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映画『未来は裏切りの彼方に』あらすじ・感想/ナチスドイツ支配下のスロバキアを舞台にしたヒューマンサスペンス

映画『未来は裏切りの彼方に』は2023年4月14日(金)よりアップリンク吉祥寺、シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、15日(土)より新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開!

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スロバキア人監督ペテル・マガートが、デブリス・カンパニーの舞台劇「EPIC」を基に北アイルランドの脚本家ユエン・グラスが手掛けたオリジナル脚本を映画化。

 

ナチスドイツ支配下スロバキア民衆蜂起を背景に、閉鎖的な軍需工場のある小さな村で生き延びるため奔走する男女の苛烈な運命を描いたヒューマンサスペンスドラマだ。

 

スウェーデン生まれで『ザ・クーリエ』(2019)などで知られるアリシア・アグネソンが妻エヴァ役を演じ、イギリス出身のラクラン・ニーボアが夫ジャックを演じている。他にもクロアチア出身のクララ・ムッチ等、国際色豊かなキャストが集結した。  

 

目次

 

映画『未来は裏切りの彼方に』作品情報

(C)2020littlekingdom

2020年製作/98分/スロバキア映画/シネマスコープ/原題:Little Kingdom

監督:ベテル・マガート 原案:ユエン・グラス 脚本:ユエン・グラス、ルツィア・ディッテ、ミハエラ・サポ 主題歌:シモナ・マグシノバー

出演:アリシア・アグネソン、ラックラン・ニーボア、ブライアン・キャスプ、クララ・ムッチ、ヤン・ヤツクリアク、エイミー・ラフトン、アビゲイル・ライス、クリスティーナ・カナートヴァー  

 

映画『未来は裏切りの彼方に』あらすじ

(C)2020littlekingdom

第二次世界大戦末期、スロバキア第一共和国の歩兵部隊は森の中に佇む娼館を偶然見つけ、ひと時の休息を楽しんでいた。

仲間たちが娼婦と個室に消えるなか、妻のエヴァから流産したことを報せた手紙を受け取っていたジャックは娼館を抜け出し、夜の森を走り出す。

 

銃声の音を耳にしながら軍から脱走したジャックは、手紙に記載されていた住所を訪れエヴァとの再会を果たした。彼女は生活のため軍需工場で働いていた。

 

ジャックは脱走兵であることを隠し、工場で働き始めたが、傲慢な工場主のバールは雇うのは夫婦のどちらか一人だけだと迫る。

 

ジャックとエヴァの関係はジャックが入隊する以前から必ずしも良好ではなかったのだが、ジャックは心を入れ替え、立派な父親になるために君を養いたいとエヴァを説得。ジャックが残ることになった。

 

そんな中、戦後の工場経営に危機を感じていたバールは、注文確約の条件として政府の役人ハナーチェクの愛人との結婚を要求される。

 

その女とは、ジャックが逃げた娼館にいた美女・キャットだった。再会したジャックとキャットはお互いに弱みを握っていることで牽制し合うが、やがて驚くべき真相が明らかになる・・・。  

 

映画『未来は裏切りの彼方に』の感想・評価

(C)2020littlekingdom

ナチスドイツ支配下の小さな村の軍需工場を主な舞台に、戦時下の人々の不安定な心理があぶり出されている。

白樺の森も、澄んだ水も、ほとんと陽が当たらず寒々としていて、人々の荒廃した心を反映しているかのようだ。

 

民衆蜂起が起こり、ソ連軍がドイツに進行する直前のまさに時代の変革期、これまで甘い汁を吸ってきた工場長は戦争が終われば受注がなくなるのではと不安を募らせている。

 

レジスタンスのメンバーや秘密警察たちが入り乱れる中、すべての登場人物が不安を抱え、疑心暗鬼になり、裏切り、暴力にさらされている。

 

工場長は自分のことを「お人好し」と言うが、そんなお人好しなんてこの作品には一人も出てこない。

 

妻の手紙を受け取り、軍隊を脱走して妻のもとに帰ってきた夫ジャックも例外ではない。

妻を心配した愛情ゆえの行動かと思っていたら、どうやら彼らは決して円満な仲ではなかったらしい。ジャックは態度を改め生まれ変わると約束するが、他者からの告げ口にすぐ心を揺らしてしまう。  

 

妻のエヴァは生きる道を懸命にひとりで切り開いてきた人物で、本作の中でもっともまっとうに見えるが、それでも、戦争で夫をなくした同僚に対して思いやりに欠けているようだ。

 

戦争が人々の心を荒廃させたのは間違いないが、もともと、人間は愚かな存在だったのだと言わんばかり、憎しみは醜く膨れ上がって行く。

 

いずれにしても、皆、あまりにも人間臭く、それゆえに他人事ではすまされないものがある。

 

第二次大戦時の東ヨーロッパの小さな村の物語は、時代を超え、飛距離を伸ばし、今を生きるわたしたちに鋭い問いを投げかけてくる。

 

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