釜山映画祭正式出品作品『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』(2016)などの作品で知られる佐藤慶紀監督の最新作『もういちどみつめる』が2025年11月22日(土)より新宿 K’scinema ほかにて全国順次公開される。
2022年の民法改正により日本の成人年齢が18歳と定められ、少年法の改正で18、19歳が厳罰化されたことに疑問を持った佐藤監督が、「生きづらさ」を抱える思春期の青年と、同じく「生きづらさ」を抱えて生きてきた大人を主人公に据え、言葉にして対話をすることの重要性を問うた作品だ。
『淵に立つ』『よこがお』『波紋』などの作品で知られる筒井真理子と、三宅唱監督のロカルノ国際映画祭インターナショナルコンペティション部門金豹賞受賞作品『旅と日々』で大注目の髙田万作をW主演として迎え、にしやま由きひろ、徳永智加来、中澤実子、吉開湧気、リコ(HUNNY BEE)、内田周作、川添野愛等が共演。
このたび、新宿 K’scinemaの公開を目前に控え、佐藤慶紀監督のオフィシャルインタビューが届いた。
佐藤慶紀監督オフィシャルインタビュー

――本作制作のきっかけをお教えください。
佐藤慶紀監督(以下、佐藤):2022 年に少年法が改正されたことをきっかけに、少年たちについての映画を作りたいと思いました。
――少年法が改正されたことをきっかけとのことですが、裁判所や拘置所などが舞台の映画にしなかった理由を教えてください。
佐藤:当初はそれを考えていたんですけれど、再生をイメージするような場所で撮りたいと思って、山の中で撮りました。
――邦題『もういちどみつめる』に込めた思いを教えてください。
佐藤:最近は、何か不祥事が起きると、その人をすぐにシャットダウンしてしまう傾向があります。けれど、ただ切り捨てて終わりにすることには抵抗があり、それは行きすぎではないかと思います。そうした思いから、『もういちどみつめる』というストレートなタイトルにしました。ここでいう「見つめる」とは、すぐに許すという意味ではなく、シャットダウンせず向き合うということです。
――筒井真理子さんと髙田万作さんをキャスティングした理由を教えてください。
佐藤:髙田くんは写真を見た時から自分のイメージに合っていていいなと思っていたんです。オーディションで実際に会ったらお芝居も良かったので、『この子だ!』と思いました。
筒井さんは、演技には間違いない方で、もっと奥があるようでもっと知りたくなるような方だなと思っていて、お願いしました。
――冒頭の車の行き交うシーンはどのような思いがあって入れたんですか?
佐藤:一度社会との接点を見せておきたかったというのがあります。あと、茶畑なんですけど、主人公がいつも見ていた風景として入れていました。主人公は茶畑が見えるような地方都市で育ったという設定です。
――ドーンコーラス(夜明けの鳥のさえずり)は実際聴けましたか?
佐藤:はい。朝の 4時、5時に山に入っていくと、すごく鳴いているんです。劇中ドーンコーラスとして使っている音もその時録った音です。
――にしやま由きひろさん演じる明夫役はどのような思いでできた役ですか?
佐藤:明夫は常識的な役割だと思っています。いわゆる普通の人が考える常識っていうところがないとストーリーが進まないので、典子もユウキもそんなに喋らない中、うまくその中に入って回していけるような、田舎にいそうなよく喋るおじさん。いい意味でも悪い意味でも保守的で、でも優しさを持っている人です。
――大学生たちがキャンプ場に来てから新たな要素が加わってきますが、「すごく繊細でどこにでも生きていけるわけではない珍しいコケを探す女子学生」という設定を思いついたきっかけをお教えください。
佐藤:世の中のわからないものをわからないまま捉えられる人というイメージで作りました。由香理には何かを探していて欲しいな、それはおそらく珍しいコケだろうなと思って、そういうコケがあるのかなと思って調べたら、あったんです。
――見どころはどこだと思いますか?
佐藤:役者さんたちの演技です。特に筒井さんと髙田くんの最後の演技が僕は好きなんですけれど、髙田くんとも、「あのシーンは演技を超えたよね」という話をしました。筒井さんと髙田くんの間に不思議なものが生まれたなという瞬間があったので、そこを見てもらいたいです。
――読者の方にメッセージをお願いします。
佐藤:映画館のスクリーンでこの森の時間を体感してもらって、自然の良さを再発見して欲しいです。
佐藤慶紀 Yoshinori Sato (監督・脚本・編集・プロデューサー)
1975 年 2 月 13 日生まれ。愛知県出身。
アメリカの南カリフォルニア大学・映画制作部卒業。2013 年、長編第 1 作目『BAD CHILD』が、第 29 回ロサンゼルス・アジア太平洋映画祭に正式出品。長編第 2 作目の『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』(16)は、釜山国際映画祭ニューカレンツ部門、大阪アジアン映画祭などに正式出品され、ヴズール国際アジア映画祭インターナショナルコンペティション部門でスペシャルメンションを受賞。2019 年、ドキュメンタリー映画『新宿タイガー』が、大阪アジアン映画祭にて正式出品され、東京・テアトル新宿を皮切りに全国で上映された。
現時点で決まっている舞台挨拶の登壇者

11/22(土)11:50〜の回上映後 筒井真理子、髙田万作、にしやま由きひろ、中澤実子(以上、出演)、佐藤慶紀(監督・脚本・編集・プロデューサー)
11/23(日)12:00〜の回上映後 内田周作(以上、出演)、佐藤慶紀(監督・脚本・編集・プロデューサー)
11/24(月・祝)12:00〜の回上映後 佐藤慶紀(監督・脚本・編集・プロデューサー)
11/26(水)12:00〜の回上映後 髙田万作、リコ(HUNNY BEE)(以上、出演)、佐藤慶紀(監督・脚本・編集・プロデューサー)
舞台挨拶後に物販購入者(当日ご鑑賞の方)対象のサイン会あり
注意事項は下記 URL を参照。
映画『もういちどみつめる』あらすじ

山のキャンプ場を営む典子の元に突然の来訪者がやって来る。それは、1 年前に少年院を出所した甥っ子のユウキ。ユウキは、典子の姉である母親を探していると、このキャンプ場にやってきたが、典子が義理の兄に電話すると、ユウキと義理の兄はうまくいっていないとのこと。ユウキにキャンプ場でバイトをさせてあげ、「私にできることは、あなたの話を聞くことだけ」と寄り添う典子は、近所に住む明夫によると、人の表情を読み取るのが苦手で、言葉が大事。「世界の見方は皆同じじゃない」と言う典子に、次第に心を許していくユウキ。
そんなある日、典子の息子でユウキの同い年の従兄弟である健二が、大学の友達とキャンプにやってくる。森の植物や星など、ユウキと由香理が共通の話題で盛り上がるのを見て嫉妬した健二は...
映画『もういちどみつめる』作品情報

2025/日本語/STEREO/ヨーロピアンビスタ/113min
監督・脚本・編集・プロデューサー:佐藤慶紀 プロデューサー:小林良二 撮影:喜多村朋充、大渡仁 録音・スチール:近藤俊哉 助監督:齋藤成郎 メイク:桐山雄輔 衣裳:チバヤスヒロ 音楽:中野晃汰 配給:渋谷プロダクション 制作 Aerial Films
出演:筒井真理子、髙田万作、にしやま由きひろ、徳永智加来、中澤実子、吉開湧気、リコ(HUNNY BEE)、内田周作、川添野愛
筒井真理子さんのオフィシャルインタビューはこちら
高田万作さんのオフィシャルインタビューはこちら