『ビバリウム』、『神は銃弾』などの話題作で知られるアメリカの映画制作会社XYZ FILMSが手がけたスリラー映画『ハイポ』が2025年7月4日より東京・新宿シネマカリテにて公開される。
映画『ハイポ』は、俊英のクィア監督アディソン・ハイマン自身が経験した病気不安症から着想を得た《どこまでも実話に基づく》スリラー作品だ。
ゲイという属性を持つ主人公の《個人》としての物語をスリラータッチで描き、「クィア×ジャンル映画」というクィア映画の新たな段階を提示した革新的作品だ。
2022年にSXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)でのプレミア上映後、ファンタジア国際映画祭、フライトフェスト国際映画祭など世界有数のファンタ系映画祭で入選。さらに「世界最古のLGBTQ+映画祭」ことフレームライン・サンフランシスコ国際映画祭で審査員特別賞を受賞するなど国際的にも高く評価された。
このたび、アディソン・ハイマン監督の来日と新宿シネマカリテでの舞台挨拶が決定。来日を記念して画家・女優の若菜みさ氏との日米スペシャル対談の模様が解禁となった。
対談では、日本のアニメーション・漫画が大好きなアディソン監督に影響を与えた作品や、アートが持つ「傷を癒す力」に対する文化・国境を越えた二人の思いが語られている。
アディソン・ハイマン×若菜みさ 日米スペシャル対談
若菜みさ(以下、若菜):アディソン監督が映画に興味を持ったきっかけはスタジオジブリだと伺いました。私もジブリの世界観が大好きです。
アディソン・ハイマン監督(以下、アディソン):子どもの頃から宮崎駿の作品が大好きで、『千と千尋の神隠し』(2001)や『天空の城ラピュタ』(1986)など、日本のアニメは私にとって特別な存在です。
若菜:アニメのファンタジー性とポップさが、重いテーマを明るく感じさせてくれます。
アディソン:最近では『呪術廻戦』や『鬼滅の刃』などの漫画作品にも注目していて、ほぼすべてのアニメを観ています(笑)。また私の映画作りに強く影響を与えたのは、精神的な崩壊やアイデンティティの揺らぎを描いた今敏監督の『パーフェクト・ブルー(1997)です。
若菜:映画の表現やカメラワークがとてもリアルで、実体験に基づいていると感じました。
アディソン:『ハイポ』は実体験を基にした映画です。脚本を書いていた時、感情的に追い詰められて手が動かなくなったこともありました。撮影中には、母親の死を描くシーンでパニック発作も起こりましたが、あれは自分の過去と向き合うために必要な時間だったと思います。
若菜:まるで自分の記憶をなぞられているようで印象的でした。私も家庭環境に悩んでいた時期があり、アイデンティティに迷うことが多かったので、作品に投影できるキャラクターがいることは本当に救いになります。
アディソン:この映画は、母との関係や若い頃の自分を投影しています。10年前は理解できなかったことも、今は少しずつ受け入れられるようになりました。
若菜:話すことは本当に大事ですよね。誰かに話すことで少し軽くなる感じがします。
アディソン:医者ではないですが、「話すこと」が心を軽くする手助けになると信じています。映画や本など、日々のルーチンが心の支えになる。本作にもそんなメッセージを込めています。
《プロフィール》
アディソン・ハイマン(Addison Heiman)
カリフォルニア州ロサンゼルス在住のクィア映画監督、脚本家。
脚本家としてマデリーン・ワインスタイン主演ドラマ『Kappa Force(原題)』(2018)をはじめとした数多くの作品を手がける。クィアキャラクターに力を与える作品作りを目指し、初の長編初監督作『ハイポ』は世界最古のLGBTQ+映画祭、フレームライン・サンフランシスコ国際映画祭2022審査員特別賞を受賞。最新作となる長編2作目『Touch Me(原題)』は2025年サンダンス映画祭にてワールドプレミアが行われ、クィア作家としての活躍を続けている。
若菜みさ(わかな・みさ)
2001年3月8日生まれ、長野県出身の画家、女優。2021年から活動をスタート。
アクリル画を用いて「幻の花」をテーマにした作品を展開。映画番組MC、役者としてもマルチに活動している。2023年には初の個展「空想する情緒展」を開催。2024年には西武渋谷百貨店にて「若菜みさ展」を開催。ピアノのコンサートイベントも行い、様々な表現を通して活動を広げている。
(敬称略)
映画『ハイポ』あらすじ
幼い頃、双極性障害を患う母親に無理心中を図られた過去を持つウィル。成人し両親の元を離れ、ゲイである自身を受け入れてくれる恋人との幸せな生活を送っていた。 しかしある日、長い間接触を絶っていた母親から「恋人を信用するな」というメッセージが届く。その出来事を機に、ウィルの精神は次第に不安定になり「自分は《病気》なのでは?」という妄想に囚われていく。 そしてついに、彼の背負う暗い過去が、《狼男》の姿となって再び心を蝕み出す…。
映画『ハイポ』作品情報
2022/アメリカ/英語/96分/R15+/原題:Hypochondriac 脚本・監督:アディソン・ハイマン 編集:マイク・ヒューゴ 撮影:ダスティン・スペンチェック 衣装:ジェシカ・ブルーワル 美術:ニコラス・フィーリャ 音楽:ロバート・オールエア 日本語字幕:堀池明 日本配給:Cinemago 出演:ザック・ビーヤ、デヴォン・グレイ、マデリーン・ジーマ、クリス・ダベク、ピーター・メンサー
映画公式HP:https://www.cine-mago.com/collection/hypo
映画公式X(旧Twitter):https://x.com/hypo_jpn