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映画『永遠の待ち人』大阪・シアターセブンで公開! 太田慶監督とメインキャスト(永里健太朗、北村優衣、高崎かなみ)のオフィシャルインタビューが到着

ドストエフスキーの短編「白夜」をモチーフに、紅葉の美しい東京を舞台に、新たなエンディングを提示する映画『永遠の待ち人』

 

2025年6月6日(金)より池袋シネマ・ロサで公開され好評を博し、8月30日(土)からは満を持して、大阪・シアターセブンでの公開がスタートする(一週間限定上映)。

 

(C)太田慶

「男にとって仕事は大事」と妻をなおざりにした結果、妻に去られた泰明は、ショックのあまりうつ病になり、会社を休職している。たまに手土産を持って様子を見にくる同僚・岡崎と鉢植えだけが彼の話し相手だ。ある日、路上で女性とぶつかった泰明は、その女性・美沙子がバッグから落としたナイフを拾う。ベンチで本を読んでいた彼女に話しかけてみると、美沙子は3年間毎日そのベンチを訪れ、恋人の慎一を待ち続けているという。泰明は美沙子に心ひかれ、彼女のもとに通うようになるが・・・。

 

『桃源郷的娘』(2018)、『狂える世界のためのレクイエム』(2015)で知られる太田慶が監督・脚本を手がけ、太田慶監督の全作品に出演している永里健太朗が主役の泰明役を務めた。『ビリーバーズ』(2022/城定秀夫監督)での熱演で注目を集めた北村優衣が美沙子を、『うみべの女の子』(2021/ウエダアツシ監督)などの作品で知られる高崎かなみが麻美を演じている他、美沙子の元恋人・慎一に釜口恵太、主人公が過去の反省を吐露する相手・相沢役に藤岡範子、変化する主人公を見て行動を変える主人公の同僚・岡崎にジョニー高山が扮している。

 

このたび、主演の永里健太朗北村優衣高崎かなみ太田慶監督のオフィシャルインタビューが届いた。

 

目次

 

永里健太朗オフィシャルインタビュー

(C)太田慶

――本作出演のきっかけをお教えください。

 

永里健太朗(以下、永里):太田監督の1作目、2作目に出演して、2作目の上映の時に、監督が3作目に撮りたいものがあるとのことだったので、「力になれることがあったらよろしくお願いします」という話をしていました。数ヶ月後、声をかけていただいた形です。

 

――脚本を読んだ時の感想を教えてください。

 

永里:太田監督は、映画や哲学、文学の知識がある方なので、アート寄りな作品だなと思いました。

 

――監督とは撮影前などに何か話しましたか?

 

永里:麻美と接する時にどこまで仕事人間というのを出せばいいのかという温度感について、こちらから聞きました。

 

――主人公が、原作と同じく“孤独”とは言っても、一度は結婚したことがある人で、会社の先輩もたまに会いに来てくれます。“仕事一筋で生きてきてしまってこの状況に陥っている”ということがわかるので、観客も共感しやすいです。観客が共感しやすいように、演じる上で工夫はしましたか?

 

永里:美沙子に接するのは好奇心からだったと思うんですけれど、それから“恋愛”とは言わないけれど、そういうのを求めていたんじゃないかなと思います。誰しも持っている部分だと思うので、「いるな、こういう奴」と思っていただけたらいいなと思って演じました。

 

――美沙子は、泰明のことに全く興味を示さないですが、どう思いましたか?

 

永里:美沙子にああいう反応で来られたから、泰明はもっと興味が湧いたんだと思います。あれが普通の女性だったら、あそこまでになっていないんじゃないかなと思います。

 

――泰明の「男にとって仕事は大事」と妻をないがしろにしてしまう行動は理解できましたか?

 

永里:理解はできないですね。理解できないからこそ、自分の中にあるそれに近い感情でお芝居をするようにしました。

 

――植物に話しかけているシーンは、孤独でありながら可愛らしかったですが、何か工夫はしましたか?

 

永里:あれも、誰しもある部分だと思うので、大袈裟にするよりは、「いるな、こういう人」と思ってもらえたら面白いなと思いました。「独り言を言おう」というよりも、本当に話しかけているんだなと思いました。

 

――会社の先輩の岡崎にポロッと言われる「お前一人いなくても仕事は回るから」という言葉は、言われるとグサっとくると思いますが、演じていていかがでしたか?

 

永里:グサっと来ますよね。仕事が一番だった人間が、それを言われてすっごいショックでしたし、「本当、なんだったんだろうな」というのが心の声だと思います。

 

――麻美と結婚前のいい囲気のシーンは1つだけだったかと思いますが、そのシーンでは何か工夫はしましたか?

 

永里:付き合っている時が一番楽しい時だったんじゃないかなと思って、その後と対照的になるように考えました。私自身も演じていてすごく楽しかったです。

 

――美沙子役の北村優衣さんと共演していかがでしたか?

 

永里:美沙子という役も、北村さん自身も、掴めないというか、独特の空気感がありながらも、カメラが回っていない時も気さくに話したりしていて、楽しかったです。美沙子という人を通して、北村さん自身もああいう人なのかなと思うくらいなオーラがありました。

 

――麻美役の高崎かなみさんと共演していかがでしたか?

 

永里:高崎さんは普段はすごく明るい方なので、どこか陰がある役を演じ、すごく蔑まれる目をされたシーンなどはすごいなと率直に思いました。

 

――完成した映画をご覧になった感想はいかがでしたか?

 

永里:僕が演じる泰明が主人公ではあるけれど、あの女性二人の存在の大きさを感じました。特に美沙子の、「こういう人がいたら怖いけど見ちゃうよな」というような存在感がすごいなと思いました。

 

――本作を観た方の感想は耳に入っていますか?

 

永里:「昔のヨーロッパ映画の雰囲気があってすごく良かった」と言ってもらえました。自分もすごく感じましたし、エンタメ性よりアート性が出ている映画だなと思いました。

 

――本作の見どころはどこだと思いますか?

 

永里:二人の女性に主人公がどういう感じで接していくのか。観終わった後に、泰明について、皆さんがどう思うのか、率直に意見を聞きたいです。作品についての感想、登場人物たちへの感想が気になります。

 

――読者にメッセージをお願いします。

 

永里:映画・文学の知識がすごい太田監督が生きてきた人生が少し出ているんじゃないかなと思うので、太田監督の頭の中を是非見てほしいなと思います。3作目は、より、青くもない静かな緑の炎的な太田監督にしか出せない、ものが詰まっている映画だと思います。

 

永里健太朗(Kentaro Nagasato)プロフィール

 

1987年8月25日生まれ。鹿児島県出身。

2008年初舞台を踏み演劇集団「47ENGINE」では役者の他、脚本・演出も多数手掛ける。『やがて水に歸る』(17/榎戸耕史監督)など映画・ドラマ・CMでも活動し、スマホで撮影した短編映画も製作。監督・出演作『野ざらされる人生へ』はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023国内コンペティション 短編部門に正式出品された。太田慶監督作品には『狂える世界のためのレクイエム』(15)、『桃源郷的娘』(18)に続いての出演。

 

北村優衣オフィシャルインタビュー

(C)太田慶

――本作出演のきっかけをお教えください。

 

北村優衣(以下・北村):監督の太田さんが、私が以前出演した『ビリーバーズ』を観てくださって、美沙子役にピッタリなんじゃないかとオファーをいただきました。

 

――ルキノ・ヴィスコンティ監督とロベール・ブレッソン監督の『白夜』は、配信されていないですが、観たことはありましたか?原作は読みましたか?

 

北村:ブレッソン監督の『白夜』の4Kレストア版が公開されたので、ちょうど1週間前に『白夜』を観に行きました。『永遠の待ち人』と繋がるところもありましたが、『白夜』は若い二人の話なので初々しい青春のように見えました。

ブレッソンの『白夜』のマルトは可愛らしい健気な少女で、待っていたのは1年だけれど、本作の美沙子は3年なので、確固たる信念という違いがあると思いました。美沙子は「愛とは?」「永遠とは?」を突き詰めて考えている人で、マルトと美沙子はそもそも求めているものが違うんじゃないかと思います。

 

原作も読みました。原作と方向性がちょっと違うから、あくまでも参考にしたという感じです。そちらでも恋人を待っている女の子は幻想的な感じで、そこは本作の美沙子にも近いところがあるので取り入れましたけれど、「ここは一緒にしたい!」という気持ちはなかったです。

 

――脚本を読んだ時の感想を教えてください。太田監督とは何か話しましたか?

 

北村:難しかったです(笑)。ただ、太田監督がやりたいことが明確なのはお話ししていて伝わったので、監督のやりたいことをしっかり務めようと、ディスカッションをしました。『ビリーバーズ』が信仰宗教の話だったので、演じた副議長という役の一つのものを信じる眼差しは今作でも生かして欲しいと言われました。美沙子は、3年間恋人を待ち続けるという役で、自分の中での哲学があったり、言葉に強い力がある人なので、執念は意識して欲しいという話をされていました。

 

――演じた美沙子をどのような人物だと捉えましたか?

 

北村:美沙子は、どんな人か読めなかったです。毎日彼との待ち合わせに行っていて、「仕事は何をしているのか?」と思うので、美沙子という人物を掘り下げるというよりも、太田さんの伝えたい言葉、哲学的な要素を一つ一つ遜色なく偏見なく伝えるということを意識しました。

泰明にとって美沙子がどういう存在であるべきかという方を考えました。

 

――「彼が来るまでずっと待ちます」と3年間待っている美沙子は理解できましたか?

 

北村:できないです(笑)。個人的には「3年間同じ人を待ち続けるなんて無理!寂しい!」となってしまうので、無理ですけれど、美沙子は信じたいという気持ちが強いので、そこだけは絶対にブレないようにしました。観ている人も、美沙子がどういう人物かわからないと思うし、一人一人それぞれ捉え方があると思うので、その余白を残しながら、待ち続けるという信念だけは絶対にブレないように意識しました。

 

――3年間待っている恋人・慎一との出会いのシーンも、美沙子を演じる上でヒントになったのでしょうか?

 

北村:そうですね。ときめきというか、ドキドキ以上の「運命だ」「この人しかいない」みたいな強い出会いのシーンになればと思いました。そのシーンの撮影は後半だったので、それまではまだ会えていない慎一を想いながら演じていました(笑)。

 

――哲学的なセリフが多かったですが、日常会話の作品と、どう違いましたか?

 

北村:違うところばっかりでした(笑)。もちろん頭の良い方はパッと出てくるでしょうけれど、私はそうではなく、自然と会話して出てくる言葉ではないので、やり取りをするのが難しかったです。泰明のどういう言葉を受けて、この哲学の言葉が出てくるのかっていうのは、自分の中でも探りながらやっていました。泰明に言っているようで自分に言っているような言葉なので、そのバランスは意識しました。

 

――泰明役の永里健太朗さんと共演していかがでしたか?

 

北村:寡黙な方でした。読めないところがまた泰明っぽくて。謎めいているところがあって、興味を持ったんですけれど、これ以上聞いてはいけないんじゃないかと思って程よく接していました(笑)。

 

――ロケ地はいかがでしたか?

 

北村:お台場の近くで毎日朝から日が暮れるまで撮影したんですけれど、日が暮れる時がすごく綺麗で!環境としてすごくよかったです。

 

――本作の見どころはどこだと思いますか?

 

北村:泰明と美沙子の出会いから徐々に日が経ち、関係性ができた中で迎えるラストです。泰明と美沙子の関係性が変わっていくところも見て欲しいですし、美沙子の強い意志がどこから来ているのかというのをそれぞれ考えられるんじゃないかなと思います。「自分はこんなに待てるかな?」だとか自分の中での「愛」とか「永遠」とかの定義みたいなものをわかりやすく美沙子は提示しているので、「自分だったらどう考えるんだろう」だとか、思考ができるんじゃないかなと思います。

 

――読者にメッセージをお願いします。

 

北村:この映画が次いつ東京で劇場上映されるかわかりません。映画は映画館で観るのが一番だと思うので、大きいスクリーンでこの映画を楽しんでもらえたらと思います。

 

北村優衣(Yui Kitamura)プロフィール

 

1999年9月10日生まれ。神奈川県出身。

2013年に女優デビュー。2020年に『かくも長き道のり』(屋良朝建監督)で映画初主演。2022年、『ビリーバーズ』(城定秀夫監督)で“副議長”役を演じ、注目を集める。主な映画出演作に『13月の女の子』(20/戸田彬弘監督)、『コーポ・ア・コーポ』(23/仁同正明監督)、『ブルーイマジン』(24/松林麗監督)など。

 

高崎かなみオフィシャルインタビュー

(C)太田慶

――本作出演のきっかけをお教えください。

 

高崎かなみ(以下、高崎):ウエダアツシ監督の『うみべの女の子』という作品に、主人公の男の子が好きになるうみべの女の子役で出演したんですが、セリフの一切ない、一瞬だけ登場する私の役を太田監督がご覧になり、儚げですごくよかったと麻美役に合うのではないかとオファーを頂いたと伺いました。

 

――脚本を読んだ時の感想を教えてください。

 

高崎:少し理解するのに時間がかかりました。人それぞれ解釈が出来ると思いましたが、サラリーマンにも実際にあるんじゃないかと思うようなことが描かれていたので、多くの方に共感してもらえるような作品になるのではないかと思いました。

 

――演じた麻美をどのような人物だと捉えましたか?

 

高崎:麻美は、思ったことをすぐに言えなかったり、気持ちを自分の心の中に留めて閉ざしてしまうような女の子で、休日も旦那さんが仕事で疲れていて一緒に過ごせないこととかも旦那さんにうまく伝えられなくて、最後自分の悲しい気持ちを一人で抱え心を閉ざしてしまいます。結婚生活を送るうちに明るい性格が内に気持ちを抱えてしまう女の子に変わってしまった人物と捉えました。

 

――監督から何か演出はありましたか?

 

高崎:私が思った通りに演じたら、その感じでいいよと言ってくださったので、自分が思った通りに演じました。

 

――文学的な言い回しのセリフもありましたが、日常会話の作品と、どう違いましたか?

 

高崎:結構難しい言葉が多かったので、理解するのに時間がかかってしまったんですが、太田監督の世界観の中で非日常的な会話を日常会話に溶け込むように演じる事で難しかった言葉を理解していきました。理解すると言葉の裏にある感情の解釈が変わっていくのでより面白くなっていきました。

 

――「これじゃ、何のために結婚したのかわからないね」というセリフは、結婚の破綻を現していたと思いますが、演じていていかがでしたか?

 

高崎:泰明がいつも仕事ばかりで、休みの日は家の中でゴロゴロしていて、あんまり相手にしてもらえず、実際に麻美の気持ちになった時に、「仕事のためだけに生きちゃっているなら、一緒にいる意味ないじゃん」って、本当に思いました。その時のセリフは心から言えたと思います。私はちゃんと休日は一緒に過ごせる人と結婚したいです。(笑)

 

――泰明と結婚前のいい雰囲気のシーンは1つだけだったかと思いますが、そのシーンでは何か工夫はしましたか?

 

高崎:手を繋いで外を歩いていたシーンだったかと思うんですけれど、アドリブで、「今日何食べよっか」みたいに、実際に食べたいものを言った気がします。なので、結構なリアルと言うか、明るい雰囲気で撮れたかと思います。

 

――ご自身だったら、結婚した人が仕事のために生きていて妻のことをないがしろにしている人だったら、どうしますか?

 

高崎:嫌ですね。二人で一緒に生きていくと決めたんだから、相手が辛い時は私もそばにいてあげたいと思うし、私が辛い時は支えてほしいし。一緒にいる時は、ちゃんと話もしてほしいです。私だったら話をしてって自分から言うと思います。

 

――泰明役の永里健太朗さんはいかがでしたか?

 

高崎:撮影時間が短かったので、泰明の印象しかなくて、実際に永里さんがどういう人なのか全然知れていなくて。今も泰明のイメージのままです。舞台挨拶の時に初めて知るのかなと思います。

 

――完成した映画をご覧になった感想はいかがでしたか?

 

高崎:演じていた時もそうなんですけれど、完成版を観ても、不思議な世界観だなというのが第一印象です。泰明みたいにお仕事ばっかになって病んじゃう人はいっぱいいると思うんです。夫婦関係が同じような人もいると思うし。そういう人が共感してくれる作品になるんじゃないかなと思いました。

 

――本作の見どころはどこだと思いますか?

 

高崎:私がいるシーンではないんですけれど、ベンチでの泰明と美沙子のシーンが見どころだと思います。私は、泰明と美沙子が願掛けをするシーンがすごく好きです。実際私もよく願掛けをするので、同じような人もいるんだなと思いました。同じように共感する人もいるんじゃないかなと思います。

 

――本作はご自身にとってどのような作品になりましたか?

 

高崎:こういう文学的な作品に出演するのは初めてだったのと、夫婦の役をやるのは初めてだったので、私の中でまた一ついい経験になった作品です。

 

――読者にメッセージをお願いします。

 

高崎:ラストシーンが、台本を知っていた私でさえも完成版を観て、予想していなかった展開になって面白かったので、ぜひ観てほしいです。

 

高崎かなみ(Kanami Takasaki)プロフィール

 

1997年7月14日生まれ。神奈川県出身。

「第 1 回サンスポ GoGo クイーン」「ミスジェニック 2019」をはじめ数々のオーディションでグランプリを勝ち取り、“無敵のグラドル”と称される。近年は女優としても活躍の場を広げており、主な出演作に映画『うみべの女の子』(2021)、ドラマ「セクシー田中さん」(2023)、配信ドラマ「ヤりたい男と、殺りたい女。」(2022)、舞台「応天の門」(2024)などがある。

 

太田慶監督オフィシャルインタビュー

(C)太田慶

――本作着想のきっかけをお教えください。

 

太田慶監督(以下、太田)元々ロベール・ブレッソン監督の『白夜』が好きで、繰り返し見ていたんですが、そこに描かれているテーマをこの映画を作ることで自分なりに探求してみたいと思いました。

 

――ドストエフスキーの「白夜」はどのタイミングで読んだのでしょうか?「白夜」を映画化した、ルキノ・ヴィスコンティ監督とロベール・ブレッソン監督の『白夜』、ジェームズ・グレイ監督の『トゥー・ラバーズ』の感想はいかがでしたか?

 

太田:やはりブレッソンが傑出していると思います。ブレッソン版から入って、ヴィスコンティ版を観て、原作を読み、改めて原作に惹かれたという形です。その後グレイ版を観ました。

映画はそれぞれ、監督の個性が出ていて面白いです。ヴィスコンティ版はウェルメイドな作品ですけれど、ブレッソンの場合はそこからさらに突き抜けて、観念的な世界に入っていくところがあり、そこに惹かれました。

原作は饒舌な一人称形式ですが、ブレッソンの『白夜』では、主人公がテープレコーダーに向かって話すという形にすることによって、主人公の孤独が伝わってきます。そういうアプローチの仕方が気に入って、今回の映画では主人公が観葉植物に向かって話すという風にしてみました。

 

――原作と過去に映画化された映画のどの部分を踏襲して、どの部分を変えようと思いましたか?

 

太田:“主人公が恋人を待ち続けている女性に惹かれる。数日間の交流の後、別れが訪れる”という構造を踏襲させてもらいました。ブレッソン版の観念的なところに惹かれましたが、それを押し進めて、さらに突き抜けたところに行けないかと思いました。それが今回の映画のエンディングです。

 

――それはエンディングを最初に思いついて、逆算したということでしょうか?

 

太田:エンディングのイメージが、まずありました。そこに向かって、泰明と美沙子の5日間のストーリーを積み上げていきました。

 

――主人公が、原作と同じく“孤独”とは言っても、一度は結婚したことがある人で、会社の先輩もたまに会いに来てくれます。“仕事一筋で生きてきてしまってこの状況に陥っている”ということがわかるので、観客も共感しやすいです。そのような設定にした理由を教えてください。

 

太田:私がサラリーマン監督ということも大きいと思うんですが、何十年も会社に勤めていて、「働くということはなんだろう」だとか、「生きるとは」「人生とは」ということを考えたりしているので、そういうことも盛り込める設定にしてみました。

 

――哲学的なセリフが多かったですが、ご自身が普段から哲学的なことを考えているのでしょうか?

 

太田:小学生の時に読んだ手塚治虫の『火の鳥』と中学生の時に読んだニーチェの『ツァラトストラかく語りき』からは大きな影響を受けました。「生の哲学」「生命の哲学」には常に興味があります。

 

――紅葉が美しいシーンが多かったですが、ロケ地のこだわりなど教えてください。

 

太田:ちょうどコロナの時期だったので、コロナの流行の様子を見ていたら、11月の撮影になりました。緑がきれいな自然の風景を撮りたいと思い、いい樹木のある都内の公園を探し、森という設定で撮影しました。

 

――永里健太朗さんに泰明役を演じてもらっていかがでしたか?

 

太田:永里さんは非常に人間性がいいので、こういう陰にこもった役を演じても嫌な感じにならないんですね。観客が素直に感情移入して観ることができる主人公になったのではないかと思います。

 

――美沙子役の北村優衣さんとご一緒していかがでしたか?

 

太田:北村さんは、おおらかでイタリア映画の女優さんみたいでしたね。芯の強さがあって、信念を持った美沙子の役に合っていたと思います。周りとすぐ打ち解ける人なので、楽しく撮影ができました。

 

――麻美役の高崎かなみさんとご一緒していかがでしたか?

 

太田:高崎さんは、可憐さや愛らしい魅力があって、それだけに麻美の哀しみがいっそう伝わってきたと思います。雨の日の撮影ではずいぶん寒い思いをさせてしまいましたが、弱音一つ吐かないプロフェッショナルでした。

北村さんと高崎さんで、いい感じに違うタイプのヒロインになって良かったと思います。

 

――撮影での面白いエピソードはありますか?

 

太田:北村さんが特技にバスケットボールと書いていたので、バスケットボールをやってもらったんですが、さすがに3ポイントシュートは決めるのは大変だろうと何テイクも撮ることを覚悟していたところ、北村さんはなんと一発目で決めてしまいました。「あっ、入った!」というのは素のリアクションです。念のためもう1テイク撮ったんですが、それも一発で決めて、さすがスポーツができる女子はかっこいいなと思いました。バスケットボールの場面は永里さんも北村さんもイキイキしていて、こういう瞬間を見るのが映画的な快楽なのかなと思い、長めに撮影しました。私的には永遠に続いてほしいと思える時間です。

ヒッチコックばりに1シーン出演したところもあるんですが、秋だったので、日が落ちるのが早くて、カットの繋がりが悪かったのと、照れ臭くなったこともあってカットしてしまいました。

 

――本作の見どころはどこだと思いますか?

 

太田:役者さんの魅力だと思います。私の映画は役者さんの存在感に賭けているのですが、今回は非常にいいキャスティングができたと思います。

 

――読者にメッセージをお願いします。

 

太田:観念的な映画なので、なかなかとっつきにくいかもしれないですが、役者さんの魅力と、自分なりに考えた映画的なシーンもあるので、そういうところを見て楽しんでもらえればと思います。この映画を気に入ってくれる方がいてくれたら嬉しいです。

 

太田慶(Kei Ota)プロフィール

 

1968年4月26日生まれ。大阪府出身。

大阪大学経済学部卒。日活勤務。会社勤めの傍らニューシネマワークショップ、映画美学校に通い映画作りを学ぶ。映画美学校「脚本コース」で「長編シナリオ課題優秀作品」に選出された脚本を自らの手で映画化した『狂える世界のためのレクイエム』(15)で監督デビュー。小宮孝泰主演の『桃源郷的娘』(18)も話題となった。

 

映画『永遠の待ち人』あらすじ

(C)太田慶

仕事中心で家庭を顧みることのなかった泰明(永里健太朗)は、妻の麻美(高崎かなみ)が去ったショックで鬱になり会社を休職しており、唯一の話し相手は、たまに手土産を持って様子を見にやってくる同僚の岡崎(ジョニー高山)と鉢植えである。

 

ある日、ぼんやり道を歩いていた泰明は美沙子(北村優衣)とぶつかり、美沙子がバッグから落としたナイフを拾う。泰明は美沙子の後を追い、ベンチで本を読んでいる美沙子に話し掛けると、美沙子は恋人・慎一(釜口恵太)を3年間毎日そのベンチで待ち続けているという。「彼はもうあなたのことを忘れてるんじゃないですか」と泰明は言うが、美沙子は「愛は信じることです」と強い意志で恋人を待ち続ける。美沙子に心惹かれた泰明は、美沙子のもとに通い始める。泰明は、美沙子が迷いなく話す愛の定義を聞く度、自分と元妻の関係を反省。もし美沙子が想っている人が自分だったら、と考え、「何か変えてみることでこの悪循環から抜け出せるような気がする」と提案してみるが…。

 

映画『永遠の待ち人』作品情報

2023年/日本映画/カラー/16:9/83分

監督・脚本・編集:太田慶 撮影:河村永徳 照明:近藤啓二 録音:松川航大 衣裳:赤井優理香 ヘアメイク:清水彩美 配給:OTAK映画社

出演:永里健太朗、北村優衣、高崎かなみ、釜口恵太、藤岡範子、ジョニー高山

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