会社員として日々働きながら、短編・中編作品を制作し続ける映画監督・田中晴菜。
「生人形」を題材とした『いきうつし』(2018)が「あいち国際女性映画祭」および「Kishhh-Kishhhhh映画祭」の短編部門でそれぞれグランプリを受賞、傘を通じて人々の記憶が交わる様を描いた『ぬけがら』(2020)が第38回トリノ映画祭国際短編コンペティション部門にノミネートされるなど、国内外の映画祭で高い評価を受けている。
映画制作に不可欠ながらも、現代の映画界では多くの人々が見失いがちな「人々の記憶・心・世界を拾い集める」という行為を、誰よりも誠実に続けている田中監督。
彼女が手がけてきた作品たちが描いているのは、かつての日本映画が映し出してきた「人の気配」そのものだ。
このたび、2024年5月18日(土)~24日(金)の一週間、映画監督・田中晴菜とその作品の魅力に迫る「幸福な装置- 田中晴菜監督特集上映 -」の池袋シネマ・ロサでのレイトショー開催が決定!
あわせて予告編が到着した。
特集上映ではオスカー・ワイルド作『幸福な王子』から着想を得て制作された最新作にして、今回が初の劇場公開となる『幸福な装置』(2024)など計5作品を上映。いずれの作品も「失われたもの/失われていくもの」を描くことで、今を生きることの意味を観る者に語りかけてくる「映画」そのものの映画となっている。
「幸福な装置- 田中晴菜監督特集上映 -」上映作品&作品情報
『いきうつし』(2018年/日本/30分/カラー)
キャスト:岡慶悟 笠原千尋
撮影・照明:岡田翔 助監督:望月亜実 衣装・ヘアメイク:竹本磨理子(Anita Hair Make Office)
【あらすじ】仏師として立ち行かず、見世物小屋の生人形制作で糊口をしのぐ亀八。興行で立ち寄った土地の名士から、不治の病におかされた娘を美しいまま写した人形制作を依頼される。一度も家の外に出たことのない椿と、興行で土地を転々とする亀八、二人は次第に惹かれ合うが、人形の完成が近づくにつれ、椿の身体は動かなくなっていく。
『ぬけがら』(2020年/日本/15分/カラー)
キャスト:長谷川葉生、田中一平、岡慶悟、中島颯一朗
撮影:岡田翔 照明:田中銀蔵 録音:岩瀬航 助監督:望月亜実 美術・小道具:吉岡晶
撮影照明助手:野中慎二、貝田祐介
【あらすじ】何かの気配を感じて目覚めた朝、ひばりは庭で蛇のぬけがらを見つける。ひばりの時間はある日から止まったまま、戻りゆく日常を受け入れられずにいた。夫が玄関先に置いて行った弁当を持って家を出るひばり、やがて雨が降り出す。煙草屋の軒先で雨宿りをしていた太一は、ひばりに借りた黄色い傘を媒介に、白昼夢を見る。
『Shall we love you?』(2022年/日本/ 7分/カラー)
キャスト:森川錦、今城沙耶、西田奈未
撮影・録音・整音:中島浩一 カラリスト・スチール:曽根真弘 音楽:蓑地理一 撮影協力:栃木県立佐野東高等学校
【あらすじ】放課後、高校の体育館の隅に集まる演劇部の真琴、悠、芽依は、オスカー・ワイルド作「The Happy Prince(幸福な王子)」を翻訳、舞台化しようとしている。3人は各々翻訳してきた台本の読み合わせをしながら、幸せとは何か考える。
『甘露』(2023年/日本/11分/カラー)
キャスト:岡慶悟、田中一平
撮影・録音・整音:中島浩一 カラリスト:曽根真弘 音楽:蓑地理一
【あらすじ】亡くなった祖父が営んでいた駄菓子屋兼住居を取り壊すことになり、遺品整理をしている秋元大吾のもとに、滅多に実家にも帰って来ない弟の秋元蒼馬が帰ってくる。緊急事態宣言期間中に行われた祖父の葬儀にも蒼馬は参列せず、二人の間には隔たりがあった。蒼馬が幼い頃、店の売り物のカンロを勝手に食べた際、代金が払えない代わりに祖父に渡した「何か」を探している最中、東京にいる蒼馬から電話がかかってくる。
『幸福な装置』(2024年/日本/25分/カラー)
キャスト:星能豊、岡慶悟、清水みさと
撮影・録音・整音:中島浩一 音楽:MUSIC for ISOLATION
【あらすじ】生きものがまるっきりいなくなって、千年ほど経った星に残された一体のAI。人の心の恐れや痛みを和らげ、祈るために神の似姿として作られた彼は、渡りの途中に立ち寄ったつばめ(スパイ用に作られた長距離高速移動型AI)に出会ったことで、初めて自らの心の輪郭を感じ始める。つばめが去った後、身体を失い、思考回路のある心臓部だけの「小石」のような見た目になっても、彼は過去の記録を反芻し思考し稼働を続けていた。ある日その傍らに、生きている何者かが内包された、生命維持装置カプセル「棺桶」が落ちてくる。
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