Netflix韓国映画『カマキリ』は2023年にNetflixで配信され好評を博したチョン・ドヨン主演の映画『キル・ボクスン』のスピンオフ作品だ。
『キル・ボクスン』のユニークな設定を引き継いだ『カマキリ』は、果たしてどのような作品世界を見せてくれるのだろうか!?
『キル・ボクスン』は、業界ナンバー1の暗殺請負会社「MK」の中でも断トツの腕を誇る殺し屋キル・ボクスンが子育てに悩む中で引退を決意するも会社内のいざござに巻き込まれ組織から命を狙われる羽目になるというアクション映画だ。
カマキリは『キル・ボクスン』の中で現在休暇中の凄腕殺し屋として名前だけが登場していた人物。映画『カマキリ』はこの人物が主役となり展開する。
休暇から帰って来た「カマキリ」は、キル・ボクスンによって「MK」が壊滅状態にされたことを知り、幼馴染のジェイと共に新しい暗殺請負会社を設立するのだが・・・。
ドラマ『ミセン-未生-』(2014)や「イカゲーム」シリーズ(2024~25)、映画『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』(2017)のイム・シワンが「カマキリ」ことイ・ハヌル役を演じ、ドラマ『Sweet Home 俺と世界の絶望』(2020)や「イカゲーム」シリーズのパク・ギュヨンがジェイを演じている。
カマキリとジェイの複雑な関係が物語の核となり、暗殺業界の再編成が進む中、二人は壮絶な争いに巻き込まれていく・・・。
ハヌルのMK時代の師匠であるトッコ爺に、名優・チョ・ウジンが扮している他、「弱いヒーロー」シリーズ(2022、2025)のアン・スホ役で強い印象を残したチェ・ヒョンウクが暗殺請負会社を買収しようとする野心家の格闘ゲームソフト開発企業のCEOに扮している。
映画『カマキリ』は2025年9月26日よりNetflixにて配信中。
目次:
Netflix韓国映画『かまきり」作品基本情報
邦題: カマキリ
原題:사마귀(英題:Mantis)
ジャンル:アクション/スリラー
監督: イ・テソン
脚本: ピョン・ソンヒョン、イ・テソン、イ・ジンソン
編集:キム・サンボム
製作国:韓国
製作年:2025年
上映時間: 113分
配信プラットフォーム:Netflix (2025年9月26日より配信)
キャスト:イム・シワン、パク・ギュヨン、チョ・ウジン、チェ・ヒョヌク、ユ・スビン
Netflix韓国映画『カマキリ』あらすじ

イ・ハヌルは、両手に鋭い鎌を持ったスタイルから「カマキリ」のコードネームを持つ殺し屋だ。彼は業界一位の「MK」に所属するA級暗殺者だったが、彼がしばらく休暇を取って韓国を離れている間に、MKで一番の凄腕のキル・ボクスンによって代表のチャ・ミンギュと理事である彼の妹が殺され、MK社は大混乱に陥っていた。
ライバル会社はこの機会になんとか自分たちの勢力を拡大したいと暗躍し、力のあるハヌルはあちこちから勧誘を受ける羽目に。
ハヌルはそんな誘いに目もくれず、幼馴染でライバルでもあるジェイを訪ねた。ジェイが所属する暗殺請負会社は弱小で、今にもつぶれそうだった。
ハヌルはかつての師であり、引退した暗殺者トッコと相談し、ジェイと共に新しいカンパニーを設立することにした。
ジェイは実力があったが、MKに所属することが出来ず、彼女の代わりにハヌルが昇進したことから、彼に強いライバル心を持っていた。ハヌルと対等に渡り合いたいと思っているのだが、ハヌルはいつも命令口調で、ジェイのイライラは募るばかり。新しい会社も知名度のあるハヌルの「カマキリ」の名を使用することになった。
一方のハヌルは不遇なジェイを助けたい一心なのだが、その気持ちはなかなか通じない。彼は凄腕の殺し屋だったが、ビジネスの才能は乏しく、次々と困難に直面することに。そんな中、格闘ゲームソフト開発企業のCEOがジェイに興味を持ち、彼女を自分の傘下に置こうと企んでいた。一方、ドッコはMKを立て直すために仕事に復帰しようとしていた。
業界の力関係が急速に変化し、MKの一極体制が崩壊していく中、ハヌルはジェイを危険から救おうと奔走するが、彼がジェイに近づこうとすればするほど、ジェイは反発し、二人の溝は深まって行く。やがてジェイが思わぬ行動を取ったことで、ハヌルは究極の選択を強いられることに・・・。
Netflix韓国映画『カマキリ』予告編
Netflix韓国映画『カマキリ』感想と評価
殺し屋業界はアイドル業界と酷似?

物語は、カマキリことイ・ハヌルが、請け負った殺人を執行するところから始まるが、彼の傍にはソル・ギョング扮するMKの代表チャ・ミンギュがいる。おお!このスピンオフは後日談かと思っていたら前日談だったのかと一瞬、驚いたのだが、それは早とちりで、この仕事を最後にハヌルは休暇をとり、帰ってきたらチャ・ミンギュがキル・ボクスンに殺害されてMKが大きく傾いていたというふうに物語は進んでいく。
ただ、この休暇を取る前のやり取りで、この殺し屋たちの業界に関するおさらいができるようになっている。MKが業界ナンバーワンと言われているが、ほとんどMKの一極支配であること、中小の組織はMKの圧力でほとんど仕事がなく、組織に入っていないフリーの殺し屋が無断で暗殺を実行するとそれだけで制裁の対象となることなどだ。
興味深いのはハヌルがここで7年契約の中途解約を代表に訴えていることで、ハヌルに「練習生期間」があったことや、『キル・ボクスン』で、チョン・ドヨン扮するキル・ボクスンが「今日は月末評価日よ」とその練習生たちに声をかけていたことを考えると、これって、韓国アイドル業界のシステムがモデルなのではと思えてしまう。
練習生やアイドルが何か問題を起こすと会社側は速攻、解雇できるのに、会社側に問題があってもアイドル側は契約をなかなか解約できない上に法律上、労働者としても認められておらず、華やかに見えて実は非常に不安定な立場におかれていることは意外と知られていない。当然、アイドルたちに組合はなく、それはこの殺し屋たちも同様だ。
「殺し屋の業界」というユニークな設定にも、若者を搾取する現実の社会問題が巧みに盛り込まれている点が面白い。
ハヌルはMKとの契約を残しながら、MKが混乱の中にあることに乗じて、幼馴染でライバルでもあるジェイ(パク・ギュヨン)と共に新会社を設立する。
若者たちが先輩たちの圧力から脱し、新しい世界を切り開いていこうというわけだ。が、ここで重要なのは、ハヌルがこの業界でてっぺんを獲るという野心が全くないことだ。彼くらいの実力者ならこの混乱期にMKの代表を目指すこともできるはずだが、彼はただ、ジェイの傍にずっといたいだけのように見える。一方のジェイは、彼とは対照的に、練習生からMKの一員として昇格できなかったことがいまだに尾を引いていて、ハヌルに対して複雑なライバル意識を持っている。それが映画『カマキリ』の主要な軸になって行く。
圧倒的な能力を持つ人とそうでない人たちとの物語

『キル・ボクスン』の魅力のひとつに、暗殺の仕事よりも子育ての方が大変という、ユーモラスなギャップが存在していたことが挙げられるだろう。有能な殺し屋でありながら、ひょうひょうとしていて、斧では相手を倒せないとわかるとあっさり銃に持ち替え、相手に「卑怯だぞ!」と言わせてしまう主人公をチョン・ドヨンが溌剌と演じていたのだが、そうしたユーモアは、『カマキリ』ではほとんど見られない。笑いどころといえば、せいぜい、オープニングで名前を間違えられて「バッタ」だとか「カナブン」と呼ばれているところぐらいだ。そのため、『キル・ボクスン』に漂っていた、ユーモアと非情なアクションとの絶妙な融合世界をもう一度と期待していた方や、『カマキリ』ならではの独創的な世界観を想像していた方には、少々物足りなく感じられるだろう。
だが、『カマキリ』の魅力はもっと別のところにある。本作は「才能」というものを巡る人間の葛藤を描いた作品なのだ。何をしてもこの人に勝つことはできないと思った時、あなたならどうするだろう。あっさり、それを認められる凡人であれば、問題はないのだが、それ相応の実力を持っている人にとっては諦め切れないもので、また彼らはその壁を突き破るための努力を惜しまない人たちでもあるためにことは単純ではない。相手は天才だ。どうすれは対等な実力を得ることができるのか、あるいは、超えていけるのか。このようにもがき苦しみながら、ジェイは常に強くなろうと自身を磨いて来た。ハヌルはジェイを護ることに必死だが、ジェイにとってはそれは決して喜ばしいことではい。二人の間に紛れもないケミストリーがあるのは確かだが、ハヌルが手を差し伸べてくれればくれるほど、彼女は自分をみじめに感じたに違いない。常に優秀な友人と比べられてしまう者の苦しみと怒りをパク・ギュヨンが壮絶な演技で見せている。
また、この二人の関係だけでなく、チョ・ウジンが演じるハヌルのMK時代の師匠のトッコ爺もチャ・ミンギュに対してどうしても勝てず、剣を送った挙句敗れ、この世界から追放された過去を持っている。誰よりも強くありたいと願いながら勝負の世界に敗れた人間の悲哀が全編に悲鳴のように溢れているのが本作なのだ。
そんな中で、彼女たちの苦しみを知ってか知らずか、ハヌルは強さを隠し、あえてトップを目指そうとしない。どうやらそれが彼の生き方らしい。彼にとっては、ジェイを護ることが全てなのだ。そんな彼が、ついに感情を爆発させ、圧倒的な強さを見せる終盤のアクションシーンが素晴らしい。彼自身は自分の強さ、天才ぶりを正確に自覚していることがここではっきりと判明する。だがそれでもテッペンを取りたいとは思わない、強さを誇示しても意味がないとするハヌルの内面を表現しながら、イム・シワンが鮮やかなアクションを披露している。
イム・シワン、パク・ギュヨンが華麗に動けるのはある程度予想できたが、チョ・ウジンまでが颯爽と動けるのには驚いた。善人から悪役まで、なんでもこなせる韓国を代表する名優のひとりだが、ここまで壮絶なアクションをこのように滑らかにこなせるとは。
ハヌルとジェイのそれぞれの人生目標が非常にねじれた形で実現するラストは奇妙な余韻を残す。複雑に入り組んだ「愛」の歪な成就といえるだろうか。
『キル・ボクスン』で監督を務めたピョン・ソンヒョン監督は、今回は脚本のみの担当となっているが、ある種のゆがんだ愛の物語という点で、彼がこれまでに監督・脚本を務めた『名もなき野良犬の輪舞』(2017)や『キングメーカー 大統領を作った男』(2022)などを彷彿させる仕上がりになっている。
※当サイトはアフィリエイトプログラム(Amazonアソシエイト含む)を利用し適格販売により収入を得ています
