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【2023年12月公開】モノクロームの世界観が観る者を異世界へと誘う、新感覚の日本映画『ホゾを咬む』/脚本・監督・編集の髙橋栄一オフィシャルインタビューが到着!

ある日、普段とは全く違う恰好の妻を街で見かけた夫は家に隠しカメラを設置し・・・。

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「後悔する」という意味のことわざ「を噛む」からタイトルをとった本作『ホゾを咬む』は、短編映画『サッドカラー』がPFFアワード2023に入選するなど、国内映画祭で高い評価を受けている新進気鋭の映像作家・髙橋栄一脚本・監督の最新長編映画だ。

 

主人公のハジメ役を『MAD CATS』(2022/津野励木監督) 、『クレマチスの窓辺』(2022/永岡俊幸監督)、『とおいらいめい』(2022/大橋隆行監督)などのミネオショウが務め、映画デビュー作「少女 an adolescent」で国際的にも評価されて以降、活躍を続ける小沢まゆがヒロインのミツ役を演じているほか、プロデューサーも務めている。

 

映画『ホゾを咬む』は12月2日(土)より新宿K’s cinema、12月15日(金)より池袋HUMAXシネマズ他にて全国順次公開される。

 

この度、公開を前に、脚本・監督・編集の高橋栄一のオフィシャルインタビューが到着した。

 

脚本・監督・編集:髙橋栄一プロフィール

岐阜県出身。平成2年生まれ。
建築・ファッションを学んだ後に塚本晋也監督作品『葉桜と魔笛』(2010)、『KOTOKO』(2011)に助監督として参加。
監督作品に『華やぎの時間』(2016)京都国際映画祭2016 C・F部門入選、SSFF & ASIA2017 ジャパン部門入選 /ベストアクトレス賞受賞、『眼鏡と空き巣』(2019)SeishoCinemaFes入選、『MARIANDHI』(2020)うえだ城下町映画祭 第18回自主制作映画コンテスト入選、『さらりどろり』(2020)SSFF & ASIA 2021 ネオ・ジャパン部門入選、『鋭いプロポーズ』(2021) 福井駅前短編映画祭2021優秀賞受賞、『言ってくれよ』(2022)つんく♂総監修 中2映画プロジェクト等がある。
最新短編映画『サッドカラー』(2022)がPFFアワード2023に入選するなど、独特の感性が評価されている。

 

髙橋栄一監督オフィシャルインタビュー 

高橋栄一監督 (C)2023 second cocoon

──本作のテーマを思いついたきっかけを教えてください。

髙橋栄一監督(以下、髙橋):生活のなかで関係を持つ人達について、自分が見ている像とその人の実像のズレみたいなものを日頃から感じていました。そのズレに気づくきっかけが、ASD(自閉症スペクトラム症)のグレーゾーンという診断でした。それまでは、絶対解みたいなものがあると思っていたけれど、どうやらそれがないということに気がついて、だとすれば日頃から関係を持っている人達ですら、真に理解しあうことはないのだと思いました。自分に見えている像は永遠にその対象となる人と重ならない、誰ともつながっていない孤独感。この解消されない孤独のなかで人と関係を持つことはどういうことなのかを考えはじめ、それが本作のテーマにつながっていきました。
テーマを深化させていく上で重要な要素となったのは欲動です。(木村知貴演じる主人公の同僚・月見里が話す)「汗と日焼け止めの匂いが混ざったのがたまらない」というのは僕自身がふと夏に感じた欲動でした。自分の中にいままで知らなかった欲動を発見することは、その対象となる人との新たな関係性を一方的に創造する。欲動は、どうせつながることのない孤独関係の中を生き進む手綱なのではないかと思うのです。主人公が監視カメラというフィルターをとおして妻を見つめるというこの物語には、孤独と純粋な欲動が根底にあります。これはもしかすると、「愛」なのかもしれないと思うのです。

 

──主人公のハジメがASDという設定なのかと思って観たら、妻の浮気を疑って監視カメラを買ってしまうなど、ハジメの行動は理解できる行動で、ハジメの客の夫婦などの方がコミュニケーション能力がないというか、変わっていました。彼らは、企画意図にあった、「僕が理解していると思って接していた(周りの人)は、僕が理解も出来ず間違って作り出していたツクリモノで、そのツクリモノしかいない世界で生きていたんだと思わされました。」のツクリモノということなのでしょうか?主人公はASDという設定なんですか?

髙橋特にそういう設定はしていなかったです。登場人物の理解できない部分は何なのかというところで言うと、ハジメ以外は生きていることを楽しんでいるんです。僕は実生活で楽しいという感覚がよくわからなくて、「楽しんでいる」と言っている人たちが嘘だと感じることがあるんです。「それが楽しいんだったら、僕も味わいたいし、経験したい」とチャレンジするんですけれど、楽しくはない。ツクリモノの人たち、理解できない世界の人たちという感覚です。「人の気持ちがわからない」とは違うと思っていますけど。

 

──一卵性双子のフクリ・シッタの設定はどう考えたのでしょうか?

髙橋:人との関係にまつわる本作において、卵子という絶対的な根本を共有している双子という存在は特別です。現実世界において考えてみても、双子には自分たちの中だけの言語観があるように思います。双子がもつ特殊なムードを、この作品では主人公が監視生活の入り口に置いています。阿吽像や狛犬のように。

 

──牧田夫妻はどういう設定ですか?

髙橋:なにかで成功してすごくお金を持っているセレブのような設定です。そういう生活を送る人たちには、僕には理解できない時間の流れや理屈を感じます。
昔、唐揚げ屋でバイトしていた時に、全身緑色の服を着たマダムが来て、いきなり「あんたはこんなところで働いていていいのか?」と説教されたことがありました。もう顔も覚えていないけど、あのアダムが牧田夫妻になったと思います。

 

──冒頭の夢のシーンやコゾウはどういう設定ですか?

髙橋:あれは、お盆の集まりというイメージでした。あの夫婦が結婚して12〜13年経っているという設定なんですけれど、コゾウは、その中で生まれるはずだった子供、水子というような設定です。
ハジメとミツが本来だったら作りたかった子供ができていたら、この二人は「子供がいる家庭」として、違う関係性が築けていただろうけれど、それができなかったということで、ハジメが感じている罪悪感が悪夢という形になっています。形にならなかった子供たちのお盆とう感じです。
本作は、妻への惚れ直しというか、自分の見ていた妻と違った、自分の中の妻像を作り直すまでの話なんですけれど、その中で、同じ対象に違う新しい魅力を発見するということは、自分の中にそれを良しとする感性を発見するということだと思うので、電話でコゾウが言ってくるのは、自分の知らないシワやシミを発見することと同じというか、それを想起させるためです。ホクロというのは、妻への新しい欲動という意味合いです。

 

──コゾウは、夏のシーンなのに飛行帽を被っていたりとルックからして面白いですが、アイデアはどこから来たのですか?

髙橋:男の子が好きなものを身につけるというわんぱくさを入れたかったです。スタイリストに、「土着的なものなどごちゃごちゃなものをつけたい」と伝えました。植芝理一さんの『ディスコミュニケーション』からの影響も大きいです。コゾウには風俗的なものを感じさせたかったんです。
その結果使用した飛行帽から、音響効果の小川(武)さんのアイデアで、コゾウの登場シーンにはすべて飛行艇のような音を付けています。

 

──モノクロにした理由はどこにありますか?

髙橋:元々はカラーで撮影したんですが、カメラマンの西村(博光)さんが、ラッシュを観た時に、「モノクロにした方がいいんじゃないか」とおっしゃって、そこから変えていきました。脚本は約1時間分だったんですけれど、撮った映像を繋げてみたら2時間半でした。演出をつけていく中で、かなり間を使っていったからです。言葉や人の動きを記号にしていって、記号が動いているのを観て何を感じるかというのを突き詰めていきました。色を含め情報が多いと、そこに集中できなくなってしまう部分もあったので、モノクロを提案されてやってみたところ、演出でしようと思っていたことがさらにフォーカスされたので、確かにモノクロはいいなと思いました。

 

──撮影監督の西村博光さんは、武正晴監督作品に数多く参加していてお忙しい方かと思いますが、どのような経緯で本作への参加が決まったんですか?

髙橋:僕は塚本晋也監督のところにいたので、元々は自分で全部やるというやり方をしていました。今回は別の方とやってみたいと思ったんですが、どうせなら、何か自分には届かないようなレベルの方とやりたいと、プロデューサーの小沢(まゆ)さんにスタッフィングをお願いしました。小沢(まゆ)さんのデビュー作『少女〜an adolescent』からのお知り合いだった西村(博光)さんにお声がけいただいて、ありがたく本作に参加していただきました。

 

──ミネオショウさんを主人公・ハジメ役に起用した理由をお教えください。

髙橋:ハジメ役にはどこまでも普通で、そのなかでなにか特殊性を感じる方を探していました。ミネオさんはまさにそうで、普通なムードのなかで独特な目を持っていたのでお願いしました。

 

──ミネオショウさんとご一緒していかがでしたか?

髙橋:読み合わせとリハは2日かけてたっぷりやらせてもらったんですが、撮影初日は、布団から起き上がって扇風機を消すだけのシーンの撮影で、「もっと時間を使って」と伝えて何度もやってもらいました。あのシーンは、撮影スケジュールでは30分くらいしか取っていなかったんですけれど、1時間半ぐらいずっとやっていました。そのお蔭でトーンを掴んでいただき、その中でやれるお芝居の微妙な振れ幅をされていました。僕は「抑えて、抑えて」と言っていたんですが、ミネオさんが振れ幅なしでやっていたとしたら、何も伝わらない映画になっていたのだろうと思うと、ミネオさんが攻めてくださって、ありがたかったです。初日で作ったトーンをその後の撮影に持っていってくれたので、共演された方たちにもこの作品ややりたいトーンが伝わり、とても頼もしく思いました。そういうベースができた状態だったので、細かい演出に集中することができたありがたい現場でした。

 

──妻・ミツ役の小沢まゆさんは役者としてご一緒していかがでしたか?

髙橋:ご一緒するのは3回目でした。他の出演作も観ているので、天邪鬼ではないですけれど、今までの出演作とは違う小沢さんの魅力を出したいと考えていました。小沢さんにはクールで都会的な印象があったんですが、一緒に企画を進めていくうちに、熊本県出身ということもあってか、南の方のゆったりとした時間の流れの雰囲気を感じる部分があることに気が付きました。この魅力を活かせるキャラクターとしてミツを作っていきました。現場では座り方を変えてみたり、セリフの投げ方を微調整してみたり、ほっぺたを膨らませてみたりと、僕の中のミツ像を作り上げるうえで細かい部分までお付き合いしてもらいました。ただその中で、小沢さんは自分の中でのミツ像があったんじゃないかと思います。それがミツのとらえきれない雰囲気につながったんじゃないかなと思っています。

 

── 音楽をI.P.Uさんにお願いした理由をお教えください。

髙橋:I.P.U.さんは現場に入る直前に知り合いました。電子音の音楽をつけたかったので、たまたまいい出会いをしました。音楽だけではなく服やアクセサリーもデザインされていて、抽象的な感覚を具象化する力と強い自身のカラーを持っている方でした。

 

── 本作をどのように観てほしいですか?

髙橋:あまりお話を追わずに、独特なトーン・間をだらだらと感じてほしいなと思います。音などで気を散らせるように作っているので、「話がわからない」と止まらずに、その時に感じた音だとかを感じてもらえればと思います。

 

── 読者にメッセージをお願いします。

髙橋:撮影の西村さんや整音の小川(武)さんにしていただいたお仕事は、映画館でないと感じきれない部分が大きいと思います。過度なセリフや過度なワードがない、ミニマムな作品なので、映画館のように情報が遮断された状態で観て頂きたいです。

 

映画『ホゾを咬む』あらすじ

(C)2023 second cocoon

不動産会社に勤める茂木ハジメは結婚して数年になる妻のミツと二人暮らしで子供はいない。
ある日ハジメは仕事中に普段とは全く違う格好のミツを街で見かける。帰宅後聞いてみるとミツは一日外出していないと言う。
ミツへの疑念や行動を掴めないことへの苛立ちから、ハジメは家に隠しカメラを設置する。
自分の欲望に真っ直ぐな同僚、職場に現れた風変わりな双子の客など、周囲の人たちによってハジメの心は掻き乱されながらも、自身の監視行動を肯定していく。
ある日、ミツの真相を確かめるべく尾行しようとすると、見知らぬ少年が現れてハジメに付いて来る。そしてついにミツらしき女性が誰かと会う様子を目撃したハジメは...。

 

映画『ホゾを咬む』作品情報

(C)2023 second cocoon

2023年/日本/4:3/モノクロ/108分/DCP/5.1ch
脚本・監督・編集:髙橋栄一 プロデューサー:小沢まゆ 撮影監督:⻄村博光(JSC) 録音:寒川聖美 美術:中込初音  スタイリスト:タカハシハルカ ヘアメイク:草替哉夢  助監督・制作:望月亮佑 撮影照明助手:三塚俊輔  美術助手:塚本侑紀、菅井洋佑  制作助手:鈴木拳斗  撮影応援:岡上亮輔、濵田耕司、小野寺光、⻑島貫太、秋田三美、小沼美月 音楽:I.P.U 整音・音響効果:小川武  楽曲提供:小川洋 劇中絵画:「生えている」HASE.  宣伝デザイン:菊池仁、田中雅枝 本編タイトルデザイン:山森亜沙美  宣伝写真:moco DCPマスタリング:曽根真弘 製作・配給:second cocoon  配給協力:Cinemago 海外セールス:Third Window Films 文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業
出演:ミネオショウ、小沢まゆ
木村知貴、河屋秀俊、福永煌、ミサ リサ、富士たくや、森田舜、三木美加子、荒岡龍星、河野通晃、I.P.U、菅井玲

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