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映画『カリフォルニア・ドールズ』あらすじと感想/笑いと涙と情熱に溢れたロバート・アルドリッチの遺作

笑い、涙、そして闘志。アルドリッチ監督が最後に遺した『カリフォルニア・ドールズ』は、夢を追う全ての人に贈る人生のドラマ。あらすじと感想を紹介。

 

『攻撃』(1956)、『何がジェーンに起こったか?』(1962)、『ロンゲスト・ヤード』(1974)などで知られる巨匠ロバート・アルドリッチ監督の遺作となった『カリフォルニア・ドールズ』(1981)は、アメリカの女子プロレス界を舞台にした、笑いと涙と情熱に溢れた極上のエンターテインメント作品だ。

 

…All the Marbles (C) 1981 Warner Bros. Pictures International. All Rights Reserved

ぱっとしない女子タッグチーム「カリフォルニア・ドールズ」のアイリス(ヴィッキー・フレデリック)、モリー(ローレン・ランドン)と彼女たちを支える中年マネージャー・ハリー(ピーター・フォーク)が、全米各地を巡業しながらチャンピオンを目指す。

泥臭くも力強い試合シーン、旅の中で確認し合う友情と絆、そして夢を追う者たちの哀歓が、アルドリッチらしい骨太な演出で綴られる。

 

リングの上でも下でも、夢を追うことの苦しさと輝きを描く本作は、単なるスポーツ映画にとどまらず、挑戦を続ける者たちへの温かなエールに満ちている。アルドリッチ監督が最後に遺した、人生の痛みと希望を描く感動作だ。

 

映画『カリフォルニア・ドールズ』は2025年10月28日(火)にNHK BSプレミアムシアターにて放映(午後1:00~午後2:54)。

 

目次

 

映画『カリフォルニア・ドールズ』基本情報

…All the Marbles (C) 1981 Warner Bros. Pictures International. All Rights Reserved

作品名:カリフォルニア・ドールズ

原題:The California Dolls

監督:ロバート・アルドリッチ

脚本:メル・フローマン

出演:ピーター・フォーク、ヴィッキー・フレデリック、ローレン・ランドン、バート・ヤング

製作年:1981年(アメリカ)

上映時間:112分

 

映画『カリフォルニア・ドールズ』あらすじ

…All the Marbles (C) 1981 Warner Bros. Pictures International. All Rights Reserved

売れない女子プロレス・タッグチーム「カリフォルニア・ドールズ」は、リーダー格のアイリスと若手のモリー、そして彼女たちを束ねる中年マネージャーのハリーの3人組。彼らは安ホテルを転々としながら地方巡業を続け、わずかなギャラとプライドだけで日々を戦っている。

 

ハリーはチームを大きく売り出そうと奮闘するが、ショービジネスの世界は非情だ。どこへ行っても雑な扱いを受け、試合の舞台裏ではトラブル続き。それでも3人は、互いの絆を支えにリングに立ち続ける。

 

やがて、全米タイトル戦への挑戦権をかけた大一番が決まる。チャンピオンチームとの試合は、勝てば名誉と未来をつかむチャンス、負ければ夢の終わりを意味していた。激しい試合の中で、彼女たちは己の誇りと信念を懸けて戦う。

 

映画『カリフォリニア・ドールズ』感想と評価

…All the Marbles (C) 1981 Warner Bros. Pictures International. All Rights Reserved

(ネタバレしています。ご注意ください)

 

文句なしの傑作である! アメリカ中西部を走るうらぶれたロードムービーとしての前半、そして、後半の息詰まる死闘とカタルシス、どちらも素晴らしい極上の娯楽作品だ。

 

プロレス会場。女子プロレスの試合の様子を俯瞰と側面の両方から交互に捉えている。セコンドのピーター・フォークがリングに出てきて投げられたかと思うと、レフェリーが頭突きに遭いぶっ倒れている。

 

女子プロレスラーの二人(ヴィッキー・フレデリック、ローレン・ランドン)とマネージャーのピーター・フォーク。ギャラをピンはねされたり、将来への不安に涙を流したり、泥レスリングに参加させられてプライドをずたずたにされたりする日々。三人のいざこざも絶えないが、夢にかける三人は、互いになくてはならないチームであり、気持ちは固く結ばれている。

 

「正式はとかくもの入りだ」が、ピーター・フォークの口癖だ。格言好きなのは、イタリア移民の父親譲りだという。彼は車の移動中には必ずオペラをかけている。ピーター・フォークがバットを取り出すと最強で、悪徳プロモーターの車を破壊したり、賭博場のごろつきの足を叩きのめしたり、挙句にかつ上げまでしてみせる凶悪ぶりで笑わせる。それもこれも、考えがあってのこと。この意外な行動力がみかけの冴えなさのギャップとあいまって胸にぐっとくるのである。

映画の序盤、ヒロイン2人と対戦する日本人プロレスラーが出てきて素晴らしいファイトぶりを披露しているのだが、ミミ萩原とジャンボ堀なのだそう。

 

後半、思いがけないチャンスがまわってきて(ある意味、捨て身で勝ち取って)、ネバダ州リノでのチャンピオンシップで黒人のタッグ・チーム、タイガーズと因縁の対決をする機会を得る。メインイベントの前座なれど、ドールズたちの美しさも話題を呼び、まるでメイン扱い。メインイベントのチャンピオン、ビッグママはおかんむり。なぜ、自分のポスターを売り出さないのかと叱りつけられたマネージャーが「思いつかなかった」と言うシーンが面白いのだが、外に出てみれば、ビッグママの控え室のドアにまでドールズのポスターが。

 

ここからピーター・フォークの腕が冴え渡る。子供たちを買収して、急遽ドールズ応援団を結成、場内のオルガン弾きも買収し(そして勿論レフェリーを買収するのは、敵方の方だ=この場合は例の悪徳プロモーターである)、彼が手で合図するたびに、ドールスの応援が場内に響き渡る。さらになかなか、入場してこないドールズ。タイガースの二人も呆れて待ちくたびれた頃、なんと、むきむきのマッチョ三人を随えて、白い豪華な衣装でものものしく登場してきて、観客を沸かせるのだ。

 

マネージャーの最大の努力のもと、始まった試合。これが、まさに肉体と肉体のぶつかり合い、アクロバティックに鮮やかに決まる技は決してカットを割らない正真正銘の肉弾戦。我々は手に汗握って画面に釘付けだ。試合時間も半端ではない。意地と意地をかけた、ドールズにとっては絶対に勝たなければならない試合、ピーター・フォーク曰く"タイトルと人生のための闘い"である(それでもピーター・フォークは「負けても君たちを愛している」と付け加えるのを忘れない)。

 

場外乱闘、反則技、買収されている審判、叫ぶアナウンサー、試合が進むにつれてドールズに魅せられて行く観客たち。せまる試合終了の時間、その何もかもがエネルギーに満ち溢れている! 最後の最後に綺麗な反撃技で勝ったドールズ、アナウンサーが叫ぶ、「なんという夜、なんという戦い!」。まさにその言葉通り、「なんという映画、なんという戦い!」と叫びたくなる。最初は愚痴っていたビッグママが、控え室でマネージャーと手をとりあって歓んでいる姿が挿入されるのが、これがまたユーモアたっぷりで素晴らしい。エンディングの間も、高々と手をあげる三人がいつまでもいつまでも画面に映し出されている。

 

「なんという映画 なんという戦い!」

 

しばらく興奮が冷めそうにもない。

 

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