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イ・オクソプ+ク・ギョハン短編4作がJAIHOで配信中

第14回大阪アジアン映画祭でグランプリを受賞したイ・オクソプ監督の『なまず』が一般公開されるのを記念して、配信サイト「JAIHO」(https://www.jaiho.jp/)にてイ・オクソプが公私に渡るパートナーのク・ギョハンとのコラボレーションにより発表してきた傑作短編の中から、オクソプ監督自身が選んだ四つの短編が配信されている。彼らの独特の個性がよく現れた必見の作品だ。

 

 

目次

『四年生のボギョン』(2013)

女子大生ボギョンとドックは付き合って4年目。粗大ゴミとして捨てられていたソファを持って返ったり、大型扇扇風機を買って運んだりという恋人たちのエピソードをジャンプカットを巧みに使いながら、ユーモラスに見せ、2人の長年の息のあったところを見せる。一方で、仲はマンネリになっていて、ときめきが欲しいポギョンは、このまま大学を卒業して彼と結婚することにためらいを持っている。別の先輩が気になりだし、ついに別れ話となるふたり。しかし最後のセックスの最中にドックに首を絞めてと言われたポギョンは絞めたまま絶頂にいたり、気がつけば、ドックを絞め殺していた。この時、あわてふためていて、とりあえず窓をあけると、下ではダンス部がダンスの練習をしているのがいい。これは偶然か、それとも演出か? 警察につかまって刑務所で先輩に肖像画を書いてもらっているところに幽霊のドックが来てという妄想のあと、画面には、部屋のカーテンに包まれたドックの遺体が。そしてその横にはポギョンのパンティーが。このあと、ポギョンは先輩の家に行き、関係を結んでしまうのだが、ここに関連してくるタクシーの運転手というキャラも絶妙だ。いなくてもいいキャラなのに、なぜか存在感たっぷり。ラストはいささが落ちが弱く感じられるが、男の思惑から自由になった女の話でもあるのかもしれない。

『四年生ボギョン』(A Dangerous Woman 4학년 보경이)2013年 28分
監督:イ・オクソプ 出演:キム・コッピ、ク・ギョファン、ペク・スジャン 

『監督!僕にもDVDをください!』(2013)

JAIHOで独占配信中

売れない俳優のギファンは、出演したインディーズ映画のDVDをもらうため、監督たちのもとを訪ねてまわっているが、監督たちはなかなかDVDを渡してくれない…。今も映画監督を続けている者もいるが、セールスマンがすっかり板についた人もいる。なかなかDVDを渡したがらない女性監督は「この作品だけで私を評価しないで」と言う。インディーズで映画に関わっていた人々のあるあるの世界が描かれる中、DVD集めという目的が「黄色の紙袋」一点に集約され、それが主人公にとって特別なものになっていくのが面白い。

『監督!僕にもDVDをください!』(Where is my DVD? 왜 독립영화 감독들은 DVD를 주지 않는가?)2013年 28分 監督:ク・ギョファン 撮影協力:イ・オクソプ 出演:ク・ギョファン、コ・ボギョル、ハ・ジュノ

『フライ・トゥ・ザ・スカイ』(2015)

JAIHOで独占配信中

革細工職人になる夢に敗れイタリアから帰国したソンファンを俳優志望のギョファンが出迎える。彼は重機免許を取って、俳優になることをあきらめかけていた。それで納得できるのかと問うソンファンだったが、彼も重機免許をとるべく、運転の練習に勤しむ。ついに免許を取るが、ギョファンと連絡がとれなくなる。やっとかかってきた電話で、ギョハンはちょっとした遊び程度の気持ちで手伝った映画がベルリンで賞をとり、今は撮影で忙しいと告げる。がっぽり儲けたという彼に「俺も俳優になろうかな」とソンファンが言うと「おすすめしません」という言葉が返ってくる。なんとも言えぬ味わいの結末で、ソンファンの気持ちを思うと実に複雑な気分に。オ・イプソク、ク・ギョハンコンビの真骨頂とも言える皮肉全開の一篇。

『フライ・トゥ・ザ・スカイ』(Fly to the Sky 플라이 투 더 스카이)2015年韓国14分
監督:イ・オクソプ、ク・ギョファン出演:ク・ギョファン、チョ・ソンファン 

『ROMEO』(2019)

階上の恋人の姿を見たさに奔走する若い男性。一分たらずの作品で少しグロい。

『ロミオ』(ROMEO)2019年 韓国 1分
監督:イ・オクソプ 出演:ク・ギョファン