在宅医として 2500 人以上の看取りを経験してきた医師で作家の長尾和宏による同名小説が原作の映画『安楽死特区』が2026年1月23日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開される。
映画『安楽死特区』は、近未来の日本で「安楽死法案」が可決され、国家主導で導入された制度のもと、人間の尊厳、生と死、そして愛を問う衝撃の社会派ドラマだ。

監督を務めたのは、『痛くない死に方』(2020)、『夜明けまでバス停で』(2022)、『「桐島です」』(2025)などの作品で知られる高橋伴明。今年7月に公開された『「桐島です」』は、メイン館の新宿武蔵野館で 13 週のロングランヒットを記録し、第 80 回毎日映画コンクールで、日本映画大賞、毎熊克哉(主演俳優賞)、梶原阿貴、高橋伴明(脚本賞)、内田勘太郎(音楽賞)の 4 部門にノミネートされた。
『野獣死すべし』(1980)、『一度も撃ってません』(2020)などの丸山昇一が脚本を担当し、『「桐島です」』(2025)の毎熊克哉が主人公の章太郎役を、『夜明けまでバス停で』の大西礼芳が、パートナー・歩役を演じている。
難病を患い、余命半年と宣告された章太郎と歩は、安楽死法に反発し、特区の実態を内部から告発することを目的に、国家戦略特区「安楽死特区」に入居するが・・・。
このたび、公開を前に、高橋伴明監督のオフィシャルインタビューが到着した。
高橋伴明監督オフィシャルインタビュー

――『安楽死特区』の企画の成り立ちを教えてください。
高橋伴明監督(以下、高橋):本作の製作総指揮でもある⻑尾和宏さんの原作の映画化は『痛くない死に方』(2020 年)で手がけていますが、2023 年夏頃に⻑尾さんから「小説を読んでほしい」と言われました。最初はほかの監督で進める構想だったようで、それはそれで「いいんじゃない」と思っていました(笑)。
ところが「やっぱり監督してほしい」と言われ、真剣に考えるようになりました。こういう深いテーマにはベテランの脚本家が適任だと感じ、丸山昇一さんに連絡すると「ぜひやりたい」と言ってくれ、脚本は比較的早く仕上がってきました。
――『「桐島です」』に続く毎熊克哉さんとのタッグになりました。
高橋:毎熊さんはもともと監督志望だったこともあり、映画をよく理解している俳優です。細かく説明しなくても意図をすぐに察してくれる。『「桐島です」』の現場でも演出意図を深く理解してくれていたので、彼以外には考えられませんでした。当初は両作品とも彼のスケジュールが合わず諦めかけましたが、運よく予定が合ったので、すぐにお願いしました。
――安楽死は国論を二分する大きなテーマです。監督自身はどう感じていたんですか。そして撮影後に変化はありましたか?
高橋:最初は無条件に賛成の立場でした。自由になるなら自分で死を選べるほうが良いと思っていたからです。フランスの映画監督ジャン=リュック・ゴダールも 2022 年にスイスで安楽死を選びましたが、その選択はまさに私も同じ状況なら選んでいたと思います。
ただ、撮影を経て周囲の人の思いを考えるようになり、その気持ちを尊重しながら進めるべきだと感じるようになりました。
――原作ではアルツハイマー型認知症と診断された女流作家、安楽死特区の主治医、末期がんで特区第 1 号を宣言する東京都知事らの選択が交錯しますが、映画では大きく設定を変えています。回復の見込みがない難病を患っている章太郎をラッパーにした理由は?
高橋:安楽死という大きなテーマに対抗するには、自分の言葉を持っている人物でないと説得力がないと考えました。特命医との面接のシーンは死の厳粛さと同時に祭事的な要素も感じられるため、ラップバトルという形を取り入れました。難しい役どころでしたが、毎熊さんは頭が良く、見事に演じきってくれました。

――本作には伴明組の常連も多く出演しています。『赤い玉、』『痛くない死に方』の奥田瑛二さんが医師役を演じていますが、関⻄弁を話す設定は⻑尾さんをモデルにしたのでしょうか。
高橋:奥田さんの役は⻑尾さんをモデルにし、『痛くない死に方』からの流れをつなげました。同作からは余貴美子さんにも出演いただきました。余さんが三味線をやっていることは知っていたので、友近さんとの共演は面白くなると考えました。
――劇中には、晩年に自ら命を絶つ選択を公にし議論を呼んだ評論家・⻄部邁さんの話も登場します。
高橋:入水自殺をし(て、手が不自由な⻄部さんの自殺幇助をした 2 人は懲役 2 年、執行猶予 3 年の有罪判決となっ)た⻄部さんの壮絶さは、安楽死問題を描くうえで欠かせないと考えました。一度は外すことも考えましたが、意思を行動に移した生き様を残しておきたかったのです。
――観客にはどう受け止めてほしいですか?
高橋:安楽死は人間の尊厳の問題だと思います。その部分が明確にならないと答えは出せません。本人が勝手に決められることではなく、しかし、家族の意思を優先すべきものでもない。日本でも、もっと議論する場所を設けるべきだと思います。
監督:高橋伴明 Takahashi Banmei
1949年5月10日生まれ。奈良県出身。1972年『婦女暴行脱走犯』で監督デビュー。以後、若松プロダクションに参加。60本以上のピンク映画を監督。『TATTOO〈刺青〉あり』(82/主演:宇崎竜童)でヨコハマ映画祭監督賞を受賞。以来、脚本・演出・プロデュースと幅広く活躍。『愛の新世界』(94/主演:鈴木砂羽)でおおさか映画祭監督賞を受賞し、ロッテルダム映画祭で上映された。
主な監督作品は『光の雨』(01/主演:萩原聖人)、『火火』(04/主演:田中裕子)、『丘を越えて』(08/主演:西田敏行)、『禅 ZEN』(08/主演:中村勘太郎)、『BOX 袴田事件 命とは』(10/主演:萩原聖人)、『赤い玉、』(15/主演:奥田瑛二)、『痛くない死に方』(20/主演:柄本佑)、『「桐島です」』(25/主演:毎熊克哉)など。『夜明けまでバス停で』(22)は第 96 回キネマ旬報ベスト・テンで日本映画監督賞を始め多数の賞に輝く。
映画『安楽死特区』あらすじ
もしも日本で「安楽死法案」が可決されたら――。国会で「安楽死法案」が可決され、国家戦略特区として「ヒトリシズカ」と名づけられた施設が誕生。安楽死を希望する者が入居し、ケアを受けられるこの施設は、倫理と政治の最前線で物議を醸す存在となっていた。
若年性パーキンソン病を患うラッパー・酒匂章太郎(毎熊克哉)は、進行する病に苦しみながらも、ヒップホップに救いを見出し、言葉を紡ぎ続けていた。共に暮らすのは、チベットで出会ったジャーナリスト・藤岡歩(大⻄礼芳)。二人は、章太郎が余命半年を宣告された今も、安楽死に反対で、特区の実態を内部から告発することを目的に、「ヒトリシズカ」に入居する。
施設には、末期がんに苦しむ池田(平田満)とその妻の玉美(筒井真理子)、認知症を抱え、完全に呆けないうちに死なせて欲しいと願う元漫才師の真矢(余貴美子)など、それぞれに事情を抱えた入居者たちが暮らしていた。
章太郎の身体は急速に衰え、言葉さえままならなくなり、章太郎は歩に相談もなく、「安楽死を望みます」と考えを一変。歩は、池田の主治医の鳥居(奥田瑛二)の他、章太郎の主治医の尾形(加藤雅也)、三浦(板谷由夏)ら特命医それぞれの想いにも触れ、命と死に真摯に向き合うことを迫られる。
☟長尾和宏による原作『安楽死特区』はこちら。
映画『安楽死特区』作品情報

2025年製作/日本映画/カラー/シネマスコープ/5.1ch/日本語/129min
監督 高橋伴明 原作:⻑尾和宏 小説「安楽死特区」ブックマン社刊 脚本:丸山昇一 製作総指揮:⻑尾和宏 製作:小林良二 プロデューサー:小宮亜里、高橋惠子 音楽:林祐介 撮影監督:林淳一郎 撮影:⻄村博光 照明:豊見山明⻑ 録音:臼井勝 美術:黑瀧きみえ 装飾:鈴村髙正、島村篤史 ヘアメイク:佐藤泰子 スタイリスト:野中美貴 衣裳:津田、 江口久美子 VFX:立石勝 スクリプター:阿保知香子 編集:佐藤崇 助監督:毛利安孝、野本史生、稲葉博文 音楽プロデューサー:和田亨 ラインプロデューサー:藤原恵美子 制作協力 ブロウアップ 配給 渋谷プロダクション 主題歌:「Oh JOE GIWA」作詞:丸山昇一、gb 作曲編曲 林祐介 製作 「安楽死特区」製作委員会(北の丸プロダクション、渋谷プロダクション)
出演:毎熊克哉 大⻄礼芳
加藤雅也、筒井真理子、板谷由夏、下元史朗、鳥居功太郎、山﨑翠佳、海空、影山祐子、外波山文明、⻑尾和宏、くらんけ、友近、gb、田島令子、鈴木砂羽、平田満、余貴美子、奥田瑛二
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