御殿』は、和製オペレッタ「狸御殿」産みの親、木村恵吾が脚本・監督を務めた「狸御殿」シリーズ第七弾にして初のカラー作品。若尾文子市川雷蔵勝新太郎等、若手オールスターが勢揃いした人気和製ミュージカルだ。

 

御殿に迷い込んだ娘狸と隣国の若君狸のラブロマンスが、当時の特撮技術を駆使してファンタジックに展開する。若尾は父親思いの村娘と自由気ままな姫の二役を好演している。

 

 

『初春狸御殿』作品情報

©KADOKAWA 1959

1959年製作/カラー/84分/日本映画(大映京都)

 監督・脚本:木村恵吾 企画:山崎昭郎 製作:三浦信夫 撮影:今井ひろし 美術:上里義三、西岡善信 音楽:吉田正 録音;大谷巖 照明:岡本健一 編集:菅沼完二

出演:若尾文子市川雷蔵勝新太郎中村玉緒金田一敦子、仁木多鶴子、真城千都世、近藤美恵子、水谷八重子中村鴈治郎(2代目)、藤本二三代、神楽坂浮子松尾和子、小浜奈々子、楠トシエ、岸正子、美川純子、大和七海路、小松瑠美子、毛利郁子、菅井一郎、トニー谷江戸家猫八三遊亭小金馬、左ト全、嵐三右衛門  

『初春狸御殿』あらすじ

お黒は父の泥右衛門と共に、狸の国、カチカチ山に住んでいた。父の泥右衛門が火傷を負ったため、お黒は人間の栗助から薬を買っていた。黒は栗助に好意を持ち、栗助もお黒が好きだった。

ある日、猟師に追われて森へ逃げ出したお黒と泥右衛門は、咄嗟に番傘に化けた。そこに狸御殿の腰元たちが通り、雨が降って来たので番傘をさして帰った。お黒と泥右衛門は思いがけず御殿に紛れ込むことに。

狸御殿では、隣国の若君狸吉郎がきぬた姫との見合いにやって来るというので大騒ぎとなっていた。しかし人間と結婚したいきぬた姫は、見合いはしたくないと家出してしまう。老女の狸路はたまたま居合わせたお黒がきぬた姫と瓜二つなのを見て取り、お黒を姫の身代りに見合いの席に連れ出した。狸吉郎はお黒にすっかり心奪われてしまう。

お黒と狸吉郎の中は徐々に深まり、ついに狸吉郎はお黒に結婚の約束をする。

一方、きぬた姫は人間に相手にされず、失意の中、国に帰って来た。泥右衛門はいま姫に帰られてはせっかくの玉の輿がおじゃんになってしまうと、姫の帰路を襲おうと画策する。これを知ったお黒は、姫の姿に変わり・・・。  

 

『初春狸御殿』の感想

満月の夜、すすきでいっぱいの山道を歩く若尾文子。ほったて小屋をノックする。中の男の様子にカメラは切り替わり、男が扉をあける。うら若き娘が父親のお使いで酒を買いに来たらしい、感心、感心と男はとっくりにたっぷりと酒を入れて娘に渡してやる。娘は金を払って、足早に去っていく。それを見送って視線を手元にやるともらったはずの金が木の葉になっているという定番中の定番、狸がらみのお約束の展開である。

 

若尾の父親・泥右衛門(菅井一郎)は元悪党という設定で、なかなか図太いキャラクターだ。ミュージカル、オペレッタというよりは、歌謡ショーに近い演目が続くが、上里義三、西岡善信による美術はしっかりしているし、市川雷蔵や若尾の踊りなどは手先まで美しい。

勝新太郎が出てくると、河童らしき半裸の女が二人出てきて、裸のまま踊る。乳首のところだけを隠しているのだが、もうこれは隠しているとはいえないレベル。

若尾は狸娘と狸姫の二役だが、さらに分身の術まで使い、若尾がどんどん増殖していく様がとにかく楽しい!

 

尚、「狸御殿」シリーズは戦前、戦後を通して全部で15作品を数え、木村恵吾は戦前に2本、戦後に3本の狸御殿ものを撮っている。1942年に撮った『歌ふ狸御殿』は、日本物オペレッタ映画の最高傑作の一つとして名高い。シリーズ最新作品は2005年制作の鈴木清順監督による『オペレッタ狸御殿』。

(文責:西川ちょり)

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