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映画『輝け星くず』西尾孔志監督の公式インタビュー&映画人応援コメントが到着。新宿K's cinemaでの舞台挨拶スケジュールも解禁!

『ソウル・フラワー・トレイン』(2013)『函館珈琲』(2016)などの作品で知られる西尾孔志監督の新作映画『輝け星くず』が、2024年6月15日より新宿K's cinemaにて公開される。

 

製作総指揮に『シャニダールの花』(2012)の金延宏明、脚本を『函館珈琲』の脚本家いとう菜のはと西尾監督が務め、社会が失敗に容赦なく、再スタートを切ることが困難な今の世の中で、誰かに信じてもらうことが底辺脱出の大きな力となる様子を、時にコミカルに、時に感動的に描いている。

 

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テレビドラマ『隣の男はよく食べる』(2023)や映画『夢の中』(2024)などの作品で知られる山﨑果倫と『ミッシング』(2024)で石原さとみの弟役を繊細に表現した森優作がどこかアンバランスなカップルを絶妙に演じ、謎が多いが憎めない父を岩谷健司が怪演。また、片岡礼子、中山求一郎、春田純一など日本映画の才能が集結し、がっちり脇を固めている。

 

地元有志の協力を得て兵庫県・明石市全域でロケ撮影された本作は、主人公の「なかなか外に踏み出せない」心情の象徴としての明石海峡大橋や、星のように輝く明石市の海と夜景など、映画的な風景の美しさも見どころになっている。

 

このたび、西尾孔志監督の公式インタビューと映画人応援コメントが到着。また、新宿K’s cinema劇場公開で実施予定の舞台挨拶の登壇者情報が解禁された。

 

映画『輝け星くず』西尾孔志監督公式インタビュー

(C)ノブ・ピクチャーズ

──本作の企画はどのような経緯で始まったのでしょうか。

 

西尾孔志監督(以下、西尾):きっかけは僕が大阪のミニシアター・第七藝術劇場の公式YouTubeチャンネルで、小谷忠典さんのインタビューを収録したことでした。
同じ専門学校の出身として旧知だったので、久々にいろいろな話をして楽しい時間を過ごした後、小谷さんからメールが届いたのです。「この脚本を監督してみませんか?」と。それが『輝け星くず』の原作となる脚本でした。
そんなタイミングで、『ソウル・フラワー・トレイン』でもお世話になった前田和紀プロデューサーから「西尾監督の『函館珈琲』を気に入ったと言ってくれたプロデューサーがいる」と連絡がありました。
その方が『輝け星くず』のエグゼクティブプロデューサーを務めた金延宏明さんであり、預かっていた小谷さんの脚本を金延さんに読んでもらったところ、「ぜひこの映画をやろう」と仰ってくださったんです。

 

──メインキャストの山﨑果倫さん、森優作さん、岩谷健司さんの俳優としての魅力をお聞かせください。

 

西尾:山﨑さんはオーディションの中で、群を抜いて気合と迫力がありました。実際の演技でも、ふとした瞬間に「とって喰う」ような動物的な気迫があり、この作品にただのコメディ映画ではない人間的な厚みを与えてくれています。
とても芯の強い女性であり、どこか生活者としてのリアリズムも感じられる。それでいてとてもチャーミングなので、これからもどんどん活躍されると思います。
森さんは『佐々木、イン、マイマイン』での演技がとても素晴らしく、オファーを受けてくださった時は飛び上がるほど嬉しかったです。森さんが他の作品で見せる繊細で存在感のある芝居がコメディだとどんな風になるのか楽しみで、結果は最高でした。
関西出身なのもあり、ボソッとしゃべるツッコミのセンスが良いんです。「もっとコメディでも森さんを観たい」と思わせてくれる本作での台詞回しを、全部聞き逃さず観てほしいです。
岩谷さんはキャスティングの伊藤直哉さんに勧められて『At the terrace テラスにて』を観たり『岬の兄妹』を観返したりして、この怪しい人物を任せても良いのはこの人だ!と思い至りました。岩谷さんが持つ優しさと気弱さとユーモアは、この映画の根幹を形作っています。
無理難題に対しても、こちらを信頼して演じてくれていると感じることが何度もあり、その大きな優しさに救われました。とっても懐の深い役者さんです。お三方とも「また一緒に作品を作りたい」と本気で思っています。

 

──ロケ撮影が行われた兵庫県明石市の魅力をお聞かせください。

 

西尾:遠く海へと続く長い坂のある風景は、映画の舞台として本当に魅力的です。大林宣彦作品で有名な尾道や、僕もかつて作品を撮った函館などはその例になります。そして関西では、明石が最高のロケ地なのではないでしょうか。
また、海や山など大きな自然を背景にすると、人間が小さく見えます。そういう土地では人間は偉そうに振る舞わないのだと思います。優しさをもって身を寄せ合い、助け合って生きている。そういう街の映画を撮りたかったので、明石はまさにぴったりでした。

 

──今回の『輝け星くず』をはじめ、西尾監督の映画をご覧になった方の多くは、作品によって「癒し」を感じたと語られています。

 

西尾:私自身は「癒し」を意識して映画を制作していないんです。お客さんに映画を楽しんでもらい、結果的に日々の疲れが癒えたり、人生の救いになったりする映画を届けたいとは思いますが、あまり意識して「癒し」という要素を盛り込んでいるわけではないです。
ただ、競争や争い事が苦手な性分で、自分が描く作品でもそれらを大げさに扱いたくないと考えています。そうした考えのもと映画を制作するから、お客さんからよく「優しい作品ですね」と仰ってもらえるのかもしれません。
また私は大阪の下町で生まれ育ったので「人情」と呼ばれるものがDNAに根付いているんだと思います。人と人同士のつながりや、個人の生活のささやかな営みや幸せが、決して古いものではなく今も価値があるものだと信じています。

 

──『輝け星くず』は西尾監督にとって、どのような意味や価値を持つ映画となったのでしょうか。

 

西尾:本作の中心には「人生の再出発」というテーマがあるわけですが、私自身にとっても「再出発」の意味が込められた映画だと感じています。
映画監督だけでなく、プロデューサーや京都ヒストリカ国際映画祭のディレクター、第七藝術劇場での動画撮影のお仕事など、様々な形で映画に関わる仕事を続けていたんですが、ふと気づいたら6年間ほど監督作がないと気づきました。
コロナ禍もあり、自分でも映画から離れているという感覚はなかったんですが、うっかり映画監督として少し長めの休みをとってしまったからこそ、『輝け星くず』で再出発したいという思いがありました。そんな作品のテーマとのリンクによって、かなり気持ちを乗せて映画を制作できました。
金延さんと前田さん、キャスト・スタッフの皆さんのおかげで、再出発の地点に立てました。そして完成した映画も、自分自身にとって自然体・等身大な作品になったと感じています。

 

──扇町キネマ、元町映画館での先行上映を経て、ついに新宿K’s cinemaでの東京公開を迎える現在の心境をお聞かせください。

 

西尾:地元での上映は、実家のような温かさがあります。先行上映ではその温かさにたくさん触れさせていただきました。
そしていよいよやってくる東京公開は、「達者でな」と我が子を見送るような心持ちです。きっと強くて優しい子に育ったので、皆さんに愛されると信じています。

 

映画人からの応援コメント

(C)ノブ・ピクチャーズ

金子雅和(映画監督)
劇中で「おれ、自由じゃないと駄目なんだ」と言い続ける元マジシャンの中年男と、その娘&彼氏。
彼らの怯えるような日常と同様、様々なことに囚われすっかり自由さを失ってしまった私たちの心に、西尾孔志監督が「映画のマジック(魔法)」をかけてくれる。

 

辻凪子(俳優)
相手のことを否定しない優しい星くずたち。
私もだれかの特効薬でありたい。
西尾さんの映画は人間味に溢れた人達が居て、世界が綺麗に輝いて映る。

 

長谷川千紗(俳優/映画監督)
自分の弱さを自覚しつつ、他人に対してはどこまでも優しい登場人物たち。
過激な題材を扱ってはいるけれど、瀬戸内に流れる心地の良い穏やかな時間のような映画でした。
他人に対する優しさを、自分に向けてあげてもいいんじゃないかな。
あなたが傍にいてくれるなら、そうできるような気がする。

 

小野峻志(映画監督)
西尾孔志監督は普段「『野球どアホウ未亡人』を観て泣いちゃった」とかワケワカランこと言っているくせに、こんな王道の人情喜劇を撮ってしまうからホントにズルいです!私の出来る仕返しといえば、『輝け星くず』でキラキラした魅力を放つ山﨑果倫さんにバカな役を演らせてこの感動をぶち壊すことぐらいです。

 

溝井辰明(映画監督/写真作家)
「若いうちに失敗はしておけ」
とはよく言いますが、失敗してしまった人の受け皿は実際どれくらいあるのだろう。
他人の失敗に厳しい世の中で、そっと光る小さな星、それがこの映画『輝け星くず』ではないでしょうか。 

“普通”という道から外れてしまった彼女・かや乃を支える光太郎、そんな彼が優しく握ったのは…彼女の父親の手!?
平坦ではない、近道もない、それでも人と人は繋がっている、愛情という架け橋で。

 

太田真博(映画監督)
絵本のような映画だ。
監督は勇気ある引き算によってリアリティや切実さを遠ざけた。ぽっかりと空いたその隙間には、甘っちょろさにも似た優しさがこれでもかと詰め込まれている。
優しすぎて誰かの背中を押す力は弱めかもしれないが、背中を押されずとも生きなくちゃ! と逆説的に力強いメッセージをくれているような気もする。
逮捕歴のある自分は、こんなことを感じた。

 

七里圭(映画監督)
しみる映画でした。つながりに繋がれて、ゆるやかな監視と管理を受け入れつつある世の中で、「自由でないとダメなんだよお」というオヤジのボヤキは、心に響くなあ。

 

松崎まこと(映画活動家/放送作家)
クズはクズのままでも、
輝く術は、きっとある…。

心がぶっ壊れてしまった父と娘に、
振り回されながらも優しく寄り添う青年という構図が、
西尾孔志監督が敬愛する
亡き森崎東の”重喜劇”を彷彿とさせた。

 

山口淳太(ヨーロッパ企画/映画監督)
ダイナミックな風景と、ミニマムな人間模様。
パニック障害の表現の、実にリアルでありつつ可愛くて優しいところ。
対比であり白黒つけない西尾監督の演出が素敵でした。
悲しさを忘れるくらい絶望的で、未来が無くて、ほかの選択肢も無いそんな状況でも、一緒にいてくれる人がいる尊さを改めて感じます。

(敬称略・順不同)

 

新宿K’s cinema舞台挨拶・登壇者情報

(C)ノブ・ピクチャーズ

【6月15日(土)18時45分〜上映回】
山﨑果倫(かや乃役)森優作(光太郎役)金延宏明(製作総指揮) 西尾孔志(監督)

【6月16日(日)18時45分〜上映回】
山﨑果倫(かや乃役)森優作(光太郎役)金延宏明(製作総指揮)西尾孔志(監督)

【6月17日(月)18時45分〜上映回】
《ゲスト》今西祐子(映画監督・脚本家)/いとう菜のは(脚本)西尾孔志(監督)

【6月18日(火)18時45分〜上映回】
《ゲスト》佐々木敦(思考家/批評家/文筆家)/西尾孔志(監督)

【6月19日(水)18時45分〜上映回】
《ゲスト》七里圭(映画監督)/中山求一郎(三島役)西尾孔志(監督)

【6月20日(木)18時45分〜上映回】
《ゲスト》小野峻志(映画監督)/西尾孔志(監督)

【6月21日(金)18時45分〜上映回】
《ゲスト》Azumi [Wyolica](シンガー)/西尾孔志(監督)

【6月22日(土)18時30分〜上映回】
《ゲスト》安川有果(映画監督)/西尾孔志(監督)

【6月23日(日)18時30分〜上映回】
片岡礼子(友代役)西尾孔志(監督)

 

*全日程、映画本編の上映後に実施いたします。
*登壇者・ゲストの都合等による変更・中止の可能性がございます。予めご了承下さい。
*6月24日~28日の舞台挨拶情報も、後日解禁予定。

 

映画『輝け星くず』あらすじ

(C)ノブ・ピクチャーズ

ある日突然、かや乃が逮捕される。恋人の光太郎は状況が飲み込めない。呆然とした日々を過ごしていると、かや乃の父・慎一から呼び出される。

「かや乃が勾留されてる海の向こうまで一緒に連れて行ってくれないか?」と慎一の頼みを引き受けた光太郎。だが慎一は、自称パニック障害の持ち主で電車はおろか、高速道路でさえ移動ができない。

初対面の恋人の父とギクシャクした心の距離を感じながらも、愛する人が囚われている地・四国へ向けて、海を渡る旅を決行する光太郎。だが旅の途中── 慎一がこの世にいないことになっている人物であると発覚する・・・。

 

映画『輝け星くず』作品情報

(C)ノブ・ピクチャーズ

 

2023年製作/90分/日本映画
監督:西尾孔志  原作:小谷忠典  脚本:いとう菜のは、西尾孔志 製作総指揮:金延宏明  プロデューサー:前田和紀、金延宏明 撮影監督:牧野裕也  録音:大澤竜、 西村由香 助監督:山田元生、小川泰寛/永井和男、有友由紀 編集:西尾孔志、小川泰寛  整音:中村崇志  音楽:クスミヒデオ エンディング曲:森絢音「覆水不返」 宣伝:Cinemago  宣伝協力:とこしえ 製作・配給:ノブ・ピクチャーズ
出演:山﨑果倫、森優作、岩谷健司、片岡礼子
春田純一、滝裕二郎、中山求一郎、湯浅崇、松尾百華、三原悠里、芳野桃花、木下菜穂子、池畑暢平、保志まゆき、小泉研心、国海伸彦、佐保歩実、金延宏明、小川夏果、宮崎柚樹、円籐さや、奥村静耶 、川瀬乃絵

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