溝口健二、小津安二郎、黒澤明と並ぶ日本を代表する映画監督・成瀬巳喜男。日常生活の心理の綾を至高の映像表現に昇華させた世界的巨匠だ。
スタジオの量産システムのなかで活躍し、サイレント期の傑作から、トーキー時代の果敢な挑戦に満ちた数々の作品、そして戦時中には戦意高揚作品を避け「芸道もの」などで活路を見出し、戦後は『めし』に続く「夫婦もの3部作」を手がけるなど、その軌跡は映画の輝きに満ち溢れている。
このたび、生誕120年を迎えるにあたって、大阪のシネ・ヌーヴォにて「生誕120年 成瀬巳喜男レトロスペクティブ」が開催される〔2025年4月26日(土)〜6月13日(金)〕。
シネ・ヌーヴォは今から26年前のオープン間もない1999年に成瀬巳喜男特集を開催し、満席が相次ぐ大反響を巻き起こした。今回の特集上映は、26年ぶりとなる。成瀬監督の全貌36本を全てフィルム作品で一挙上映する歴史的“大回顧展だ。
「生誕120年 成瀬巳喜男レトロスペクティブ」概要
【開催時期】2025年4月26日(土)〜6月13日(金)<7週間>
【開催場所】シネ・ヌーヴォ(大阪・九条) 電話06-6582-1416 大阪メトロ中央線・阪神なんば線「九条駅」徒歩3分(大阪市西区九条1-20-24)
【主催】シネ・ヌーヴォ 協力=東宝、KADOKAWA、松竹、国立映画アーカイブ
【料金】当日券:一般1600円、シニア1300円、会員・学生1200円、ハンディキャップ・高校生以下1000円 ※ただし、『夜ごとの夢』ピアノ生演奏付き上映の回のみ、特別料金 回数券:一般5回券6500円、シニア5回券6000円、会員・学生5回券5500円
※5回券は複数人数での使用不可 ※会員5回券は本人のみ(同伴者1名まで1本1200円)
【問い合わせ先】シネ・ヌーヴォ(担当:山崎)地下鉄中央線「九条駅」6号出口徒歩3分/阪神なんば線「九条駅」2号出口徒歩3分 大阪市西区九条1-20-24 TEL.06-6582-1416 FAX.06-6582-1420 e-mail: staff@cinenouveau.com
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成瀬巳喜男 略歴
成瀬巳喜男(1905年8月20日 - 1969年7月2日)
1905(明治38)年8月20日、東京市四谷(新宿区若葉町)生まれ。工手学校を卒業後、松竹蒲田撮影所に入り小道具係を経て助監督となる。監督デビューは30年の『チャンバラ夫婦』。33年の『君と別れて』『夜ごとの夢』で認められる。35年、P.C.L.(東宝の前身)に移籍し、同年のトーキー第1作『乙女ごゝろ三人姉妹』、続く『二人妻 妻よ薔薇のように』と高い評価を受け、後者はキネマ旬報ベストテン第1位に輝き、名声を確立。戦時体制が深まる中、『鶴八鶴次郎』(38)、『旅役者』(43)、『芝居道』(44)などの「芸道もの」や『まごころ』(39)、『秀子の車掌さん』(41)など戦時下の日常をとらえた作品を手がける。戦後は初めての原節子主演、初めての林芙美子原作となった『めし』(51)が絶賛され、同じく上原謙が夫を演じた『夫婦』(53)、『妻』(同)と倦怠期の夫婦を描き、この3作は「夫婦もの三部作」と称され高い評価を得た。林芙美子原作は、『稲妻』(52)、『晩菊』(54)、『浮雲』(55)と続き、特に『浮雲』はキネマ旬報第1位に留まらず映画史上の傑作として世界から高い評価を獲得。また川端康成『山の音』(54)、室生犀星『あにいもうと』(53)、幸田文『流れる』(56)、岸田国士『驟雨』(同)、士徳田秋聲『あらくれ』(57)など質の高い文芸映画を数多く手掛けている。映画の黄金期、脚本家、カメラマン、美術、照明など成瀬を支えた高度なスタッフ・ワークとともに、原節子、高峰秀子、田中絹代、杉村春子、山田五十鈴、岡田茉莉子などの女優陣の存在感を得て、スクリーンに女性の心の機微を繊細に描き続けた日本映画屈指の巨匠として揺るぎない評価を得た。60年代も数々の名作を発表したが『乱れる』(64)の成功を受けて製作された『乱れ雲』(67)が遺作となった。69年7月2日没。80年代以降、各国の映画祭で特集上映が開催され、世界で映画人たちが敬愛する世界的巨匠となった。2025年、生誕120年を迎える。
上映作品一覧
(すべてフィルム上映!)
1『夜ごとの夢』 <ピアノ生伴奏付き上映>
1933年/松竹蒲田/白黒/64分/サイレント/35mm
★鳥飼りょうさんピアノ伴奏付上映(特別料金)
2『乙女ごゝろ三人姉妹』
1935年/P.C.L./白黒/75分/35mm
3『二人妻 妻よ薔薇のように』
1935年/P.C.L./白黒/74分/35mm
4『噂の娘』
1935年/P.C.L./白黒/55分/35mm
5『女人哀愁』
1937年/P.C.L.・入江ぷろだくしょん/白黒/74分/35mm
6『鶴八鶴次郎』
1938年/東宝東京/白黒/89分/35mm
7『はたらく一家』
19'39年/東宝東京/白黒/65分/35mm
8『まごころ』
1939年/東宝東京/白黒/68分/35mm
9『旅役者』
1940年/東宝東京/白黒/70分/35mm
10『秀子の車掌さん』
1941年/南旺映画/白黒/54分/35mm
11『芝居道』
1944年/東宝/白黒/83分/35mm
12『薔薇合戰』
1950年/松竹京都・映画芸術協会/白黒/98分/35mm (国立映画アーカイブ所蔵作品)
13『めし』
1951年/東宝/白黒/97分/35mm
14『お国と五平』
1952年/東宝/白黒/92分/35mm
15『おかあさん』
1952年/新東宝/白黒/98分/35mm
16『稲妻』
1952年/大映東京/白黒/87分/16mm
17『夫婦』
1953年/東宝/白黒/87分/35mm
18『妻』
1953年/東宝/白黒/96分/35mm
19『あにいもうと』
1953年/大映/白黒/87分/16mm
20『山の音』
1954年/東宝/白黒/95分/35mm
21『晩菊』
1954年/東宝/白黒/102分/35mm
22『浮雲』
1955年/東宝/白黒/124分/35mm
23『驟雨』
1956年/東宝/白黒/91分/35mm
24『流れる』
1956年/東宝/白黒/117分/35mm
25『あらくれ』
1957年/東宝/白黒/121分/35mm
26『鰯雲』
1958年/東宝/カラー/132分/35mm
27『コタンの口笛』
1959/東宝/カラー/129分/35mm
28『女が階段を上る時』
1960年/東宝/白黒/111分/35mm
29『娘・妻・母』
1960年/東宝/カラー/124分/35mm
30『女の座』
1962年/東宝/白黒/113分/35mm
31『放浪記』
1962年/宝塚映画/白黒/124分/35mm
32『女の歴史』
1963年/東宝/白黒/126分/35mm
33『乱れる』
1964年/東宝/白黒/98分/35mm
34『女の中にいる他人』
1966年/東宝/白黒/106分/35mm
35『ひき逃げ』
1966年/東宝/白黒/94分/35mm
36『乱れ雲』
1967年/東宝/カラー/108分/35mm
上映時間など詳細は劇場HPをご覧ください。
http://www.cinenouveau.com/sakuhin/narusemikio2025/narusemikio2025.html
トークショー開催情報
⚫️4/26(土)13:40『秀子の車掌さん』上映後 ゲスト:木下千花さん(映画研究、京都大学教授)
⚫️4/27(日)15:05『二人妻 妻よ薔薇のやうに』上映後 ゲスト:筒井武文さん(映画監督)
⚫️5/3(土)14:30『稲妻』上映後 ゲスト:渋谷哲也さん(ドイツ映画研究)
イベント開催情報
⚫️ピアノ生演奏付き上映
5/3(土)13:00『夜ごとの夢』、5/8(木)19:10『夜ごとの夢』の上映は、ピアノ生演奏付き
演奏:鳥飼りょうさん(楽士)