「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」三部作(2014、17、23)、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)のジェームズ・ガンが監督・脚本を務めた映画『スーパーマン』は、ワーナー・ブラザースによるDCユニバースの新たな幕開けとなる作品だ(ガン監督はDCユニバースの共同製作総指揮も務める)。
ガン監督は、アメコミヒーローの原点ともいえるスーパーマンに対して正面から取り組み、監督自身の持ち味を十分に生かした新鮮な物語を作り上げた。とりわけ最強のヒーローが初めて闘いに敗れるところから物語がスタートするのが斬新で、敵役の強さもあって見応えたっぷりな内容になっている。
スーパーマン/クラーク・ケントを演じるのは、『Pearl パール』(2022)、『ツイスターズ』(2024)などで注目されるデヴィッド・コレンスウェット。ジェームズ・ガン監督は、彼の『Pearl パール』での映写技師役を観て、スーパーマン役に抜擢したという。
ロイス・レイン役には映画『アマチュア』(2025)や人気ドラマシリーズ『マーベラス・ミセス・メイゼル』(2017~2023)で知られるレイチェル・ブロズナハン。宿敵レックス・ルーサーには、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)、『陪審員2番』(2025)などのニコラス・ホルトが扮し、頭脳派悪役を溌剌と演じている。

目次
映画『スーパーマン』作品基本情報
邦題:スーパーマン
原題: Superman
ジャンル:アメコミ/アクション/SF
監督・脚本:ジェームズ・ガン
撮影: ヘンリー・ブラハム
音楽: ジョン・マーフィ、デビッド・フレミング
製作国:アメリカ
製作年:2025年
上映時間:129分
配信プラットフォーム:U-NEXTほか
キャスト:
(役名)クラーク・ケント/スーパーマン: デヴィッド・コレンスウェット
ロイス・レイン: レイチェル・ブロズナハン
レックス・ルーサー:ニコラス・ホルト
ミスター・テリフィック:エディ・ガテギ
グリーン・ランタン;ネイサン・フィリオン
ホークガール:イザベラ・メルセド
ジミー・オルセン:スカイラー・ギソンド
エンジニア:マリア・ガブリエラ・デファリア
イブ・テシュマッカー:サラ・サンパイオ
メタモルフォ:アンソニー・キャリガン
映画『スーパーマン』あらすじ

友愛、正義、そして人道を守ることで世界中から尊敬を集めていたスーパーマンは、初めて戦いに敗れ、愛犬クリプトの助けを借りて、南極の氷の要塞へと逃れた。
スーパーマンが敗れたのはテクノロジー業界の億万長者でルーサーコーポレーションのCEOであるレックス・ルーサーが、長年、彼の闘い方を分析し、弱点を暴きだし、ヴィランに自分の指示通りに攻撃させたからだ。彼はスーパーマンをまるで玩具のように叩きのめすことに成功する。
要塞の中でスーパーマンは、地球の黄色い太陽からの光線で体を治癒させ、クリプトン人の両親の断片的なホログラムに心を慰められる。両親は彼に地球の人々を守り、正義を貫くことを説いていた。
スーパーマンを追って来たエンジニアというヴィランはついに氷の要塞を発見する。ルーサーはエンジニアとウルトラマンと共に要塞に侵入し、両親のホログラムメッセージを盗み出した上、クリプトを拉致する。
メトロポリスではルーサーが放った巨大な怪物が大暴れし、人々に危機が迫っていた。スーパーマンは、グリーン・ランタン、ミスター・テリフィック、ホークガールからなるジャスティス・ギャングと共に怪物に立ち向かい、怪物を倒すことに成功する。
人々はスーパーマンたちに感謝するが、その時、驚くべきニュースが流れた。要塞からメッセージを盗み出したルーサーは、ホログラムの後半、判読不明になっていた個所を、専門家に依頼して解読させ、そこに驚くべきメッセージが隠されていたことを明らかにしたのだ。なんと、スーパーマンの両親は地球を破壊せよという使命を彼に伝えようとしていたのだ。
そのニュースが伝えられた途端、それまで尊敬のまなざしでスーパーマンを観ていた人たちが、恐怖に顔を引きつらせ、あわてて逃げ出していった。
誰もがその発表をフェイクニュースではないかと疑ったが、どうやら嘘ではないようだった。当のスーパーマンもこの事実に驚愕し、戸惑い悩むことになる。
彼は尋問のために政府に自首するが、政府はスーパーマンの身柄をルーサーに委ねた。ルーサーは、スーパーマンを「ポケット・ユニバース」という秘密の牢獄に監禁する。そこにはクリプトも囚われていた。
スーパーマンが監禁されたキューブには、メタヒューマンのメタモルフォが囚われていた。彼は幼い息子のジョーイを人質に取られており、ルーサーの命令に従うしかなかった。
その頃、デイリー・プラネット紙の記者でクラーク・ケントの恋人ロイス・レインは、行方不明になったスーパーマンを必死で捜し回っていた。彼女だけが、スーパーマンの正体を知っているのだ。ジャスティス・ギャングのメンバーと接触するも、彼らは政治には介入しないと冷たい。ただ、そのうちのひとり、ミスター・テリフィックだけが協力してくれることになり、彼はポケット・ユニバースの存在を突き止める。
壮絶な闘いの中で、スーパーマンはジョーイとクリプトを救出。助けに来ていたロイスとミスター・テリフィックと合流し、メタモルフォと共に決死の脱出に成功する。
ロイスはスーパーマンを彼の養父母のもとに連れて行き、スーパーマンは深い眠りについた。翌朝、亡きクリプトン人の両親が自分に課した使命は地球破壊だったことに悩むスーパーマンに対し、養父のジョナサンは、親は子供の生き方を左右できない。どのような生き方を選択するかは自分自身の仕事だと話して聞かせ、スーパーマンは落ち着きを取り戻す。
ルーサーがポケット・ユニバースを無理に作ったがために、メトロポリスでは恐ろしい現象が起き始めていた。しかし、ルーサーはそれはいつでも修復できると主張し、スーパーマンを倒すことに躍起になる・・・。
映画『スーパーマン』感想と評価・考察
スーパーマン最大の危機!

正義の味方のヒーローとしてスーパーマンほど良く知られているキャラクターはないだろう。優しさ、寛大さを備え、最高時速800万kmで空を飛び、核爆発にも耐えられるほどの耐久力と、怪力の持ち主である強くて頼れる存在だ。
しかし、ジェームズ・ガン監督による新星スーパーマンは、彼が初めて闘いに敗れたところから始まる。ガン監督は、スーパーマンを肉体的にも精神的にも試練にさらし、彼を超人というよりは、より人間に近い存在として描いている。
冒頭、スーパーマンは初めて戦いに敗れ氷の大地に血まみれの体で投げ出されている。彼は忠実だが元気過ぎる犬、クリプトを口笛で呼び、手荒く甘えられた後、クリプトに氷の要塞まで引きずってもらい、そこで黄色い太陽光を浴びて、ぼろぼろになった身体を治癒し、再び闘いへと向かう。
デイリー・プラネット紙の記者ロイス・レイン(レイチェル・ブロズナハン)は同僚の記者クラーク・ケントと3か月前から密かに交際しており、彼がスーパーマンであることも知っている。ケントが彼女のアパートにやって来た際、彼女はスーパーマンに「インタビュー」を敢行するが、問うのはスーパーマンであることの倫理性だ。国境をも越えて行われるヒーロー活動が独善的な介入だと非難する声が少なくないからだ。スーパーマンにとって目の前で殺されかけている子供を救うことは当然の行いであり、彼はインタビューの際、たびたび苛立ちの声を上げる。彼の純粋な正義感はしばしば社会のシステムの複雑さと衝突し、彼を悩ませるのだ。
また、亡きクリプトン星人の両親、ジョー・エルとララ・ロー・ヴァン(ブラッドリー・クーパーとアンジェラ・サラフィアン)のホログラムは、地球の人々を助けるようにスーパーマンに語り掛けており、スーパーマンはその言葉を胸にここまでやってきたのだが、バグって見ることのできなかった後半部分がレックス・ルーサーという敵役により、復元される。ルーサーは両親がスーパーマンに人類を支配するように呼び掛けていたことを世間に発表する。
当初は、スーパーマンの評判を落とすための悪質なデマとも思われたが、どうもメッセージは偽物ではないらしい。これにより、スーパーマンは大きな葛藤を抱えることになる。彼の真の使命は地球破壊だったのか? 人々は正義の味方と信じていたスーパーマンが実は侵略者だったのかと恐れおののき、スーパーマン自身もアイデンティティの危機に直面するのだ。
養父ジョナサンの教え――“使命”よりも“選択”へ

そんな彼を救ったのは育ての親のジョナサン・ケント(プルイット・テイラー・ヴィンス)だ。親は子供に使命を与えるのではない。子供がバカをしても見守るのが親の役目であり、子供は自身で自身の人生を選択していかねばならないと語る。カンザス州のスモールヴィルの慎ましい家で寛容な養父母に育てられ、すくすくと育ったクラーク・ケントの幼年期が想像でき、思わず心暖かくなるシーンだ。
後に、「正解が分からなくても、まず一歩踏み出して何が正解か選択する」とスーパーマン自身が語るように、本作は名言が多数登場する。ヒーローとは、人を救うだけでなく、より良い行動を促していくことが出来る人を指すのだ。
ガン監督はあえてスーパーマンに多くの試練を与えているが、彼のキャラクターを大切にする姿勢は良く知られており、彼のスーパーマン像には、驚くほどの慈悲深さと温かさがある。
彼はメトロポリスの住民たちが怪物に襲われたり、命の危険にさらされると、誰一人、死なせないという強い意志を持って、人々を助けている。仲間たちが宇宙怪物を残酷なやり方で退治すると、彼はあきれたように顔をしかめ彼らに苦言を呈する。
ある場面ではスーパーマンは小さな一匹のリスを助けさえしている。その優しさ、情け深さには誰もが心打たれるだろう。デヴィッド・コレンスウェットはクラーク・ケントとスーパーマン役を熱演し、誰をも安心させる親しみやすさと包容力を見せている。
ルーサーという対極――嫉妬と支配の物語

スーパーマンが寛容で情け深さの象徴だとすれば、宿敵レックス・ルーサーはまさにその真逆の存在だ。
ルーサーは、テクノロジー業界の億万長者であり、産業界、米国政府、そして諸外国とあらゆるところに通じている若きやり手である。天才的な頭脳を持つ彼は、驚異的な技術を生み出しているが、スーパーマンほど、世間に愛されていないことに戸惑っている。なぜ、スーパーマンは愛され、これほど優秀な自分が愛されないのか。スーパーマンなどよその星から来た「移民」ではないか。彼がスーパーマンを何年にもわたり研究し、痛めつけたのも、コメント隊をフル活用させSNSで彼が非難されるよう工作しているのも、すべては露骨な嫉妬によるものなのだ。
彼は自分に従順でないと判断した者たちを秘密の監獄とでもいうべき「ポケット・ユニバース」に監禁している。囚われた人々は狭いガラス製のキューブの中に入れられ、時には拷問され、殺害されることもある。ルーサーの元カノが全て囚われの身になっているところにこの男の心の狭さと、妬み深さが表れている。
ルーサーを演じるのはニコラス・ホルトだ。どんなに成功しても、どんなに金が儲かっても心が満たされないこのキャラクターを理知的に、かつ狂信的に演じている。彼の行動はまるで社会に復讐しているようでもある。こうしたキャラクターは人それぞれ、思いつくモデルがあるだろう。彼は現実世界に君臨している者のアバターのような存在なのだ。
作品全体が伝える希望とメッセージ

グリーン・ランタン(ネイサン・フィリオン)、ホークガール(イザベラ・メルセード)、ミスター・テリフィック(エディ・ガテギ)からなるジャスティス・ギャングというメタヒューマンチームはコミックリリーフ的な活躍にとどまらず、重要な役割を果たし、エンジニア(マリア・ガブリエラ・デ・ファリア)と呼ばれるヴィランは、スーパーマンを徹底的に苦しめる。
さらに、気骨あるジャーナリストたちが集まるデイリー・プラネット紙の記者のジミー・オルセン(スカイラー・ギソンド)の活躍も目覚ましいが、特ダネをとるための代償もなかなかに大きい。
そして愛らしいがやんちゃ過ぎる犬の相棒クリプトはすっかり観る者の心を癒してくれる。
ロイスはクラークを積極的にサポートし、単なる恋人役に留まらず、重大任務を颯爽とこなしてみせる。レイチェル・ブロズナハンとデヴィッド・コレンスウェットは驚くほどの相性の良さをみせている。
ガン監督は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』三部作など過去作でも見せて来たように、クセの強いキャラクターたちを自在に使い、見事なアンサンブルを生み出している。
アクションシーンの描写に関しては、スーパーマンの飛行能力や超人的な力を最大限に活かし、縦横無尽に動き回るダイナミックなカメラワークを採用している。カメラはスーパーマンと共に疾走し、その視点によりスーパーマンの飛行をよりダイナミックに捉えると共に、彼の強烈なパンチの勢いを立体的に映し出す。ガン監督らしいユーモアとエモーショナルな要素も織り交ぜたアクションは、ヒーロー映画の王道でありながら新鮮な体験を我々に与えてくれる。
ガン監督は、フェイクニュースをはじめとする真実の毀損や暴力的な移民政策、そして昨今の世界的な情勢にも臆することなく触れている。
このスーパーマンが持つ最大の強みは、その温かみのある人間性にある。スーパーマンと、真っすぐに正義や優しさを尊ぶという彼の理想がなぜ重要であり続けるのかを、私たち、観客に改めて思いださせてくれるのだ。
今の時世に、このような慈悲深いスーパーマンの物語を生み出した功績は非常に大きい。スーパーマンが言うように、この”陳腐さ”こそが「パンク」なのかもしれない。
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