昨年(2022年)8月に亡くなった小林政広監督を偲んで、小林氏の命日である8月20日をはさんだ2023年8月19日(土)〜25日(金)の期間、大阪、シネ・ヌーヴォにて一周忌追悼特集が開催される。
小林政広監督は、1996年『CLOSING TIME』で監督デビューを果たし、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で日本人初のグランプリを受賞。1999年『海賊版=BOOTLEG FILM』、2000年『KOROSHI/殺し』、2001年『歩く、人』と、3年連続でカンヌ国際映画祭に出品し大きな注目を集め、2005年の作品『バッシング』はカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品後、東京フィルメックス最高賞を受賞。
2007年の『愛の予感』はスイス・ロカルノ国際映画祭で最高賞の金豹賞をはじめ4部門で受賞するなど、国内外で高い評価を受けて来た監督だ。
以後も、2010年『春との旅』、2013年『日本の悲劇』、2017年『海辺のリア』など日本社会の問題や「老い」などをテーマにした社会派作品を多数発表。生涯の大半の作品が自主制作映画であり、困難な財政状態の中、それでも作りたい映画をただ作り続け、まさに孤高に生きた稀有な映画監督だった。
シネ・ヌーヴォはこれまで、『CLOSING TIME』から『バッシング』『愛の予感』など小林作品の多くを大阪ロードショーしており、また、2013年に第14回全州(チョンジュ)国際映画祭(韓国)のデジタルプロジェクト「三人三色」の一本として制作された『逢う時は他人 STRANGERS WHEN WE MEET』はシネ・ヌーヴォを舞台にして撮影されるなど、小林監督ゆかりの映画館だ。
今回の特集上映では、遺作となった『海辺のリア』(2017年)を含む貴重な5作品が追悼上映される。また、8月20日(日)にはゲストを招き、トークショーが予定されている。
「一周忌追悼特集 映画監督・小林政広」開催情報
開催時期/023年8月19日(土)〜25日(金)
開催場所/シネ・ヌーヴォ(大阪・九条) 電話06-6582-1416
大阪メトロ中央線・阪神なんば線「九条駅」徒歩3分(大阪市西区九条1-20-24)
主催=シネ・ヌーヴォ 、日本映画大回顧展上映実行委員会
●料金=一般1,500円、シニア1,200円、学生・会員1,100円、前売券1,100円、会員1,000円
<トークショー開催>
★8/20(日)ゲスト:大力拓哉さん(映画監督) 三浦崇志さん(映画監督)
※12:55〜『春との旅』上映後
上映作品情報
『完全なる飼育 女理髪師の恋』
2003年/セディックインターナショナル/103分/35mm
監督・脚本:小林政広 原作:松田美智子 撮影:高間賢治 音楽:佐久間順平 主題歌:りりィ「時の過ぎゆくままに」
出演:北村一輝、荻野目慶子、竹中直人、佐藤二朗、林泰文、中澤寛
第56回ロカルノ国際映画祭特別大賞を受賞した隠れた傑作
『フリック』
2004年/エスミー/154分/デジタル
監督・脚本:小林政広 撮影:伊藤潔 音楽:佐久間順平 照明:木村匡博
出演:香川照之、田辺誠一、大塚寧々、田中隆三、松田賢二、安藤希、占部房子、葉月螢、高田渡
◆北海道苫小牧を舞台に、不可解な事件に巻き込まれていく一人の刑事の不確かな運命を描いた異色サスペンス。
『白夜』
2009年/「白夜」製作委員会/84分/35mm
監督・脚本:小林政広 撮影:伊藤潔 音楽:佐久間順平 照明:木村匡博 録音:吉田憲義 編集:金子尚樹
「いつか、リュミエール兄弟の映画のような、小さくても宝石のような輝きのある作品を作りたい」と願った小林がオール・リヨンロケで撮影したラブストーリー。
『春との旅』
2010年/「春との旅」フィルムパートナーズ/134分/35mm
監督・脚本:小林政広 撮影監督:高間賢治 音楽:佐久間順平 美術:山﨑輝 照明:上保正道
出演:仲代達矢、徳永えり、大滝秀治、菅井きん、淡島千景、田中裕子、小林薫、柄本明、香川照之、戸田菜穂
日本映画を代表する俳優たちが結集した小林監督最大のヒット作
『海辺のリア』
2016年/「海辺のリア」製作委員会/105分/DCP
監督・脚本:小林政広 撮影:神戸千木、古屋幸一 音楽:佐久間順平 美術:鈴木隆之
シェイクスピアの「リア王」を下敷きに「老い」と日本の高齢化社会の問題をテーマにした小林監督の遺作。