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映画『アンストッパブル』(2010)あらすじと解説/トニー・スコット監督による実話を基にした鉄道パニックスリラー

ペンシルバニア州の操車場に停車していた最新のディーゼル機関車が整備員のミスで無人のまま猛スピードで走り出してしまった。機関車には大量の有毒化学物質が積まれていることが判明。大災害を阻止すべくふたりの鉄道員が立ち上がる!

 

映画『アンストッパブル』(2010年)は、実際に起こった鉄道事故を基に、緊迫感あふれるストーリーが展開する。監督を務めたのは『トップガン』(1986)、『トウルー・ロマンス』(1993)などで知られるトニー・スコット

トニー・スコットは2012年に惜しくも亡くなり、本作が遺作となった。

 

主人公のベテラン機関士と新米車掌を演じたのはデンゼル・ワシントンクリス・パイン。モンスターと化した機関車を彼らは止めることができるのだろうか!?

 

目次

 

映画『アンストッパブル』作品情報

(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX

2010年製作/99分/アメリカ映画/原題:Unstoppable

監督:トニー・スコット 

製作:ジュリー・ヨーン、トニー・スコット、ミミ・ロジャース、エリック・マクレオド、アレックス・ヤング 製作総指揮:クリス・シアッファ、リック・ヨーン、ジェフ・クワティネッツ 脚本:マーク・ボンバック 撮影:ベン・セレシン 美術:クリス・シーガーズ 編集:クリス・レベンゾン、ロバート・ダフィ 音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ

出演:デンゼル・ワシントン、クリス・パイン、ロザリオ・ドーソン、イーサン・サプリー、ケビン・ダン、ケビン・コリガン、ケビン・チャップマン、リュー・テンプル、T・J・ミラー、ジェシー・シュラム、デビッド・ウオーショフスキー

 

映画『アンストッパブル』あらすじ

(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX

ペンシルベニア州南部のブルースター操車場。28 年目のベテラン機関士フランク・バーンズ(デンゼル ワシントン) は、その日、旧式ディーゼル機関車1206号を運転するため新米車掌のウィル (クリス パイン)と初めてコンビを組むことになった。最初からふたりはそりが合わず、ウィルが簡単なミスをしたこともあり、車内はピリピリしたムードに包まれていた。

 

一方、ペンシルベニア州のフラー操車場では、従業員のデューイとギリースの怠慢な操作により、思わぬ事故が起きていた。彼らは空気ブレーキが機能していない状態で列車を動かしたため、39 両編成の最新ディーゼル機関車777号が無人のまま走り出してしまったのだ。連絡を受けた操車場長のコニーは、従業員に連絡して線路の切り替えを命じるが、従業員が待てども機関車は来ず、既に列車は通過していたことが判明する。777号は彼らの予想以上のスピードで進行していたのだ。

 

最悪なことに、その列車は発火する恐れのある有毒化学物質を大量に積んでいることが判明する。しかも列車はスタントンの市街地に続く危険なカーブに向かって爆走していた。カーブの外側には燃料集積所が密集しているのだ。

 

コニーは、列車を無人地帯で脱線させ列車を止めることが大惨事を回避する最良の方法だと会社の重役たちを説得しようとするが、彼らはコストを抑えることにこだわり、1億ドルを節約できる可能性のある別の作戦を決行する。しかし作戦はあえなく失敗し死傷者まで出してしまう。777号は時速70マイル以上で爆走し続けていた。

 

このままではフランクとウィルの1206号と777号が衝突してしまう。そのことを知らされたフランクは間一髪で危機を回避する。

 

777号が有毒化学物質を大量に積んでおり、自分たちの家族が住むスクラントン方向に暴走していることを知ったフランクとウィルは、なんとしても777号を止めなくてはならないと独自の計画を考案。777号を追走し始めた。

 

彼らの行動を知った会社側は激怒して、言うことを聞かなければクビにすると宣告するが、会社側の作戦はことごとく失敗に終わる。

 

果たしてフランクとウィルは暴走機関車を止めることが出来るのだろうか!?

 

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映画『アンストッパブル』感想と評価

(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX

映画『アンストッパブル』(2010)は、暴走する貨物列車を止めるために奔走する二人の鉄道員を描いた息つく暇もないアクション・スリラーだ。トニー・スコット監督は、緊張感と迫力を表現するのに並外れたスキルを発揮している。

 

物語は、経験豊富な機関士フランク・バーンズ(デンゼル・ワシントン)と新米車掌ウィル・コルソン(クリス・パイン)が、暴走機関車がペンシルベニア州南部の住宅密集地のカーブに差し掛かる前になんとしても止めようとする姿を中心に展開する。

 

ケビン・ダン演じるガルビンたち重役グループは、この大惨事になるかもしれない事故に対して、コストを抑えることばかりを重視する。当然のごとく作戦は失敗続きで、事態は悪化するばかりだ。こうした設定はいかにもありがちだが、現実世界を見てみれば、そうした実例は溢れかえっている。マーク・ボンバックの脚本はそうした実情を巧みに利用している。だが、ボンバックとトニー・スコット監督は本作を社会派路線に広げるようなことはせず、ストーリーを最低限の要素に絞っている。つまり、モンスターと化した暴走機関車をいかに止めるかということだ。

 

この映画の最大の魅力は、「鉄道員のほんのちょっとしたミスでアンストッパブルな鉄の塊となった列車」という設定にあると思う。もしこれがテロリストによる悪巧みといった人間の意志や意図が入ってくるものだったなら、ここまで純粋な迫力は出なかっただろう。まったく意思を持たない鉄の塊がまるでモンスターのように見えてくる演出が素晴らしく、コンピューターによる遠隔操作などでは到底止められないというアナログな状況が、独特の面白さを引き出している。

例えるなら、アクション映画で武器を捨てた男たちが素手と素手で戦うようなものだ。飛んだり落ちたりしがみついたり、人間の肉体の駆使こそがアクション映画に欠かせない要素であることを、改めて確認させてくれる作品と言えるだろう。

 

デンゼル・ワシントンとクリス・パインはこれまでも何度か共演しており、すこぶる息の合ったところを見せている。ふたりが演じるフランクとウィルは、決してスーパーマン的なヒーローではない。彼らは家族を護りたい一心で、暴走列車を止めようと尽力する。

決して良好とはいえない雰囲気だったふたりが極限状態の中で互いに理解を深め、徐々に信頼を築いていく様が私たちの胸を熱くする。

 

フランクは勤労28年目のベテラン機関士で、彼の長年の経験や技術がなければ難事に挑むこともできなかっただろう。本作は人間の肉体と、経験がもたらす力への大いなる賛歌でもあるのだ。

 

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