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映画『ハマのドン』あらすじ・感想/カジノ誘致問題で権力の暴走に警鐘を鳴らす“ハマのドン”こと藤木幸夫を追ったドキュメンタリー映画

映画『ハマのドン』は2023年5月5日(金・祝)より新宿ピカデリーユーロスペースなんばパークスシネマ、MOVIX堺 5月6日(土)より第七藝術劇場、5月19日(金)より京都シネマ、5月20日(土)より元町映画館ほかにて全国順次公開!

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カジノ誘致問題に揺れた2021年の横浜市長選。反対派の急先鋒に立ったのは地元の港湾事業者の元締め的存在で「ハマのドン」の異名を持つ藤木幸夫だった。

 

映画『ハマのドン』は、横浜港・山下埠頭へのカジノ誘致を推し進めた当時の政権に反旗を翻し、権力の暴走に警鐘を鳴らす藤木幸夫の姿を追ったドキュメンタリー映画だ。

 

監督を務めたのは、テレビ朝日の「報道ステーション」でチーフプロデューサーを務めた松原文枝

テレメンタリー」の江口英明と「民教協」の雪竹弘一がプロデューサーを務め、リリー・フランキーがナレーションを担当している。  

 

目次

 

映画『ハマのドン』作品情報

(C)テレビ朝日

2023年製作/100分/日本映画/

監督:松原文枝 プロデューサー:江口英明(テレメンタリー)、雪竹弘一(民教協) ナレーション:リリー・フランキー

出演:藤木幸夫

 

映画『ハマのドン』あらすじ

(C)テレビ朝日

2018年、「IR実施法」が制定されたことにより世界のカジノ事業者が日本に乗り込んできた。

 

ラスベガス・サンズ」CEOでカジノ王と呼ばれるアデルソンは、1兆円という巨額の投資額を掲げ日本進出を目論んでいた。アデルソンは、トランプと安倍の首脳会談の前に開かれた朝食会にも出席している。ターゲットは横浜港の山下埠頭。藤木が長年仕切ってきた現場だ。

 

白紙であるとこれまで態度を曖昧にしてきた横浜市長の林文子もカジノ誘致に向けて動き出した。地元経済界は両手を挙げて賛成したが、市民の多くは反対。

 

当初、藤木は賛成派だった。市の財政が著しくよくなると聞かされていたからだ。

しかし、政府が横浜に引き入れようとしているのが欧米のカジノ業者であることを知った藤木は、カジノを巡る様々な問題を検討し、反対へと転じる。

港の苦難の歴史を知り、博打が行われていた時代を知り尽くしているからこその反対だった。

 

身体を張った勝負師の行動は、多くの市民、自民党の長老、カジノ側の人物までも動かす。カジノ関係者からは、鳴り物入りで開設した世界のカジノの驚愕の実態が明かされる。

 

一方、横浜市民のカジノ反対の動きは燎原の火のごとく広がっていた。コロナ禍の中で、市民は住民投票を求めて法定数の3倍を超える19万超の署名を集めていた。だが、その声は市議会に届かず、横浜市長選に持ち込まれる。

藤木は無名の新人を押し立て、現職市長、そして、菅側近の現職閣僚を相手に真っ向から勝負を挑むことになった・・・。  

 

映画『ハマのドン』の感想・評価

(C)テレビ朝日

藤木幸夫は、横浜港で「藤木組」を旗揚げした先代・幸太郎のあとを継ぎ、長年、港湾事業者の元締的な役割を果たしてきた人物だ。

 

財界に顔が効き、歴代総理や自民党幹部とも懇意な上に、田岡一雄・山口組三代目組長ともつながりがある人脈の広さで「ハマのドン」と呼ばれている。

 

本作はそんな彼の半生と、また、港湾労働者の苦難の歴史を当時のフィルムをまじえて紹介しながら、この保守の重鎮である人物が、「カジノ」反対に転じ、市民と手を取り合い、最高権力者に立ち向かう姿を描いている。

 

かつて海で亡くなった人々、博打で身を崩した人々を見てきた彼が、義理、人情、恩返しを説く、その言葉には誠実さがこもっている。

 

選挙で勝てば民意を得たりと強引に法案を推し進める時の権力者たちの態度とは対照的だ。

 

育ての親の藤木幸夫に対する菅義偉の謙虚さに欠ける態度や、当時の横浜市長・林文子の市民への説明をおざなりにする会見風景など、映画は的確にその様子を映し出している  

 

映画ファンとしてはこれはまるで沖仲仕を主人公にした高倉健の侠客映画の構図ではないかとついつい思ってしまったのだが、藤木の父親、幸太郎は「藤木組」をまとめる際に、ヤクザとは縁を切ったという事情も劇中で語られている。

 

本作はまた、住民投票を求めて法定数の3倍を超える19万超の署名を集めながらも否決され、山中竹春の選挙運動に奔走する横浜市民の姿も紹介されている。

 

そんな市民と「ハマのドン」が共闘した選挙の結果を私たちは既に知っているわけだけれど映画はすこぶる面白い。

 

謙虚さに欠け市民、国民に不誠実極まりない今の政治に対して、民意を示すための大きなヒントがここにはある。

 

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