デイリー・シネマ

映画&海外ドラマのニュースと良質なレビューをお届けします

【2024年1月12日(金)より全国公開!】映画『ニューヨーク・オールド・アパートメント』原作者&監督オフィシャルインタビューが到着!

NYの片隅で疎外されて生きる母と息子たち、その痛切な葛藤と成長を、やさしい眼差しで描き出す感動作『ニューヨーク・オールド・アパートメント』が、2024年1月12日(金)より、新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、アップリンク京都ほかにて全国公開される。

安定した生活を夢見て、祖国ペルーを捨てNYで不法移民として暮らすデュラン一家。母ラファエラはウェイトレスをしながら二人の息子を女手一つで育て、息子たちも配達員として家計を支えるギリギリの毎日。街から疎外された自分を < 透明人間 > だと憂う二人の息子はある日、謎を秘めた美しい女性クリスティンと出会い、恋に落ちる。一方母ラファエラも白人男性からの耳触りのいい話に誘われ飲食店を開業するのだがーー。アメリカン・ドリームを夢見る母と年頃のピュアな息子たちの貧しくも懸命に生きる姿がNYでの大胆なロケと、ウィットに富んだ詩的な映像美で綴られている。

youtu.be

監督を務めたのは短編「ボン・ボヤージュ」が世界各国の賞を受賞した欧米注目の新進気鋭監督マーク・ウィルキンス。オランダのベストセラー作家、アーノン・グランバーグの小説「De heilige Antonio」をもとに、アメリカが抱える移民問題を背景に親子の絆の物語をリアルに描きだし、長編映画監督デビューを果たした。

 

南米ペルーのオーディションで選ばれたシンデレラボーイ、アドリアーノ・デュランマルチェロ・デュランは本当の双子で、本作が映画デビュー作となる。母ラファエラ役には、ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞し、アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作『悲しみのミルク』などで知られる国際派女優のガリ・ソリエル。ミステリアスな美女クリスティン役には、今注目の若手女優タラ・サラー。そして、ベテラン個性派俳優サイモン・ケザーなどが脇を固めている。

 

このたび、原作者のアーノン・グランバーグとマーク・ウィルキンス監督のオフィシャルインタビューが到着した。  

 

原作者/アーノン・グランバーグ オフィシャルインタビュー

(C)2020 - Dschoint Ventschr Filmproduktion / SRF Schweizer Radio und Fernsehen / blue

ユダヤ人移民の家族で育ち、母親が強制収容所アウシュヴィッツの生存者だったオランダのベストセラー作家アーノン・グランバーグの小説「De heilige Antonio」をもとに映画は生まれた。

アーノン・グランバーグは「1997年にオランダで発表した私の小説「De heilige Antonio」(英題:SAINT ANTONIO /『聖なるアントニオ』)は、70万1000部が出版されました。本作は私の経験や、ニューヨークの小さなイタリアン・レストランでウエイターをしていた時の観察に基づいています。それから15年後、マーク・ウィルキンスから連絡がありました。宅配をして稼ぐ2人のメキシコ人の少年、彼らの母親、ヨーロッパから移住してきた作家といった登場人物たちの運命的な引き寄せに関する物語を、彼はドイツ語で読んだそうです。彼は私の小説を映画化したいと言ってくれて、私は彼の人となりに好感を持ち、何も期待せず、映画の詳細も聞かずに「イエス」と答えました」と、映画化が決まった経緯を語り、「ウィルキンスによる映画化は、期待をゆうに超えていました。編集途中のバージョンを鑑賞したとき、私は感動しました。泣けて、笑えて、私の作品の精神に忠実で、ユーモアにあふれ、哀愁が漂い、ニューヨークを愛しつつ理想化しすぎることなく、芸術や人生における不可解な残酷さを描いた映画でした」と実際に映画を見た時の感想を明かした。本作のラストシーンでは、ラマと自撮りする歩行者役で出演しており、「タイムズ・スクエアでエキストラを経験したことも誇りに思っています」と撮影を振り返った。  

 

マーク・ウィルキンス監督 オフィシャルインタビュー

(C)2020 - Dschoint Ventschr Filmproduktion / SRF Schweizer Radio und Fernsehen / blue

希望は私たちを無防備で愚かにし、私たちの最大の欠陥になり得ると同時に、人間の最大の美徳の一つでもあります。 『ニューヨーク・オールド・アパートメント』は、希望の表と裏を両方描いています。より良い生活を願う。 受け入れられることを願う。 愛されることを願う。 あるいは、初めて性体験をして、性愛の神秘を体験する。

前作の短編『BON VOYAGE』は、ヨットで休暇中に沈没する難民船に遭遇するという物語でした。つまり、「特権」と生き残ろうとする人間の「意志」の対峙です。

長編デビュー作においては、移民をただ「見る」だけでなく、内側から「観察」するようにして描く作品にしたいと思っていました。

ニューヨークに引っ越してから数年後、私はアーノン・グランバーグの小説『THE SAINT OF THE IMPOSSIBLE』を発見しました。ウィット、ユーモア、詩的な美しさに満ちたこの移民の物語に、私が「アメリカン・ドリームの首都」に感じ続けてきた疑問が集約されていると感じました。

本作は甘美な物語です。純朴そのものなティーンエイジャーの双子「ポールとティト」、ミステリアスなクロアチア人女性「クリスティン」、兄弟の母親「ラファエラ」、スイス人の恋人「エヴァルト」。これらの登場人物たちは、私自身が「見知らぬ人」「部外者」として扱われた体験に由来する拒絶の感情や、住んでいる場所に属せていなく「愛され、受け入れられたい」と切望した、かつての体験による産物です。

 

ポールとティトの中には、私自身と弟のルカが投影されています。ポールとティトと同じように、私たちはすべてを一緒に経験しました。母親の新しい恋人について、歓迎されていないと感じていた新しいコミュニティについて、そして十代の頃に気になっていた女の子について、考えや感情を交換しました。

 

素晴らしい国際的なスタッフとキャストとともに、私たちは責任の所在を問いかけたり、いたずらに哀れみを誘発するだけではない「移民の物語」を制作することに挑戦しました。主人公たちの等身大な姿を描くことで、実存を保証されたいという私たちの普遍的な欲求を深掘りしました。 あなたが、不法滞在しているペルー人の自転車配達人であろうと、自暴自棄なクロアチア人の恋人であろうと、孤独なスイスの大衆小説家であろうと、人々は「自分の人生」を受け入れられながら生きたいという願望に突き動かされているという点では、同じなのです。

私たちはにぎやかなニューヨークの路上で『ニューヨーク・オールド・アパートメント』を撮影しました。 道路を封鎖して撮影するのではなく、町が私たちの映画の中に入り込んでくるのをそのまま撮影しました。 俳優とスタッフにとって、主要な撮影場所であるマンハッタンとブロンクスの忙しない雑踏の予測不能な動きに対処するのは大きな挑戦でした。 ポールとティトがニューヨークで「透明」であると感じたのと同じように、私たち撮影クルーも町に紛れるように努めました。ニューヨークという都市が、本作の 6 番目の主人公、あるいは敵対者であるということです。

ポールとティトを演じたアドリアーノマルチェロに最大の賛辞を送りたいと思います。二人とも本作が演技デビューです。ペルーのキャスティング・ディレクター、ホルヘ・ビジャフェルテはあらゆる手段を講じて、ペルー全土でポールとティトを演じられる若い俳優を探しました。 アンデス山脈の高地・クスコで、彼はアドリアーノマルチェロを発見しました。私が初めて彼らに会ったとき、二人はまだ16歳でした。 彼らはギターを弾き、英語を話しましたが、これまで映画界に足を踏み入れたことも、自分たちの街を離れたこともありませんでした。 しかし、彼らの演技の才能は素晴らしく、詩的なカリスマ性がポールとティトに非常に近かったので、彼らに「ニューヨークに来て一緒に撮影しないか」と頼むに至ったのです。

 

マーク・ウィルキンス監督プロフィール

受賞歴のある短編映画やテレビCMを長年監督し、本作が長編映画デビュー作となる。前作の短編映画『BON VOYAGE』は、地中海における深刻な移民問題に焦点を当てたストーリーで、世界中の70の映画祭で上映され、第89回アカデミー賞の最終選考に残り、スイス映画賞など46の賞を受賞した。

HOTEL PENNSYLVANIA』(原題)は 2012年、栄誉あるクレルモン・フェラン映画祭(フランス)でプレミア上映された。『ニューヨーク・オールド・アパートメント』と同様に、アメリカン・ドリームとその夢追い人を観察する作風の作品だ。

マルクはスイスで生まれたが5歳のときに両親とギリシャクレタ島に渡り、コミューンで暮らす。その後、母親とその新しい恋人に付いていきドイツに渡り、フライブルクで教育を受ける。早々に学校を辞め、独学で映画製作の技術を身につけ、ヨーロッパ中で10本以上の長編映画製作に携わり、さまざまなポジションを経験する。

ニューヨークに8年間住んだ後、現在はウクライナ・キーウ在住。

 

 

映画『ニューヨーク・オールド・アパートメント』作品情報

(C)2020 - Dschoint Ventschr Filmproduktion / SRF Schweizer Radio und Fernsehen / blue

2020年/スイス映画/英語、スペイン語/97分/シネスコ/5.1ch/原題: The Saint Of The Impossible
監督:マーク・ウィルキンス 製作:ジョエル・ジェント 原作:アーノン・グランバーグ 脚本:ラ二=レイン・フェルタム 撮影;ブラク・トゥラン 編集:ジャン・アルデレッグ 音楽;バルツ・バッハマン、ブレント・アーノルド 日本版テーマ曲:THEティバ「winnie」
出演:マルチェロ・デュラン、アドリアーノ・デュラン、マガリ・ソリエル、タラ・サラー、サイモン・ケザー