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Netflix映画『K.O.』あらすじと解説/総合格闘家シリル・ガーヌが麻薬組織と戦う元総合格闘技チャンピオンを演じるフランス産アクション

Netflixが贈るフランス映画「K.O.」は、マルセイユを舞台に、元総合格闘技チャンピオンと地元の麻薬密売組織との熾烈な闘いを描くアクション映画だ。

主人公のバスティアンを演じるのは、元UFC世界ヘビー級暫定王者の総合格闘家シリル・ガーヌ。これまでUFC公認のMMAドラマ『ザ・ケージ』(原題:La Cage/2024)に出演しているが、本格的な映画出演(しかも主演!)は本作が初となる。

バスティアンの相棒となる刑事・ケンザに扮するアリス・ベライディは、アクション満載の過酷な役柄に挑戦し見事な戦闘シーンを見せている。

 

映画『K.O.』は、2025年6月6日に配信が開始されるやいなや世界中でチャートを席巻。大きな話題を呼んでいる。

 

目次

 

映画『K.O.』作品情報

(C)Netflix

2025年製作/86分/フランス映画/原題:K.O./配信:Netflix

監督・脚本・:アントワーヌ・プロシェ 

出演:シリル・ガーヌ、アリス・ベライディ、フエド・ナッパ、マローム・パカン、イブライマ・ケイタ、アン・アズレイ、サミュエル・ジュイ、バージル・ブラムリー、マローン・エットーリ、ナフイ・ソワレ、マエバ・エル・アルーシ

 

映画『K.O.』あらすじ

(C)Netflix

総合格闘技チャンピオンのバスティアンは、試合中に対戦相手のエンゾを死に至らしめてしまう。エンゾの墓参りに行ったバスティアンは、エンゾの妻エマと息子のレオと鉢合わせにになり、レオから激しい憎しみの言葉を浴びせられた。

 

2年後、パスティアンは格闘技を引退し採石場で働いていた。エンゾの死の責任を負い、罪悪感に苛まれる日が続いていた。

 

ある日、彼が帰宅すると家の前でエマが待っていた。レオが行方不明になったと言う。父親が亡くなってから家を出て従兄と暮らし始めたレオは麻薬の売人のようなことをしていたらしい。警察に訴えても話も聞いてもらえなかったようで、彼女はバスティアンにレオを捜してほしいと依頼する。あなたはレオに借りがあるのだからと。

 

バスティアンはレオの従兄の家を訪ねるため、マルセイユへと向かい、そこでケンザという女性刑事に出会う。彼女はレオを麻薬組織の情報屋として雇っていたのだが、レオは彼女に恐ろしいものを目撃したと訴えたきり、姿を消してしまった。彼女もまた、レオを救うため、話を聞こうと従兄を訪ねて来たのだ。

 

しかし部屋は荒らされ、従兄の姿はなかった。団地前でたむろしている男たちに訪ねると、どうやら従兄はひどい目にあって病院に入院しているらしい。

 

バスティアンがレオの父親を死に至らしめてしまった話をすると、ケンザは彼が付いてくることを許可した。従兄は重症を負っており、レオの行方を知らなかったが、レオの恋人の姉が務めているクラブの名前を教えてくれた。

 

クラブに乗り込もうとするケンザだったが、署長に呼ばれ謹慎処分を受けてしまう。麻薬組織壊滅作戦にあまりにも入れ込み過ぎているというのだ。

 

ケンザが麻薬組織を憎むのには理由があった。彼女とバスティアンは協力してレオの救出に向かうが、マルセイユの裏社会の悪党たちも、秘密を知ったレオを必死で探していた・・・。

 

映画『K.O.』感想と解説

映画は総合格闘技でバスティアンが、宿敵エンゾと対戦するシーンから始まる。死闘が繰り広げられる中、観客の歓声も音を最小限に絞り、二人の肉体のぶつかり合いに観客を集中させる。三角絞めからエンゾをマットに叩きつけるラストバトルは、少しカットをつなげているとしても、しっかりと技を見せており、そのままエンゾが動かなくなって、茫然とするバスティアンに、エンゾの妻と息子の声が響いてくる。

 

事故ではあったが、罪悪感にかられ格闘技界を去ったバスティアンの前に2年後、エンゾの妻エマが現れる。行方不明になった息子のレオを捜してほしいと彼女は言う。父親を亡くしたあと、レオは従兄に引っ張られ、麻薬の売人など悪事に手を出していたらしい。バスティアンがレオに借りがあるというのはエマの本音ではあるだろうが、警察にも相手にされず藁をもつかむ気持ちだったのだろう。バスティアンは贖罪の気持ちと責任感からそれを引き受け、マルセイユに飛ぶ。背後には極悪人が仕切る麻薬団の存在があった。

 

ストーリーは至極、単純だ。フランスの暗黒映画らしく、犯罪者たちによる暴力シーンなどはちょっと目をそむけたくなるような残虐な面も多々あるが、シリル・ガーヌ扮するバスティアンというキャラクターの持つ誠実さ、心根の良さが、映画の品を上げている。

 

ネオンにまみれるクラブでの大乱闘など、元UFCチャンピオンであるシリル・ガーヌのアクションシーンがやはりこの映画の最大の見せ場だろう。クラブシーンではこのクラブ、一体何人、用心棒を雇っているの?と思わず突っ込みたくなるほど、次から次へと頑強な男たちが登場する。とりわけ、狭い階段での壮絶なバトルが素晴らしいが、シリル・ガーヌはすべてのアクションをスタントに頼らず自らこなしたという。

 

また、団地の廊下を大勢の敵に追われながら、バスティアンが全力疾走するシーンでは階下の道路上に、ロマン・ガブラス監督の映画『アテナ』(2022)や、ローラ・キボロン監督の『Rodeo ロデオ』(2022)などで強烈な印象を残したバイク軍団の姿がちらりと見える。直線の運動が一瞬、横に振れる面白さ。しかもそこから音が絞られていき、冒頭の試合シーンを思い出させたり、序盤の麻薬組織同士の対立シーンを思い出させハラハラさせたりと、単純に見えてギミックの利いたシーンになっている。

 

そんなバスティアンとコンビを組むことになるのは停職中の女刑事ケンザ(アリス・ベライディ)だ。彼女が麻薬組織壊滅に深入りするのには大きな理由があり、敵を倒すためならなんでもする二人組が身長差のある凸凹コンビなのも面白い。彼らは決してスーパーヒーローではない。彼らにも限界があるからこそ、物語に説得力がある。

 

映画『K.O.』には「目新しさ」や「独創性」はないかもしれないが、本物のアクションがある。アクション映画好きは観て損はないだろう。

 

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