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日常に潜む闇がゆっくりと浸蝕する・・・中西舞監督による短編オムニバス映画『LABYRINTHIA/ラビリンシア』8月公開決定!

短編オムニバス映画『LABYRINTHIA/ラビリンシア』(第一話『SWALLOW』、第二話『HANA』、第三話『告解』)が2025年8月15日(金)より、テアトル新宿、テアトル梅田、アップリンク京都、ほか全国順次公開される。

 

『LABYRINTHIA/ラビリンシア』は、米バラエティ誌で“注目の日本人新鋭監督10人”に選出された中西舞が、台湾・韓国・日本で撮り上げた短編スリラー3本をまとめたオムニバス作品だ。

 

中西舞は新人監督ながら、第一話『SWALLOW』、第二話『HANA』を、「哭声/コクソン』のサウンドテザインを手掛けるMonofoley Sound Worksや『哭悲/THE SADNESS』の特殊メイクチームなど、アジア各国の実力派スタッフを率いて撮影。この秀でた才能と行動力は、本作三話目の『告解』でも発揮され、主演:和田光沙、撮影監督:芦澤明子など、日本での監督デビューとは思えぬ陣容を整えての撮影となっている。

 

このたび、本作のキービジュアル2種&場面写真が解禁され、中西舞監督のステートメントと画家の上田風子のコメントが到着した。

 

(C)SAWLLOW FILM PARTNERS.(C)2018 HANA (C)CONFESSION Film Partner.

(C)SAWLLOW FILM PARTNERS.(C)2018 HANA (C)CONFESSION Film Partner.

 

短編オムニバス映画『LABYRINTHIA/ラビリンシア』あらすじと作品情報

 

第一話『SAWALLOW』(台湾・日本合作)

(C)SAWLLOW FILM PARTNERS.

 

永遠の若さ、その代償は——。
女優として成功する事に全てを注ぐ雪蘭(シュラン)。ある日彼女は女優仲間の咪咪(ミミ)から招待制の晩餐会に誘われる。10年前から変わらない咪咪の若さと美貌の秘密は、晩餐会で出される料理に隠されていると期待を膨らませる雪蘭だったが、そこで待ち受ける狂気の渦に彼女は呑み込まれて行くー。

出演:韓寧、劉黛瑩、陳雪甄/監督・脚本・編集:中西舞/プロデューサー:郭柏村、沈樺、中西舞/撮影監督:衛子揚/サウンドデザイン:Monofoley Sound Works/特殊メイク:IF SFX Art Maker
原題:喰之女/2021年制作/22分/中国語/ステレオ/台湾 ・日本

 

第二話『HANA』(韓国・日本合作)あらすじ

(C)2018 HANA

 

あるベビーシッターの恐怖の体験・・・
ベビーシッターの面接を受けにある高級マンションを訪れた大学生のスジン。彼女を待っていたのは4歳になる娘ハナの母親だった。威圧的な態度で面接を進める母親に圧倒されるスジンだったが即採用となり、その日からベビーシッターをする事に。母親が外出し、スジンはハナが昼寝から目覚めるのを待つが、彼女の周りで次々と不思議な現象が起こり始める。

出演:イ・チョンビ、チョン・ヒジン、キム・ドウン/監督・脚本・編集・美術:中西舞/プロデューサー:イ・ジュンサン、中西舞/撮影監督:イ・ジュンサン/音楽:ユン・チェヨン 
原題:하나/2018年制作/13分/韓国語/ステレオ/韓国・日本

 

第三話『告解』(日本)あらすじ

(C)CONFESSION Film Partner.

 

その懺悔は、聞いてはいけないものだった——。
教会で静かに祈りを捧げる神父の元に訪れる一人の若い女性。自身の犯した罪を告白したいと言う女性の願いを聞き入れる神父だったが、穏やかな世界を根底から揺るがす不穏な真実が神父を待ち受けていた。

出演:和田光沙、水澤紳吾/監督・脚本・編集・美術:中西舞/プロデューサー:森田一人、中西舞/撮影監督:芦澤明子/音響:弥栄裕樹

2025年制作/15分/日本語/5.1ch/日本

(全3話/総尺:約50分/カラー/配給:インターフィルム/G)

 

中西舞監督ステートメント

幼い頃、ホラーの魅力に初めて触れた瞬間がありました。小学校低学年のとき、父の VHS で観たヒッチコック監督の『サイコ』に心を奪われ、その衝撃は今も鮮明に残っています。同級生たちを家に招いて鑑賞会を開き、彼らの悲鳴を聞きながら密かに喜んでいたあの瞬間こそ、ホラーというジャンルが私の創作の核となった始まりでした。

 

私がホラー映画に惹かれるのは、平穏な日常の陰に潜む恐怖や不安を映し出せるからです。一見穏やかに見える日常の裏側にも、言葉にできない恐れや抑え込まれた声がひそんでいます。ホラーというジャンルは、そうした沈黙を打ち破り、見えないものや封じ込められた叫びをあえて浮き彫りにし、強く響かせる力を持っていると私は感じています。

 

ジャンル映画、なかでもホラーという“視点”を通して作品をつくるという行為は、私たちが普段つい目をそらしてしまう現実や、社会で見過ごされがちな感情やテーマに光を当て、それを語るための一種の闘いだと考えています。


『SWALLOW』では、女優たちの競争を通じて浮かび上がる弱肉強食の世界、美と若さに囚われた執着心、そして終わりなき成功と名誉への欲望の連鎖を描いています。『HANA』では、精神的にも肉体的にも交わることのできない、切なく歪んだ親子関係と、その陰に潜む深い絶望を静かに見つめました。そして『告解』では、社会の中でこぼれ落ちた弱者が、逃げ場のない不安と消えぬ過去に呑み込まれていく様子を描きながら、その終わりなき悲しみの螺旋をすくい上げています。

ホラーという“視点”は、単に恐怖を与えるだけでなく、私たちが普段は目をそらしがちな真実をそっと照らし、新たな理解や共感を生み出す力があると感じています。だからこそ私は、このジャンルの持つ可能性を信じて、誰もが抱える内なる闇に静かに光を当て続けたいと考えています。そして同時に、ジャンルが秘める力を信じながらも、その創作の根底には、みんなをちょっと怖がらせて楽しみたいという、あの小学生の頃の私が今も変わらずひょっこり顔を出して、こっそり笑っている気がします。

監督 中西舞

 

上田風子コメント

細部への美術のこだわりと緊張感のある演出に、深く共感しました。ホラー映画は刺激を追求しがちなものですが、中西監督の作品は、私たちを繊細で心地よい不穏な雰囲気に包んでくれます。

(敬称略)