1873年の西部、アメリカ独立記念日である7月4日。ある町で射撃コンテストが開催されようとしていた。優勝した者には名銃・ウィンチェスター銃が賞品として手渡されるということで腕に自信のある男たちが各地から集まって来る。
ジェームズ・スチュワート扮するマカダムもコンテストに参加するが、彼には別の目的があった・・・。
1940年代に『T-Men』(1947)や『サイド・ストリート』(1949)などのフィルム・ノワール作品で頭角を現したアンソニー・マンが監督し、ジェームズ・スチュワートが初めて西部劇に出演した作品。
プロデューサーのアーロン・ローゼンバーグと、アンソニー・マン、ジェームズ・スチュアートの3人が組んだ最初の50年代西部劇であり、その後も『怒りの河』(1951)、『裸の拍車』(1953)などの作品が作られた。
物語の中盤に出てくるウェイコ役のダン・デュリエは多くのフィルム・ノワール作品や西部劇でお尋ね者や強盗団などを演じた悪役俳優として有名。
ローラ役のシェリー・ウィンタースは、『いつか見た青い空』(1965)でアカデミー助演女優賞を、『ポセイドン・アドベンチャー』(1972)でゴールデングローブ助演女優賞を受賞している名優。
撮影はグレタ・ガルボのお抱えカメラマンでジュールス・ダッシン監督の『真昼の暴動』(1947)などで知られるウィリアム・H・ダニエルズ。
目次
映画『ウィンチェスター銃'73』作品情報
1950年製作/アメリカ映画/93分/原題:Winchester '73/監督:アンソニー・マン 製作:アーロン・ローゼンバーグ 脚本: ロバート・L・リチャーズ 、ボーデン・チェイス 撮影:ウィリアム・H・ダニエルズ 美術:ベルナルド・ヘルッブルン、ネイザン・ジュラン 音楽監督:ジョセフ・ガーシェンソン 録音:レスリー・I・カレー、リチャード・デウィーズ 編集:エドワード・カーティス
出演: ジェームズ・スチュワート、スティーブン・マクナリー、ダン・デュリエ、シェリー・ウィンタース、ミラード・ミッチェ、チャールズ・ドレイク、ジョン・マッキンタイア、ウィル・ギア、ジェイ・C・フリッペン、ロック・ハドソン、ジョン・アレクサンダー、スティーブ・ブロディ、ジェームズ・ミリカン、アブナー・バイバーマン、ジェームズ・ベスト
映画『ウィンチェスター銃'73』あらすじと感想
(ネタバレしています。ご注意ください)
冒頭は山の上を馬に乗ってやってくる二名の男のシルエットをかなり遠方から撮っている。カメラ、その移動に合わせて左へパンしていく。“これは「西部を支配した」と言われた名銃「ウィンチェスターM1873」の物語だ”という字幕が出る。
ウィンチェスター銃の一部のアップ。カメラだんだん手前にひいて、ウインドウケースにはいっているそれと、それを覗き込む子どもたちを映す。カメラはそのまま右へ移動し、馬に乗っている二人組みの男を捉えると、少しばかりともに歩み、二人が馬を下りて、町の少年の商談に乗り、騒がしい女の声がした方向へ目をやるところまでをワンカットで撮っている。この女はこのあと、彼等と度々出逢い、運命を供にすることになる。
1873年7月4日。ダッジ・シティー。
“独立100年祭 射撃大会優勝賞品”に「千に一つの銃」と呼ばれる名器、73年製ウィンチェスター銃を求めて多くのガンマンが町を訪れていた。冒頭の男たち、マカダム(ジェームズ・スチュワート)と相棒のスペード(ミラード・ミッチェル)もこの大会にエントリーするが、彼等の目当ては別にあった。
いよいよ競技が始まる。優勝はマカダムとダッチ・H・ブラウン(スティーヴン・マクナリー)という男の2人に絞られる。さらに標的を後ろに下げ2人の決戦となるがどちらも見事に3発を命中させる。決着はコイン撃ちに持ち込まれ、その結果マカダムが勝つ。見事銃を手にするが、部屋に戻ったところ待ち伏せしていたダッチに襲われ銃を奪われてしまう。
そのダッチもカードゲームに敗れたせいでウィンチェスター銃を武器商人に手渡すことになり、武器商人はその後すぐに銃を先住民に譲る。
冒頭に出てきた女・ローラ(シェリー・ウィンタース)とそのフィアンセのスティーブ(チャールズ・ドレイク)を先住民の一団が追跡してくるシーンあたりから物語は躍動感を増していく。一旦、馬車を離れて助けを捜しに行った男は、ふもとに騎兵隊がキャンプをはっているのを見つける。引き返した彼は馬車に戻る時間がない。男は馬を、女は馬車をそれぞれ必死で走らせ先住民の襲撃から逃げる。まさにひっくり返りそうになりながら。
かろうじて騎兵隊のもとにたどりついた二人だったが、その騎兵隊もまた別の先住民に囲まれていたのだった。そこへ、マカダムとスペードが合流することになる。先住民の習慣に詳しいマカダムは、彼らは夜は襲ってこないから少しでも眠るようにとアドバイスする。朝目覚めて彼等は熱々の珈琲を飲む。
先住民の集団の襲撃シーンは迫力満点だ。敵は幾手にも分かれて攻撃してくる。マカダムがウィンチェスター銃をもった頭領を射殺したため集団は退散する。そこに落ちている銃のクローズアップから、大地に転がっている死体をカメラは映す。部下の一人がその銃を発見し欲しがるが、隊長はそれをマカダムに渡そうとする。しかし彼はもう声が聞こえないところまで離れていて、結局、銃はスティーブの手に渡ることになる。しかし、スティーブも訪れた家に侵入してきた無法者ウェイコ(ダン・デュリエ)に殺されてしまう。彼を殺す前にウェイコはスティーブに無理やりコーヒーを淹れさせている。屈辱の中、コーヒーを淹れてきたスティーブはウェイコに足をひっかけられてコーヒーはひっくり返ってしまう。
ウェイコは当局から追われており、家を包囲される。この卑劣漢は仲間を先に正面の窓から出させておいて当局の目をそらし、自分はウィンチェスター銃を手に取りローラを抱えて違う窓からまんまと逃げおおす。しかしこの男も別の仲間と合流して銃を奪われる。それが冒頭、射撃大会でマカダムと争った男ダッチだった。彼は銀行強盗をたくらんでいた。
ダッチから見張り役を言い渡されたウェイコはローラに酒場でピアノを弾かせる。そこへマカダムがやってきてローラに気がつき声をかけ、スティーブが殺されたことを知る。マカダムはダッチを探してここまでやって来たのだ。
ウェイコたちと争ったあと、マカダムはダッチを追うことになる。銃撃戦の最中、子供を助けるために負傷したローラにスペードが付き添っているとローラはなぜマカダムを行かせたのかと責める。ここで初めてマカダムの父親を殺したのがダッチで、マカダムが復讐のために追っていたことが明かされる(そして彼は実の兄なのだった!)。
最後は二人が岩山の上下に別れての撃ち合いとなる。「父親の言いつけを忘れたな。勝負に勝つには常に上の位置を陣取れ」といった台詞は、彼等が兄弟で共に父の教育を受けた証として印象的だ。
最後に町に残ったスペードが女に彼等の事情を話して聞かせていると、マカダムが、戻ってくる。手にはウィンチェスター銃が握られ、物語のはじめに登場したときのように、グリップのあたりをクローズアップして映画は終わる。この銃を持つ人間には災いが訪れるという話であるがゆえにそれは心からのハッピーエンドには見えない。兄弟同士の殺し合いでもあるのだからすっきりせずして当然か。本作は、そのダークで悲劇的な内容から「ノワール西部劇」とも評されている