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映画『ロング・ライダーズ』あらすじと解説/西部劇の衰退期に輝くウォルター・ヒルの様式美と兄弟競演の魅力

1970年代後半から1980年代にかけての西部劇(Western genre)は、ハリウッド映画史において「衰退期」または「低迷期」と位置づけられることが多い。ウォルター・ヒル監督の『ロング・ライダーズ』はそんな中で、貴重な存在感を発揮した作品として位置づけられている。興行的には中程度のヒットに終わったが、40年以上たった今でも高く評価されている作品だ。

 

ヒル監督は、物語の「説明」を削ぎ落とし、純粋な「様式美」と「アクション」に特化する戦略をとった。今回は、NHK BSでの放映に合わせて、本作がなぜ「美しき挽歌」として愛され続けるのか、その魅力を探る。

 

映画『ロング・ライダーズ』は、2026年4月17日(金)NHK BSプレミアムシネマにて放映(午後1:00~午後2:41)。

 

目次

 

映画『ロング・ライダーズ』作品基本情報

原題 The Long Riders
製作年 1980年
製作国 アメリカ
監督 ウォルター・ヒル
音楽 ライ・クーダー
撮影 リック・ウェイト
上映時間 100分
配信情報 Amazon プライムビデオ 他

キャスト(実生活でも兄弟の俳優たち)

  • ジェームズ兄弟: ジェームズ・キーチ & ステイシー・キーチ
  • ヤンガー兄弟: デヴィッド & キース & ロバート・キャラダイン
  • ミラー兄弟: ランディ & デニス・クエイド
  • フォード兄弟: クリストファー & ニコラス・ゲスト

 

映画『ロング・ライダーズ』あらすじ

(C)1980 Metro-Golden-Mayer Studios Inc.ALL Rights Reserved.

南北戦争終結後のミズーリ州。

元南軍兵士のジェシー・ジェームズ率いる一団は、銀行や列車を襲う無法者(アウトロー)として恐れられながらも、地元住民からは英雄視されていた。

 

彼らを執拗に追うピンカートン探偵社の罠により、家族が犠牲になったことで復讐の火蓋が切って落とされる。

 

物語は、絆で結ばれた兄弟たちが、時代の波に飲まれながら破滅へと向かう「ノースフィールド銀行強盗事件」の悲劇的な結末へと突き進んでいく。

 

映画『ロング・ライダーズ』感想と評価

公式予告編はこちら

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西部劇の斜陽期におけるウォルター・ヒルの戦略

1970年代後半から80年代初頭にかけての西部劇は、ハリウッド映画史において「衰退期」または「低迷期」と位置づけられることが多い。サム・ペキンパーが『ワイルドバンチ』で見せた破壊的な暴力や、アーサー・ペンが『小さな巨人』で描いた反骨的な歴史観を経て、西部劇はもはや単なる勧善懲悪の物語として描くことができなくなっていた。

ウォルター・ヒル監督の『ロング・ライダーズ』は、そんな中で、貴重な存在感を発揮した作品として位置づけられている。成功の要因には、ヒルが、物語の「説明」を極限まで削ぎ落とし、純粋な「様式美」と「アクションの躍動感」に特化するという戦略をとったことが挙げられるだろう。

 

『ロング・ライダーズ』の主人公は、無法者として歴史上よく知られているジェシー・ジェームズとその仲間たちだ。これまでジェシー・ジェームズを主人公にした西部劇は何本も作られている。そのため、ヒルはあえて彼らの紹介を飛ばし、いきなり銀行強盗を企てているシーンから映画を始めている。ヒルの関心は「彼らが何をしたか」ではなく「彼らがどのように生きていたか、そしてどのように動いていたか」という、身体的かつ詩的な描写に向けられていた。

 

実の兄弟が醸し出す「血の繋がり」のリアル

『ロング・ライダーズ』は劇中の兄弟役を実生活でも兄弟である俳優たちに演じさせている。

ジェームズ&ステイシー・キーチがジェームズ兄弟を、デヴィッド&キース&ロバート・キャラダインがヤンガー兄弟、ランディ&デニス・クエイドがミラー兄弟といった具合だ。

本物の兄弟をキャスティングすることで、兄弟それぞれが実生活で共有して来た独自の身振りや間合いが自然に表現され、アウトローの人間らしさがリアルに伝わるという効果をもたらしている。

この「血の繋がり」は、彼らの犯罪行為を正当化するためではなく、彼らがなぜアウトローな生き方を続け、なぜ最終的に破滅へと向かったのかということへの動機付けとなっている。ピンカートン探偵社がジェシーの家を攻撃し、誤って彼の幼い弟を死なせてしまった悲劇的なエピソードは、復讐劇の引き金になるだけでなく、彼らにとって「家族」がいかに侵すべからざる聖域であったかを表している。

本作は冷酷な犯罪映画でありながら、感情的に強く結ばれた家族劇でもあるのだ。

 

リック・ウェイトによる叙情的映像美

本作の「詩的」な側面の多くは、撮影監督リック・ウェイトの卓越した手腕によるところが大きい。ウェイトは、それまでの西部劇に見られた乾いた砂埃の色調ではなく、ミズーリの豊かな緑を基調に、温かみのある室内、そして雨上がりの湿った空気感などを、輝くような質感で捉えている。

 

また、本作では7人のアウトローたちが草原を駆け抜けていくオープニングを皮切りにスローモーションが頻繁に用いられている。

とりわけ終盤のミネソタ州ノースフィールドの銀行強盗事件での逃走シーンが秀逸だ。ジェシーたちは、メインストリートの両端をバリケードで封鎖した、明らかに彼らを待ち伏せしていた市民たちから激しい銃撃を受ける。ジェシーたちは馬に乗ったままショーウインドウを突き破り、ガラスの破片を浴びながら逃走する。この荒々しい脱出シーンや、被弾して落馬する際の動きは、過激なアクションでありながら重力から解放されたかのような優雅さに満ち、まるで鮮やかな「舞」のように感じられる。

 

また、被弾する瞬間の表情や、倒れゆく仲間に向ける視線をスローモーションで捉えることで、激しいアクションの渦中に、個人の内面的な苦痛や仲間との連帯感を浮かび上がらせている。

ウェイトの撮影は、暴力が持つ破壊的な側面を認めつつも、その過程に宿るある種の純粋さを、画家のように繊細に描き出している。

 

ライ・クーダーのサウンドトラック:歴史への忠実さとアバンギャルドな越境

『ロング・ライダーズ』の魅力を語る上で、ライ・クーダーによる音楽に触れないわけにはいかない。ライ・クーダーにとって初の映画音楽となった本作は、従来のハリウッド的なオーケストレーションを完全に排し、徹底して「当時の楽器」と「伝統的な旋律」に基づいた音響空間を作り上げた。楽器編成と音響の独自性は、1870年代のミズーリで実際に響いていたであろう楽器を基盤に、他では聞くことのできない独創的なアレンジを施している。

 

なかでも冒頭のメインテーマなどで使用されるダルシマーという打弦楽器は、その素朴で澄んだ音色が、アウトローたちの生活を叙情的に彩り、また、ハモニウムという足踏みオルガンは葬儀や結婚式、バンジョーやフィドルは酒場というように、音楽が持つ素朴な美しさをそれぞれの場面に見事に溶け込ませている。

 

ファッションの美学:ダスターコートが象徴する「翼」と「制服」

衣装デザイナーのボビー・マニックスによるコスチュームデザインも、本作の視覚的な叙情性を支える重要な要素だ。特に、ジェームズたち一団が身に纏うロング丈の「ダスターコート(埃除けコート)」は、当時の風俗再現以上の意味を持っている。

馬を疾走させる際、コートの裾が風を受けて大きく翻る様子は、男たちのシルエットを伝説的な英雄のように見せ、実にスタイリッシュだ。

また、強奪シーンにおいて全員が同じダスターコートを着用しているのは、労働者階級であり、南部連合の生き残りであり、そして強力な強盗団というチームのユニフォームともいえる。

ピンカートン探偵社が着る「都会的なスーツ」との明確な対比ともなっているが、そのような理屈以上に見た目が断然かっこよく、否応なく目を奪われてしまう。

 

また、娼館の女性たちが典型的なコルセット姿ではなく、ゆったりとしたブルマや肌着のような衣装で描かれている点も、それまでの西部劇のお約束を逸脱している。パメラ・リード演じるベル・スターの凛とした佇まいは、アウトローの世界における女性の孤独と強さを象徴している。

 

デヴィッド・キャラダインとジェームズ・リマーの対決

本作で忘れてはならない名シーンとして、デヴィッド・キャラダイン演じるコール・ヤンガーと、ベル・スターの夫サム・スター(ジェームズ・リマー)とのナイフによる格闘が挙げられる。

この格闘は、互いに布の端を口に咥え、離れることができない極至近距離で行われる。ここには、銃による遠距離の暴力とは異なる、より肉体的で原初的な闘争の美学がある。

デヴィッド・キャラダインのどこか余裕のある落ち着きと、ジェームズ・リマーの乱暴なエネルギーが激突するこのシーンは、西部劇における「男らしさ」の極北を、様式化された儀式のように描き出している。

 

このシーンに代表されるように、本作は銃撃戦だけでなく、汗と肉体がぶつかり合う人間の生身の感触にこだわっている。それがアクションシーンに単なる刺激以上の「重み」と「説得力」を与えている理由だ。

 

結論:西部劇という神話への美しき挽歌

本作は公開当時、「西部劇はまだ死んでいない」と絶賛された一方、一部の批評家たちは、本作が「プロットよりもスタイルを優先している」とし、登場人物の背景説明が不足していると批判した。しかし、現代的な視点で見れば、これらの「欠点」はむしろ本作の長所なのだ。

 

光、音、そして血の絆が奇跡的なバランスで融合した本作は、今なお色褪せない輝きを放ち続けている。

 

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