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【祝エミー賞ノミネート】『ベター・コール・ソウル』シーズン1全話(1~10)あらすじ・解説【Better Call Saul!】

第75回を迎えるエミー賞(2023)で『ベター・コール・ソウル』がドラマ・シリーズ部門の作品賞、主演男優賞(ボブ・オデンカーク)、助演女優賞レイ・シーホン)にノミネートされた。

Television Academy

2008年から2013年まで米ケーブル局AMCで放送された伝説的傑作ドラマ『ブレイキング・バッド』の前日譚で、弁護士ソウル・グッドマンを主人公にしたスピンオフドラマとしてスタートした本作。放映されるやいなやたちまち人気を博し、シーズン6の最終回(2022年8月15日放映)までとてつもないクオリティを保ち続けたまま駆け抜け、14年に及ぶアルバカーキー・サーガとしての金字塔を打ち立て完結した。

 

第75回エミー賞には他にも『THE LAST OF US』、『メディア王 〜華麗なる一族〜』(原題:Succession)など強力なライバル作品が数多くノミネートされているが、『ベター・コール・ソウル』に(今度こそ!)栄冠が輝くことを切に願っている(第75回エミー賞授賞式は、9月18日に開催される)。  

 

『ベター・コール・ソウル』は.「ソウル・グッドマン」と名乗る前の若かりし頃のジミー・マッギルの姿が描かれている。

彼がソウル・グッドマンになっていく過程にはどのようなことがあったのか、人間として彼がどのように揺れ動き人生を選択して行ったのか、人間は自分を変えることが出来るのか否か、といった主題が、ボブ・オデンカークの絶妙な役作りと、ユニークなキャラクターたちとの軽妙な掛け合いでスリリングに描かれている。そうした全編を通したテーマがシーズン1(放映期間:2015年2月8日~2015年4月6日)にすでに顕著に表れており、強い印象を残している。

 

『ベター・コール・ソウル』をまだご覧になっていない方にはそのとっかかりとして、また全シーズンを既に観終えたという方には振り返りとして、お読みいただければ幸いです。

(注意:あらすじには全てネタバレが含まれています)

 

『ベター・コール・ソウル』シーズン1 エピソード1(S1E1)「駆け出し(UNO)」 

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ジミー(ボブ・オデンカーク)はファーストフード店「シナボン」で他人に成りすまし正体を隠して働いていた。疲れ果てて自宅に戻った彼は一本のビデオテープを取り出し、再生する、それは「弁護士・ソウル・グッドマン」として威勢よくやっていたころのCMビデオだった。画面を見つめる彼の眼は潤んでいるようにもみえる。人気ドラマ『ブレイキング・バッド』のスピンオフ作品『ベター・コール・ソウル』の記念すべき一作目のオープニングだ。

 

本編に入り、「ソウル・グッドマン」ことジミー・マッギル弁護士の過去が語られていく。

『Breaking Bad]』より六年前の2002年、ニューメキシコ州アルバカーキ。冴えない弁護士である彼は一件700ドルの国選弁護人くらいしか仕事がない。兄のチャック(マイケル・マッキーン)は大手弁護士事務所HMMの共同経営者の一人だが、深刻な「電磁波過敏症」を患い、現在休養中で家に引きこもっている。ジミーは外に出られない兄のために買い出しなどの面倒も見ていて、兄に自分の取り分を取り戻し、事務所をやめるよう勧めている。しかし兄はいつか病を克服し復帰する気でいるらしい。

ある日、ジミーは走行中に(このおんぼろ自動車はスズキの「カルタス」だとか)ローラースケートで走っていた男性を轢いてしまう。しかし彼らは当たり屋の兄弟だった。すぐにそれに気付いたジミーは二人を使って一儲けしようと企む。  

 

役所の公金を横領したと疑われているクレッグ(ジェレミー・シャモス)とベッツイ(ジュリー・アン・エメリー)のケトルマン夫妻と契約したいと目論んでいたジミーはベッツィの運転する車に当たり屋をぶつからせて、自分が仲介に入り、そのまま弁護士契約するという計画を立てて、即、実行。しかし、当たり屋がぶつかった車は停車せずそのまま行ってしまう。

抜け目のない兄弟は車のあとを追い、家をつきとめジミーに連絡。大金が入ると聞かされた兄弟は、ジミーは用無しと自ら乗り込んでいくが、出てきたのは年寄りのメキシコ人女性だった。英語もよく通じない彼女に変わって部屋の奥から男が出てくるが、それはなんと『ブレイキング・バッド』でもおなじみの麻薬カルテルの一味トゥコ(レイモンド・クルス)だった・・・。

 

エピソード2(S1 E2)「トゥコ(Mijo)」

トゥコは祖母を二階に行かせた後、自分の祖母をボロカスに言った当たり屋兄弟を殴り倒し縛り付ける。絨毯に血がつき、降りてきた祖母が騒ぎ始めるが、トゥコはケチャップがついたのだと言い訳して拭き取ろうとする。そこへジミーが何も知らずにやって来る。

 

兄弟とジミーは荒野に連れて行かれ、絶体絶命。ここで、『ベター・コール・ソウル』の最重要人物の一人となっていくナチョ(マイケル・マンド)が初登場。ジミーはこの窮地を持ち前の「口八丁手八丁」で切り抜けようとする。ナチョの口利きもあり、なんとか難を逃れるが、トゥコたちは祖母にひどいことを言ったと当たり屋兄弟を始末しようとする。そこを見て見ぬふりができないのがジミーだ。なんとかトゥコを説得し、ふたりとも足を折るだけで済ませてもらう。悲鳴が響き渡った後、すぐに二人を病院に担ぎ込んだのは言うまでもない。

この騒ぎに懲りて国選弁護人に精を出すことにしたジミー。地方裁判所駐車場の係員であるマイク(ジョナサン・バンクス)との小競り合いが描かれる。それもこれもジミーが常に料金をまけさせようとするからなのだが。ここで後々、深い関係となっていく『ブレイキング・バッド』でもおなじみのマイクが登場している。  

 

ある日、疲れて事務所に帰ってきたジミーのもとにナチョがやってくる。彼はそもそもジミーたちが当たり屋をした理由を聞き逃さなかったのだ。ケトルマン夫妻が役所から横領した金を奪って見せるから情報を集めろと言われるジミー。自分は弁護士で犯罪者ではないと断るジミー。「力になれるとしたら弁護士としてだ、困った時はいつでも弁護しよう」と語るが、ナチョは態度を変えず、立ち去った。

 

エピソード3(S1 E3)「ナチョ(Nacho)」

冒頭、クック郡の拘置所依頼人を待っている若き日のチャックが映し出される。そこに現れたのは留置場(?)に拘留され手錠をかけられた弟、ジミーだった。彼らの過去を表す描写なのだが、無軌道な生活をしていたジミーの若かりし頃が露になり、優秀な兄とできの悪い弟という構図がここではっきりと示されている。

 

ここから本編。ジミーは迷った末、HHMの弁護士で仲の良いキム(レイ・シーホン)に電話を入れる。夜中の二時でキムを起こしたことにも無自覚だ。今やHMMの依頼人となったクレイクとその家族が危険に身をさらしていることを伝えたいのだが、うまく伝えられない。バラしたとなるとナチョがただではおかないだろう。かといってこのままほうっておくわけにもいかない。外に出たジミーは、公衆電話から一家に電話をかけ、声を変えて、「金が狙われている。命があぶない」と警告。電話を受けたケトルマン夫妻が窓から外を伺うと、不審なバンが止まっているのに気付く。

翌日、国選弁護人として励むジミーのもとにキムから電話がかかってくる。ケトルマン一家が行方不明になっているという報せだった。あわててケトルマン家に飛んで行くジミー。

 

車はそのまま残されていて、部屋が荒らされていた。公共の乗り物も利用された気配もなく、一家は忽然と消えたという。ジミーはあわててナチョに連絡をとろうと試みるが一向に電話がつながらない。何度も電話して、公衆電話の番号を告げ、返信してくれと留守電を残したところ、ついに電話がかかってくる。しかし出ても相手は何も言わず、ふと顔を上げると、前方と後方から見知らぬ男が近づいてくるのが見えた。

何気ない顔で歩き出し、角を曲がって全速力で走り出したジミーだったが、前から来たパトカーにぶつかり、追ってきた男たちに捕まって手錠をかけられてしまう。彼らは刑事だったのだ。ジミーは刑事からナチョがケトルマン一家行方不明事件に関与したと疑われ拘束されていることを聞かされる。ケトルマン一家の家の側にバンを停めていたのを目撃されていること、車の中に血痕が残っていたことなどが決め手だという。ナチョは弁護士としてジミーを指定してきたのだ。

 

ナチョは、ジミーに対して自分は犯人ではないと潔白を主張。社内の血痕も当たりや兄弟を病院に運んだ時のものだと言う。ケトルマン一家が横領した金をナチョが狙っていたことはジミー以外には誰にも話していないと彼は言い、ジミーが裏切ったと憤っていた。「今日中に俺を釈放させなければお前は死ぬだろう」とナチョに脅され気が気でないジミー。  

 

ナチョの主張を信じたジミーは、再びケトルマン家を訪れ、刑事たちと一緒に現場を探索して回る。すると、7歳の娘の部屋の人形がないことに気がつく。部屋に残っている写真には娘はいつも人形を持って写っていた。そんな大事な人形がなくなっているのはなぜだろう? ジミーはケトルマン一家が自ら行方をくらましたのだと推理するが、刑事たちはとりあってくれない。

ジミーがいつもの駐車場を利用しようとした際、前回、強行突破して金を払わずに出たせいで、マイクは頑なに彼を通そうとしない。その場に車を停めて立ち去ろうとすると、マイクが出てきて、ものすごい力で組み倒される。ただの駐車係の老人だと思っていた男の意外な力にジミーはすっかり驚き、マイクが元刑事だということがわかる。それがきっかけでジミーはマイクに一家の行方不明事件について相談するのだが、なんとマイクは話の筋が通っていると、その話を信じてくれた。マイクは自身が扱った事件で、同じように突然行方をくらました犯人が、実はごく身近なところに潜んでいたという体験を語った。おそらく、ケトルマン一家も近くにいるはず。みんな家の側にいたいんだとマイクは語る。

三度ケトルマン家を訪れたジミーは、一家がキャンプ好きであると知り、裏庭から森へ出たのではないかと目星をつける。どれほど歩いただろう。すっかり当たりが暗くなってきた時、それほど遠くないところから歌声が聞こえてきた。ついにジミーは彼らが潜むテントを発見したのだ。

キムに一報したあと、テントに突入したジミーに対してケトルマン夫婦はしらを切り通し、あくまでも横領などしていない。金などないと言う。しかし、ジミーが手にとったバッグの中から札束の山が飛び出し、夫婦はジミーに賄賂を渡そうとする。「賄賂はとらない。弁護士としてなら助けてやろう」というジミーに対して、夫婦は「でもあなたは有罪になる人の弁護士でしょ?」という言葉をなげつける。ジミーは苦虫を噛み潰したような顔になるのだった。  

 

エピソード4(S1 E4)「ヒーロ〈HERO)」

今回もオープニングは、ジミーの過去の出来事。高級そうに見えるパチモノの腕時計詐欺に従事しているジミー。ここで重要なのは名前を聞かれたジミーが、「ソウル・グッドマン」と名乗っていることだ。

 

以下、本編。ケトルマン夫妻一家は裏庭でキャンプをしていただけというジミーの言い分が通り、ナチョは無事釈放される。ただ彼はジミーがケトルマンにリークして、そのせいで自分の企みがバレて収監されたことに怒りを隠せない様子だ。しかし、ジミーはそんなナチョにもびびっておらずまくしたてる。ジミーの口の達者さとカルテルの一味も恐れない妙な度胸が印象的な場面だ。

 

ケトルマン夫妻から受け取った賄賂でジミーは高級紳士服をオーダーメードする。これはケトルマン夫妻から「あなたは裁判で負ける側の弁護士よ」と見た目で判断されたことが心底こたえたのだろう。ライバルであるHHMのロゴをそっくり真似た立て看板も設置するが、さすがにこれはHHMのハワード(パトリック・ファビアン)の怒りを買って裁判所に提訴される。判決はジミーの負け。せっかく大金をはたいた看板は撤去されることとなったが、ジミーが悲しげに看板を見上げていると、作業員が宙ブラリになるという事故が起こる。それを見たジミーは咄嗟に駆け出し、命綱もつけずに高く組み立てられた階段を駆け上がっていく。大勢の人が見守る中で、ジミーは男性を救出。たちまち彼は危険を顧みず人命救助に尽くしたヒーローになる。実のところは作業員とグルになったやらせだったのだが(笑)。他の人は騙せても、ジミーをよく知るハワードは、あきれ返って怒りが収まらない様子。一方、友人のキムはちょっと満足気だ。

 

スパ&ネイルサロンの奥に構えた事務所で恐る恐る留守電を聞くジミー。いつもはまったく入っていないのだが、なんと今回は7件も入っていた。翌朝の「Albuquerque Journal」にはトップニュースとして掲載される。毎朝、ジミーはチャックに日用品と共に、新聞を届けているのだが、その朝は「Albuquerque Journal」は届けないことにした。なぜって、兄ならこれが狂言とすぐに見破ってしまうからだ。

 

しかし、どうしても地元新聞が読みたいチャックは、窓から近隣の家に届けられた新聞が芝生に落ちているのを目撃。ジミーが出ていったあと、決死の覚悟で外に出て新聞を取り、新聞代として小銭を置き、あわてて家に戻る。その一部始終を近所に住む女性が目撃していた。  

 

エピソード5(S1 E5)「羊飼いの少年(Alpine Shepherd Boy)」

チャックのもとに二人の警官がやってくる。チャックの行動を不信に思った近隣住民から通報が入ったのだ。電磁波アレルギーのチャックは、ドアを開ける訳にはいかない。法律用語を並べ立てている中、裏に回った警官は、電源コードが引きちぎられ、煉炭などが置かれた異様な室内を見て、ドアを蹴破りチャックにテイザー銃を突きつける。

一方、ジミーは例の人助けに感銘を受けて連絡をくれた依頼人たちを訪ねるが、どれも話にならないものばかり。三件目に訪れた老女だけはまともで、コレクションの人形の生前信託を依頼される。キムにこの件を話すと、彼女は「高齢者法を専門にするのもいいわね」と言い、ジミーもその言葉に心を動かす。

そんな中、チャックが体調を崩し入院したという連絡がハワードから入り、あわてて病院に駆けつける二人。電磁波にさらされまくってベッドに寝ているチャックを見て、ジミーはあわてて電源を切ってまわり、病院のボディガードに組み伏せられる。事情を知った担当医はジミーを開放させ、チャックの症状は心の病で入院が必要だと主張。しかし、結局家につれて帰ることに。帰宅早々、ジミーはそもそもこの騒ぎの発端になった地元新聞について、言い訳を始める。まともな弁護士になるための「宣伝」だと繰り返し、チャックを納得させようと必死になる。

その後、ジミーが老人ホームで、お年寄りに声をかけて回るシーンになるが、その時にかかっている音楽が映画『スティング』のテーマなのが実に可笑しい。  

 

エピソード6 (S1 E6)「警官(Five-O)」

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前回、終盤でマイクの過去を示唆するシーンが出てきたが、今回は、それが明らかになる「マイク回」だ。

 

前回にも出てきた女性(のちに息子の妻のステイシーであることが判明=ケリー・コンドン)が駅の待合に座っているマイクのところにやってくる。マイクはトイレに行くから待っていてくれと言って、女性トイレに向かう。「誰かいるか」と声を上げて誰もいないのを確かめてから、設置されている自販機の生理用品を購入する。彼はどうやら肩に大きな怪我を負っているらしく、生理用品をあてがい、絆創膏で貼り付けている。

 

マイクにはマティーという息子があったのだが、何らかの理由で亡くなったようだ。息子は自分と同じ警察官だった。マイクはステイシーと孫のケイリーを追って、この地にやってきたのだが、ステイシーはまだ彼に対して警戒心が溶けないようだ。というのも、マティーが亡くなった際、彼は落ち込み、ひどく荒んでいたからだ。でももう立ち直ったとマイクは言い、スティシーはそんなマイクに、夫の死について知っていることを教えて欲しいと請う。未だになぜ彼が亡くなったのかを理解することができないのだ。マティーは穏やかな性格だったが、亡くなる前はひどくいらいらして、怒りっぽくなっていた。夜中に起き出して誰かと電話で話をしていたが、ひどく怒っていた、話し相手はあなたじゃないかと思っているとステイシーはマイクを追求する。おまけにかなりの金がマティーの部屋から見つかったらしい。  

 

それから間もなく、フィラデルフィアからふたりの刑事が訪ねてきてマイクは事情聴取される。彼らはホフマンとフェンスキーという2人の警官が殺された事件を調べていた。マイクは弁護士同伴でないとしゃべらないと主張し、ジミーに連絡をとる。マイクは刑事の上着にコーヒーをかけて欲しいとジミーに頼むが断られてしまう。

 

ティーが殉職した3ヶ月後に、相棒だったホフマンとフェンスキーが何者かに殺された。刑事たちは、不正に関わったホフマンたちが、口止めのためマティーを殺したのではないかと考えているようだった。そしてマイクが息子の復讐を果たしたと見ているらしい。

 

マイクは彼らとはバーであったが、あとのことは知らないと証言する。聴衆が終わると、さっきは固辞したはずのジミーが刑事にコーヒーをかけ、その瞬間、マイクは刑事のメモ帳をくすねとった。そこには、ステイシーから連絡を受け、彼らがはるばるアルバカーキーまでやって来たことなどが記載されていた。

 

ホフマンとフェンスキーを殺したのはマイクだった。彼らは自分たちの不正を隠すためにマティーを殺し、のうのうと生きていた。マイクに真相を悟られたと知り、マイクも殺そうとしたが、逆にマイクが彼らを射殺。その際に肩を撃たれ負傷したのだ。

 

マイクはマティーが不正していたのではないかと疑うステイシーに対して、息子は決して不正などしなかったと語る。麻薬の売人を逮捕した際に証拠品の金が無くなることはよくあった。警官がくすねるのだ。みんなやっていたが、マティーだけはやらなかった。仲間の不正に気付いたマティーはそのことを報告したいとマイクに相談してきた。マイクは、密告などすると命を狙われる、お前も金を受け取るんだと言い聞かせ、マティーは苦渋の決断で金を受け取り、身を守ろうとしたが、結局殺されてしまった。マイク自身、金を受け取っていた。清廉潔白な息子を自分たちと同じレベルまで堕落させ、その上、守ってやることが出来なかった。それが大きな悔恨としてマイクに重くのしかかっていたのだ。  

 

エピソード7 (S1 E7 )「ビンゴ(Bingo)」

警察から手帳を返せと呼びだされたマイクとジミー。わざとコーヒーをひっかけて手帳を盗んだだろうと刑事から激しく責め立てられるが、ジミーは手帳はあくまで駐車場で拾ったのだ、と主張。刑事は憤慨して、息子の妻から話を聞くからなとその場を去る。マイクは彼女が何もしゃべらないだろうと確信していた。

 

ジミーはケトルマン夫妻からもらった賄賂で、新しい事務所を持とうと考え、ある物件にキムを連れていく。眺めもよく最高の事務所になるだろうとキムも太鼓判を押してくれた。ジミーはパートナーになってほしいとキムに申し出るが、HHMで頑張ってきてあともう少しでパートナーになれるからとやんわり断られてしまう。

ケトルマン夫妻の担当となったキムは、司法取引を持ちかけていること、横領金を全て返せば、刑期を30年から16か月に短縮できることを告げる。これが最善の策だと説得するが、ケトルマンたちは自分たちが有罪になるなどありえないと拒否し、HMMとの契約を破棄してしまう。顧客を取り逃がしたことでキムの昇進話は一転危うくなってしまう。

 

その後、ケトルマン夫妻はジミーを呼び出し弁護を依頼して来た。ジミーは断るが、夫婦に賄賂を受け取ったことを指摘され、仕方なく引き受けることに。

 

ジミーはマイクに連絡し、ケトルマン宅から横領金を盗み出してほしいと依頼する。マイクは、元刑事の腕をいかして、家の二階の洗面所に隠されていた金を発見。ジミーに金を渡したマイクは「これで貸し借りなしだな」と言って去る。

 

ジミーはその金に自身が受け取った賄賂を加えて地方検事に届けさせ、翌日、何食わぬ顔でケトルマン夫妻を訪ねた。「金を見せてくれ。二階の洗面所にある」と彼が言うと、夫婦は血相を変えて二階に飛んで行き、金がすっかりなくなっているのを見て呆然となる。「司法取引するのが最善の方法だ」と夫婦をHMMに送り届けたジミーにキムは感謝を述べた。

 

手元から金がなくなり、新しい事務所を持つ夢は消え去ってしまった。地団駄踏んで悔しがるジミーの姿があった。  

 

エピソード8  (S1 E8)「RICO法(RICO)」

オープニングは、HMMでジミーが郵便係として働いている時のことが綴られる。ジミーは勤務中のキムに弁護士資格試験結果の封筒を渡し合格か不合格か見てほしいと頼む。結果は見事、合格。すぐさまジミーは弁護士試験に合格したことをチャックに知らせに行く。ずっと内緒にしていたが、通信教育で勉強してきたのだと興奮気味に語るジミー。チャックは驚きながらも、ジミーのことを「誇りに思う」と称えてくれた。ジミーはHMMで雇ってもらえないかと頼み、チャックはハワードと相談してみようと応じる。だが、チャックのところにやって来たハワードはHMMでは雇えないと冷たく言い放つ。

ここから本編。サンドパイパー・クロッシング老人ホームにいる顧客を訪ねたジミーは、やりとりしているうちに、サンドパイパーが入居老人たちを搾取していることに気がつく。チャックに報告すると、彼の見解も「詐欺」だった。ジミーは情報を集めるため、再びサンドパイパーを訪ね、老人たちにいろいろと話を聞いて回るが、派手にやり過ぎたために受付の女に眼をつけられて、ガードマンに放り出されてしまう。ジミーは夜になるのを待ち、ゴミ捨て場に潜入するが、そこが生ゴミ用だったため、全身ドロドロになってしまう。ようやく書類らしきものが入ったゴミ袋をみつけたものの、全てシュレッダーにかけられていた。チャックの家にゴミ袋を持ち込んだジミーは細かく刻まれた紙をよりわける作業を始めるが、くたびれ果て、いつしか眠りについてしまう。翌朝、目覚めると、なんとチャックがあらかた仕事を済ませてくれていた。並んでいる文字は、明らかに搾取を証明するものだった。ジミーはこの件を一緒に扱おうと兄を誘う。  

 

サンドパイパー側の弁護士と会うことになったジミーとチャック。チャックの家にやってきた弁護士団の提案を断り、チャックはRICO法侵害の集団訴訟をちらつかせ、2000万ドルを要求。相手を仰天させる。

 

その頃マイクは、ステイシーから電話を受け、孫のケイリーの子守を引き受けていた。仕事を終えて帰ってきたステイシーは、マティーが受け取った賄賂を使ってもよいかとマイクに尋ねる。ステイシーの稼ぎだけでは生活が苦しいのだろう。マイクが使っていいと答えると彼女はホッとした様子を見せた。

 

エピソード9 ( S1 E9)「ピメント(Pimento)」

このところ、チャックは少しばかり外に出られるようになった。まだ携帯などの電磁波には耐えられないけれど。ジミーはそんなチャックに付き添っている。

 

サンドパイパーの弁護士は、ジミーに接近禁止命令を出すが、ジミーは不服を申し立て裁判で勝利。続いて相手は関係書類を大量に送ってくる。大量に送ることでこちらのやる気を失わせようという魂胆だ。チャックはこの案件を扱うのは二人だけでは労力的にも資金的にも無理だと述べ、HMMに持ち込もうと言い出す。ジミーはふたりでやれると反対するが、結局チャックの説得を受け入れるしかない。HMMでやるのなら、部屋は兄さんの隣がいいなと弾むように言うジミー。

 

ジミーとチャックがHMMに到着すると、照明はチャックのために落とされていて、社員が総出で出迎えてくれた。ジミーは兄の凄さを再認識する。会議室でジミーがハワードに自分の希望の部屋を告げると、ハワードは他のメンバーを外に出して、君は弁護団に入れないと言い出す。サイドパイパーの不正を見つけたのは自分だぞ!とジミーが憤慨しても、報酬は払うのでこの件から手を引いてくれとハワードは冷淡だ。

 

ジミーが外されたことが納得出来ないキムはハワードに理由を聞きに行く。ジミーはいい弁護士だと思うと語るキムにハワードはなにかを打ち明けた。  

 

キムはネイルサロンにやってきて、ジミーにハワードの提案を受けるようにとアドバイスする。まとまったお金が入るし、それで事務所を開けばいいと。ジミーはカッとして自分の出世のために上司に傅くんだろうとキムをなじる。

 

怒りがおさまらないジミーは携帯電話を取り出すが、充電がきれていたことに気がつく。いつもなら必ず電源を切ってからチャックの郵便受けの中にしまうのに、今回に限って切り忘れたようで朝から充電が切れていたのだ。携帯を見つめるうち、ジミーは何かに気付いたようだ。

 

翌朝、ジミーがチャックの家に着くと、チャックは上機嫌で口笛など吹いている。ジミーはチャックに携帯で電話しただろう?と問いただす。切れていた電源を入れて、会話の履歴を消去出来たのは兄さんだけだ、怖くてたまらない携帯を触ってまで何を伝えたかったんだ? 兄さんがハワードに俺を加えるなと指図したんだろ? あの時もそうだったんだな。HMMに俺を雇うなと言ったのも兄さんだったんだ。

 

するとチャックはお前は本物の弁護士ではないからだ、お前は今でも「滑りのジミーだ」と言葉を投げつけてきた。「誇りに思う」と彼が言ってくれた言葉は嘘だったのだ。チャックはジミーのことをまったく認めていなかった。そう悟ったジミーはもうここには来ない、一人で生きろと言い捨てると、呼び止めるチャックを無視して家を飛び出していった。

 

その頃、マイクは、獣医から紹介してもらった仕事の集合場所にいた。彼以外にふたりの男がいた。マイクが銃を持ってきていないことを知ったひとりの男は彼を小バカにして、マイクを仲間からはずそうとする。マイクが彼を叩きつけて銃を奪うともう一人の男は怖くなって逃げ出してしまった。結局マイク一人がボディガードとして同行することに。雇い主の取引相手はナチョだった。ナチョが金を渡し、雇い主がブツを渡す。取引は簡単に終わった。雇い主が渡したのは、彼の勤務先で手に入れたクスリのようだった。

 

タイトルの「ピメント」はとうがらしの一種。マイクは別の大男から「何を持ってきた?」と尋ねられた時、「ピメントのサンドイッチ」と答えている。男は銃は何を持ってきたのか?と聞いたつもりだったので、この答えは予想外。これでマイクをみくびったために痛い目にあうことに。  

 

エピソード10 ( S1 E10)「マルコ (Marco)」

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ジミーはハワードのもとを訪れ、約束の弁護料の2万ドルを受け取る。一方、ジミーはハワードにチャックの買い物リストを手渡す。それを見たハワードはジミーがそれを一年以上も毎日続けていたことに驚いたようだった。彼はチャックの世話を見ると約束してくれる。

ジミーはキムに怒鳴ったことを謝り、サンドパイパーの資料を手渡した。そしてシセロへと向かい、懐かしいBARを訪れて悪友のマルコと再会する。第四話のオープニングで時計詐欺を一緒にやっていた男だ。彼は変わらずそこにいた。すぐに二人は昔のように息のあったところを見せ、夜な夜な常連でない客をだまして金を巻き上げることに興じる。しかし一週間もすると依頼人からのメッセージが届き始め、ジミーはマルコに別れを告げるが、マルコは最後にもう一回だけやろうとひかない。彼にとってジミーとの日々だけが人生で最も価値のある瞬間だったのだ。

時計を使った詐欺を決行する2人だったが、ジミーがカモを連れてやって来た時にはマルコは心臓発作かなにかで倒れたあとですでに息はなかった。

 

葬儀の日、キムから電話がかかってくる。大手法律事務所ディヴィス&メインと組むことになり、先方がジミーに興味を持っているという。数日後、キムに指定された場所に軽快な足取りで向うジミーの姿があった。が、彼は何を思ったか、すぐに引き返して約束の場所にはいかず、ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を口ずさんで車を走らせた。

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