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瀬戸かほの初プロデュース作品『きまぐれ』の公開がスタート!瀬戸かほと永岡俊幸監督のオフィシャルインタビューが到着

短編映画『きまぐれ』は、近年『クレマチスの窓辺』(永岡俊幸監督/2020年)、『この日々が凪いだら』(常間地裕監督/2021年)、『ストレージマン』(萬野達郎監督/2022 年)など、出演作が続く瀬戸かほの初プロデュース作品だ。主演と原案も瀬戸が務めている。

(C)八王子日本閣

家族の物語である本作は、瀬戸かほ内田周作石本径代櫻井成美が最後の家族旅行をする一家を演じ、二見悠ミネオショウが旅先の街で出会う人物を演じている。いずれも瀬戸が共演を熱望した豊かで個性的な俳優陣だ。監督と脚本を務めたのは、2022年に劇場公開された瀬戸かほ主演作『クレマチスの窓辺』以来のタッグとなった永岡俊幸
25分という短編映画ながら、色彩豊かな映像と個性的な登場人物たちが織り成す充実した作品に仕上がっている。

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映画『きまぐれ』は2024年3月15(金)より、シモキタ - エキマエ - シネマ『K2』にてロードショー。大阪・十三 シアターセブンでは4月6日(土)、7日(日)の限定公開、名古屋・シネマスコーレでは初夏の公開が予定されている。

 

このたび、出演・プロデューサー・原案を務めた瀬戸かほと監督・脚本を務めた永岡俊幸のオフィシャルインタビューが到着した。  

 

瀬戸かほ・永岡俊幸のオフィシャルインタビュー

(C)八王子日本閣

―まず初めに、制作のきっかけをお聞かせください。

瀬戸かほ(以下、瀬戸):2022年の秋、渡る世間は鬼ばかりにハマっていました。さまざまな問題が起こるけど、それでも共に生きていく家族っていいなあと思ったんです。実家に住んでいた頃は外にばかり目が向いていたのですが、いざ離れると家族を思う時間が増えた自覚もあって、家族の話を書いてみたくなり台本を書いたのがはじまりです。飽きっぽい自分が物語を一つ書き切れたことが嬉しくて満足してしまい、その後の展望は考えていなかったです。

永岡俊幸(以下、永岡):ちょうど同じ時期に、僕の監督作『クレマチスの窓辺』の全国順次公開をしていて、主演をされた瀬戸さんと舞台挨拶で各地の劇場にお邪魔していたんですが。その時に「私が書いた台本を永岡さんが監督で撮ってください」とお話がありました。撮影から3年掛かった『クレマチスの窓辺』の全国順次公開が一通り終わった後で疲れ切ってまして、なかなか即答できなかったんですが、もう次撮れないなあと思っていたところで、瀬戸さんに拾ってもらえたみたいな感じがしてありがたいなと思い、お受けしました。

瀬戸:永岡さんが作品作りをやめようとしていることがショックだったので、勢いでお声がけしました。ただ『きまぐれ』を形にしていく中で、映画を作ることの大変さを何度も痛感したので、あの時の永岡さんの気持ちが今は少しわかります。

 

―脚本はどういう形で執筆されたのでしょうか?

永岡:まず瀬戸さんが執筆された元の台本があって、瀬戸さんの方で何度か改稿していたのですが、ちょうど八王子ShortFilm映画祭という映画祭で製作費の助成をしてまして、その企画コンペに出そうとなったんです。それが、「出会い」「愛」「結婚」のいずれかをテーマにした作品という条件で、「じゃあ、その要素を全部入れてやろう」って僕がコンペ用にプロットを書いたんですが、それが通ったのでそれからは僕の方で改稿しました。元々瀬戸さんが書かれた4人家族の旅先での喧嘩の話という大枠を活かして、フラメンコ教室に行ったり、婚約者に瓜二つの男に偶然遭遇したり、みんなで山へ行ったりと、僕の方で足していきました。あとは予算やロケ地やキャスティングなどの準備状況に応じて改稿していった次第です。

瀬戸:プラスされた要素がいくつかあったのですが、フラメンコ教室は特にびっくりしました。自分が書いた台本がどんどん変わっていく様子に複雑な気持ちを抱える瞬間もありましたが、私一人じゃ辿りつけなかった場所へ永岡さんが連れて行ってくれたワクワクの方が大きくて、誰かと一緒にひとつの作品を作るのは面白いという結論に自分の中で至りました。

―「最後の家族旅行」ということでしたが、この家族を通して描きたかったことは何かありますか?

永岡:登場人物の会話の節々に「死」についての事柄をあまり大々的にではなく、さりげない形で入れようと思っていました。僕たちは日常で意識せずに「死」を話題に出します。特に家族との日常会話で多くて、年を重ねるごとに「誰かの死」や「自分の死」が出てくることが増えます。この作品は、登場人物たちがゆっくりと見えてくる自分や誰かの死を朧気ながら自覚し、この先どう生きようかと考え始める、人生における一瞬を描いているのではないかと思います。

 

―タイトルを『きまぐれ』にした経緯はどういったものだったのでしょうか?

永岡:瀬戸さんがタイトルは平仮名4文字にしたいということだったので、その条件で僕がいくつか候補をあげました。その中の一つが『きまぐれ』で、母と娘二人が街を彷徨うというプロットだったのでしっくり来ました。

瀬戸:4文字のタイトルが好きなんです。自分で作った写真集も以前作った映像も4文字に統一していたので、今回もそうしたいなと思って。『きまぐれ』が送られてきたとき、これしかないと思い即決しました。覚えやすくてかわいいですし、永岡さんらしいなと。

 

―永岡監督の作風についてお聞かせください。

瀬戸:私が思う永岡さんの作品の魅力は、軽やかさとかわいらしさの中に潜む毒っぽい部分。あとちょっと変なところ。堂々と自然に変と言ったらいいんでしょうか。登場人物たちはそれを普通にしているんだけど、おかしいというか。
私の原案やアイデアは勢いで勝負という感じで激しかったので、永岡さんと一緒に作ることでそれが中和されて、良い作品になるのではないかと考えていました。
完成した作品を観たとき、もちろん良い意味ですが、やっぱり変な作品だと感じました。一緒に作って良かったです。  

 

―今回、初めてプロデューサーをしてみて、映画製作についてどう感じましたか?また、俳優として出演する側と制作として関わる側の違いもあれば教えてください。 

瀬戸:初めて知ることの連続で、学ぶことがあまりにも多くてどんどん日々が過ぎていきました。いちばん驚いたのは決断する機会の多さですね。ひとつ選ぶごとに責任も一緒に背負う怖さも痛感しました。
ただ、今回プロデューサーの立場になったからこその発見もあったので、俳優活動に活かしていきたいです。
制作側と出演側どちらも携わって感じた違いは、作品への熱量はどの立場でも同じだけあるとして、その熱量を注ぐ期間と密度です。
今回は企画から上映まで作品とともに過ごしたので、作り手側の”作品に関わる期間の長さ”を、身をもって実感しています。2022年の秋から始まって、2024年いっぱいは関わる可能性があることを考えると、確かに長いですね...!ただ、関わる時間が長い分、『きまぐれ』への愛情が深まっていくのを感じています。

 

―キャスティングは瀬戸さんがされたということですが、今回のキャスティングの経緯をお聞かせください。

瀬戸:父役の内田さんは以前から友人で、一緒にガッツリとお芝居をしてみたいとずっと思っていたのです。石本さんは何度かご一緒する機会がありまして、前回は義理の母と娘の関係だったので、今回はグッと距離を縮めて母役でオファーしました。
次女・桜子を演じた櫻井さんは、初めて共演した日にビビッときて、いつかまた絶対ご一緒したかったので今回妹役で、ミネオさんと二見さんはそれぞれ方向性の異なる面白さが魅力で、絶対にこの世界に居てほしい!と思いご連絡しました。
このキャスティングしかありえないと企画段階から今に至るまで思い続けています」

永岡:本当に素敵な俳優のみなさんにご出演いただいたなと思いました。僕は基本的にあんまり演出のことをなるべく言わないようにして、みなさんに考えてきてもらったものを現場で観たいと思っています。今回現場でみなさんのお芝居を観ていてとても楽しかったです。

 

―永岡監督が撮影時に大変だったことや、思い入れのあるシーンを教えてください。

永岡:予算的にタイトなスケジュールだったので、1シーン1シーン撮影にあまり時間を掛けられず、演出や撮影のことなどの決定をすぐに出さなければならなかったことでしょうか。しかし、それはどの現場でも同じことです。思い入れのあるシーンについては、撮影スケジュールで一番最後にミネオショウさん演じる長女の婚約者のそっくりさんが出てくるシーンを撮影したんですが、その時のミネオさんのお芝居が面白くて、本番中声を出して笑わないようにスタッフみな我慢していました。みんな疲れているところに笑いを提供してくださいました。

瀬戸:笑わないようにするのが大変でした。

 

―最後に見どころをお聞かせください。

瀬戸:この旅は岩田家にとって、忘れられないものになったと思います。家族旅行の行き着く先を共に見届けていただけたら嬉しいです。

永岡:この映画の観方はいくつかあると思っています。父、母、娘たち、それぞれの視点から観るのもいいし、突っ放しておかしな家族そのものを観るのもいい。それぞれのちょっとした「きまぐれ」と、街で出会うちょっとした偶然は、日常を少し非日常にしてくれます。劇場でご覧いただくみなさんも一緒に、最後の家族旅行という、ほんの少しの非日常を楽しんでいただければ嬉しいです。

 

瀬戸かほ(Kaho Seto) 【プロデューサー・原案・脚本・主演 岩田桃子役】 
1993年11月11日生まれ。神奈川県出身。2015 年に映画『orange -オレンジ-』でデビュー。映画、舞台、ウェブドラマで女優として活躍し、ミュージックビデオへの出演も多数。映画『リビングの女王』では第6回賢島映画祭にて助演女優賞受賞。2022 年は『この日々が凪いだら』(常間地裕監督/2021 年)、『クレマチスの窓辺』(永岡俊幸監督/2020 年)、『神様のいるところ』(鈴木冴監督/2019 年)と三本の主演作が劇場公開。主な出演作に『ストレージマン』(萬野達郎監督/2022 年)、短編映画『empty』(中嶋駿介監督/2023年)


永岡俊幸(Toshiyuki Nagaoka) 【監督・脚本】
1989年生まれ、島根県出身。日本映画学校(現:日本映画大学)卒業後、映画やテレビドラマなどの助監督として活動。2015 年から短編映画の制作を始め、2018 年制作の『オーロラ・グローリー』は、きりゅう映画祭、日本芸術センター映像グランプリなどで入選。2022 年、地元島根で撮影した『クレマチスの窓辺』で劇場デビューし、全国順次公開されている。その他、主な監督作に短編『つめたいあかり』がある。