お互いの人生を理解しあえば自分の生きてきた意味を掴める。生に対して希望を見出し、誰にも訪れる死を輝いたものとして受け止めて、笑顔で再会を約束しあえる―。
映画『また逢いましょう』は、ある介護施設の人間模様を通じて生と死の関係を深く、そして温かく描いた、現代に届けるにふさわしい作品だ。
原案は、京都市右京区でデイケア施設「ナイスデイ」を運営する伊藤芳宏の著書「生の希望 死の輝き 人間の在り方をひも解く」(幻冬舎刊)。利用者のライフストーリーの聞き取りを治癒に活かす独自の取り組みは今、介護業界を越えた大きな反響を呼んでいる。
監督は、京都と東京を拠点に映画のプロデュースを続け、ご当地映画といえる 2019 年の『嵐電』で高い評価を受けた西田宣善。本作は、西田の初の劇場映画監督作となる。脚本は、『夜明けまでバス停で』でキネマ旬報脚本賞などを受賞した梶原阿貴。伊藤の著書に現代社会に生きる女性の視点を加えて、フィクション化。より活き活きとした広がりを持たせている。
主人公の漫画家・夏川優希を演じるのは主演作『STRANGERS』『初級演技レッスン』などの映画や舞台で注目度上昇中の大西礼芳。『嵐電』と『夜明けまでバス停で』出演を着実にステップにしてきた大西にとって、縁に結ばれた記念すべき主演作となる。前半は何事にも受け身だった優希が自分の意志で走り出すようになる過程を繊細に表現し、新しい代表作となるにふさわしい魅力を見せてくれる。
優希の父で、頸髄損傷で生活の自由を奪われた絶望と闘う宏司を演じるのは伊藤洋三郎。施設で明るく奮闘するベテラン職員・洋子役は中島ひろ子。利用者と職員どちらも仲間として信頼の目で見つめる所長役は田山涼成。そのほかカトウシンスケ、筒井真理子、田中要次、梅沢昌代など、実力派キャストが脇を固め、誰もが自分だけの人生を生きているし、生きて良いのだ―というこの映画の根幹のメッセージを見事に体現している。
第 20 回大阪アジアン映画祭インディフォーラム部門上映作品。
映画『また逢いましょう』は、2025年7月18日(金)よりシネ・ヌーヴォ、アップリンク京都、7月19日(土)より新宿K's cinema、7月25日(金)より神戸映画資料館他にて全国順次公開される。
このたび、主人公の漫画家・夏川優希を演じる大西礼芳のオフィシャルインタビューが届いた。
目次:
映画『また逢いましょう』主演・大西礼芳オフィシャルインタビュー

――まず本作の脚本を読んだ時の感想を教えてください。
大西礼芳 (以下、大西):見たことのない映画に出演したいっていう願望があり、本作はそういった映画の部類だと感じました。「死んだ後のことを考えると怖くなる」と話す場面で、急に「母が他界して」と話し出すんですが、会話が噛み合ってない感じがすごくリアルだなと思って。脚本の梶原さんが映画の中で描きたいという言葉が、少し強めの激しい言葉で書かれている。そのアンバランスさみたいなのが。面白いなと思いました。
――マンガ家・夏川優希役ということで実際に描いた作品も映画の中に入っていますね?
大西 :とても嬉しかったです。ライフワークというほどではないですが、趣味で描いているマンガが実際に美術として映画の一部に組み込まれて、とても幸せなことだなと思いました。ポスターのイラストも描かせて頂いたのですが、登場人物を全員分描くことを自ら決めてしまったので大変でした。映像を見返しながら。登場人物をどう組み合わせたらまとまりが出るかなと考えて描きました。
――共演者のみなさんについても伺えますか?
大西:観て頂けたら分かると思うのですが、クセが強い人たちばかりで(笑)それが面白かったですね。あの施設にいる方たちの奔放さ・自由さみたいなものを、役者さん自身が本当に持っていると思いました。カトウさんとは、何度も共演させてもらっていましたが、こんなにガッツリ一緒にお芝居させてもらうことはなくて、本当に明るい人で。中島さんからも、かなりパワーを頂きました。中島さん演じる洋子さんと優希の映画でもあると思う。最後に向かうにつれタッグを組んで、介護業界の状況を支えていかなきゃみたいなぐらいのパワーを感じますよね。

――本作の撮影前と後で、介護について見方が変わったことなど有りますか?
大西:もし家族が人の手を借りないと生活するのが難しい…となった場合、まずは自分が世話をしなければいけないという考え方ってまだ根強くあると思うんです。でもその考え方が少し軽くなったというか、介護施設に対して前向きな印象を持てるようになりました。やっぱり介護のイメージって、身内を預けることが後ろめたいと思う方も多いように思うのですが、この映画を見ると、そういった気持ちが少し軽くなると思います。これは介護を放棄するとかではではなくて、やはりプロの方に見て頂きながら各施設で様々な色があって、そういったことを知ることが出来た事も本当に感謝ですね。
――映画の中で描かれている「死生観」については、どう感じられましたか?
大西:死を意識しながら生きるっていうことに関しては今回の映画を通して、私自身の大切な考え方になりました。今も根強く残っていて、これ以降の作品への考え方、取り組み方が若干変わった気がしています。終わりがあるという事はもちろん分かっていましたが、ここまで強く意識したことがなかったから。
――最後にご覧になる方にメッセージをお願いします。
大西:『また逢いましょう』は、主人公が居場所を見つける映画だと思います。父の怪我という悲劇が始まりではありますが、そこから色々な人たちや新しい考え方に出会って、自分が変わる感覚を覚え、表現したいものを見つけられるようになっていく。どんな悲劇的なことがあってもそのあとに良いことがあるかもしれない、そういった【小さな希望】を見つけられる映画だと思います。他にも様々な要素がある映画でもありますが、楽しんで観てもらえたら嬉しいです。
(敬称略)
映画『また逢いましょう』作品情報

2025 年 /日本映画/カラー/ 91 分
製作・監督:西田宣善 脚本・アソシエイトプロデューサー :梶原阿貴 原案:伊藤芳宏 音楽:鈴木治行 撮影:藍河兼一 美術:竹内公一、竹内悦子 録音:廣木邦人、荒木祥貴 編集:藤田和延 監督補:鈴木農史
出演 大西礼芳、中島ひろ子、カトウシンスケ、加茂美穂子、田川恵美子、神村美月、梅沢昌代、伊藤洋三郎、田中要次、田山涼成、筒井真理子
映画『また逢いましょう』あらすじ

東京でアルバイトをしながら漫画を描いている夏川優希は、父・宏司が転落事故で入院した知らせを聞いて京都市右京区の実家に戻ってくる。宏司の診断の結果は、手足に重い麻痺が残る頸髄損傷だった。
優希はひとり娘で、母はすでに他界している。家に残って父親の世話をするが、無口で頑固な宏司とは昔から会話もろくに弾まない。
宏司は介護施設「ハレルヤ」に通所を始める。優希も付き添いでおそるおそる行ってみると、そこは利用者と職員が和気あいあいと談笑しリハビリテーションに励む、居心地の良さそうな空間だった。
優希はベテラン職員の向田洋子やケアマネージャーの野村隼人、利用者たちと交流するうちに、彼らを温和な笑顔で見守る武藤所長の考えの深さにひかれていく。