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映画『マネーボーイズ』(金錢男孩)あらすじ・感想/中国の都会で男娼として暮らす青年の葛藤と刹那の輝き

家族を養うために田舎から都会に出て男娼として生きる中国の青年を描き、2021年・第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品された映画『マネーボーイズ』

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中国で幼少期を過ごし、オーストリアに移住後、ウィーン・フィルム・アカデミーにてミヒャエル・ハネケに師事したC.B.Yiの長編映画監督デビュー作だ。

 

『あの頃、君を追いかけた』(2011)で主役を演じて一躍ブレイクし、初の監督作『黒の教育』(2022)が第18回大阪アジアン映画祭にて「来るべき才能賞」を受賞したクー・チェンドンが主役のフェンを演じている。

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目次

映画『マネーボーイズ』作品情報

(C)KGP Filmproduktion, Zorba, ARTE France Cinéma,Flash Forward Entertainment, La Compagnier Cinematographique Panache Productions 2021

2021年製作/120分/オーストリア、フランス、台湾、ベルギー合作映画/スコープサイズ/原題:金錢男孩 (英題:Moneyboys)

監督・脚本:C.B.Yi 撮影:ジャン=ルイ・ビアラール

出演:クー・チェンドン、クロエ・マーヤン、リン・ジェーシー、ザック・ルー、バイ・ウーハン

 

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映画『マネーボーイズ』あらすじ

(C)KGP Filmproduktion, Zorba, ARTE France Cinéma,Flash Forward Entertainment, La Compagnier Cinematographique Panache Productions 2021

貧しい農村出身のフェイは、病弱な両親を経済的に支えるため、都会に出て男娼として働いていた。

 

フェイは同僚のシャオライと恋愛関係にあった。2人は同棲し、互いに家庭的な温もりを感じていた。

 

シャオライは経験上、暴力的な客を見極めることが出来た。危険な仕事をフェイにやらせたくないと考えるが、金を稼ぎたいフェイはシャオライの警告を振り切って出かけていき、ひどい怪我を負わされてしまう。

 

シャオライはその客に報復するために単身出かけていくが、逆襲を受け、両脚を潰されてしまう。

 

警察沙汰となり数名の警官がフェイたちの部屋を訪ねてきた。たまたま部屋の外に出ていたフェイはその様子を見てあわてて逃げ出しそのまま戻らなかった。

 

5年が経ち、フェイは別の土地でまだ男娼として働いていた。

 

フェイは同郷のロンと再会し、やがて人懐こい彼と付き合い始める。

ちょうどその頃、フェイはシャオランの噂を耳にする。足が駄目になってボーイフレンドに捨てられた元マネーボーイがこの土地で音楽活動をしているらしいというものだ。シャオランの足が自分のせいで駄目になったことを始めて知ったフェイは愕然とする。

 

故郷に戻る機会があったフェイは家族や親戚と衝突してしまう。彼らはお金を当てにしているにも関わらず、フェイを一族の恥じであると感じているのだ。彼をかばってくれるのは唯一姉だけだった。

 

そんなある日、フェイは偶然シャオライと再会するが・・・。

映画『マネーボーイズ』の感想・評価

(C)KGP Filmproduktion, Zorba, ARTE France Cinéma,Flash Forward Entertainment, La Compagnier Cinematographique Panache Productions 2021

(ラストに言及しています。ご注意ください)

中国の貧しい農村で育ったフェイは、家族を養うために都会に出てきて、男娼となる。

この仕事をしていると質の悪い客にあたることもある上に、警察の目を常に気にしなければならない。そんな思いをしながら金を作り、家族に仕送りをしても、ゲイであるという彼のアイデンティティとその職業故に家族には決して認めてもらえない。

ある男娼仲間は、十分金を貯めたのを契機に足を洗い、同性の恋人を捨て女性と結婚する。それは、結婚していないのは恥とされる中国社会で生きていくための現実的な方法なのだ。

そうした中で、フェイは二人の男性と恋に落ちるのだが、最初の恋人への負い目が、今の恋人との関係にも影響を及ぼしていく。

 

フェイの満たされぬ思いが全編に漂っている。彼が覚える様々な葛藤や痛みが、ロングショットやミドルショットを多用した強度な画によって表現されている。

橋の上でフェイとシャオランが対峙する場面は、長回しの引きのワンカットで撮ることで静謐な緊張感を生み出し、クー・チェンドンとリン・ジェーシーの魅力を全面的に引き出している。

このようにC.B.Yi監督は人物にあえて距離を置き、同情を交えることなくドライな筆致を貫いているが、そのてらいのない客観性が、逆にフェイたちの魅力を輝かせているのだ。

 

本作は中国を舞台にしているが、題材的に中国での撮影が難しいということもあり、台湾で撮影された。

台湾での封切時には風景や言葉の違和感を指摘する議論が起こったというが、その欠点を補っても余りある魅力が本作には備わっている。その証拠に本作は2021年金馬奬で最優秀新人監督と、最優秀主演男優の二部門にノミネートされた。

 

そして何よりもラストシーンの素晴らしさはどうだろう!

ダンスフロアでダンスに興じるフェイ。運動は緩やかに加速し、生き生きとした律動感が溢れ出す。

彼がその時、どのような感情を抱いていたのかはわからない。それが彼の至福の時だったと断定することもできない。だが、そのシーンを支配する刹那の輝きが、観る者の心をときめかせ、ざわざわと激しく胸をかき乱すのだ。