チェコでは子どもの6割が親の制限を受けずにインターネットをしており、41%がみだらな画像を送り付けられた経験があるという。
監督のバーラ・ハルポバーとビート・クルサークが、大人の男がSNSを通じて少女に与える性的虐待を可視化し、記録しようと企画したのが本作『SNS-少女たちの10日間-』だ。
幼い顔をしている18歳以上の女優に「12歳」と偽らせ、友達募集のSNSに登録する。すると、プロフィールを上げただけなのに、すぐにフォロワーがつき、最終的に10日間で2458人もの男性がアクセスして来たのだ。女性たちはその間、性的搾取を受け続けた。
まさにIT時代の闇に迫る一作だ。
目次
映画『SNS 少女たちの10日感』作品情報
2020年製作/104分/R15+/チェコ/原題:V siti/監督・脚本:バーラ・ハルポバー、ビート・クルサーク 撮影:アダム・クルリス
出演:テレザ・チェジュカー、アネジュカ・ピタルトヴァー、サビナ・ドロウハー、バーラ・ハルポヴァー、ヴィート・クルサーク
映画『SNS 少女たちの10日感』感想・レビュー
映画はまず、女優のオーディションシーンから始まる。応募してきた女性の多くが、子供時代にSNSによる性的搾取の被害にあっていることが語られる。
3人の女性が選ばれると、今度は巨大な撮影スタジオに彼女たちの「子供部屋」が作られる。大きなスペースに3つのカラフルな子ども部屋が出来ていく過程が面白い。
さてそこから、「12歳の子ども」相手に、男たちが群がって露出するは、裸になれと要求するわ、実に恐ろしい世界が展開する。こうした惨状が野放しになっている実態に映画は鋭く切り込んでいく。
途中、その醜い男たちの中に、子どもたち相手のツアーガイドをやっている男がいるとスタッフのひとりが気付く。12歳の女の子に自分の性器の写真を送りつけるような男が子供相手の仕事をしていることにぞっとさせられるが、映画スタッフが、女優を連れて男に直撃するのは懸命な方法とは言えないだろう。
実際に他の男たちとも遇う試みをしており、この種の男たちを甘く観ているのではないかと懸念してしまう。男たちの顔はボカされているものの、本人を特定できる確たる証拠が手元にあることが、作り手たちを強気にさせているのだろうか。ドキュメンタリーとして危うい面を感じてしまう。
だが、そうした面を差し置いても、本作が訴えるものの深刻さを直視し、真摯に受け取る必要があるだろう。
映画のラスト、親に対しての警告がスクリーン上に大きく現れ、エンディングに流れる音楽の音がだんだんと激しく大きくなっていく。
ここで鑑賞者の多くは思い出すことになるだろう。映画の冒頭を飾る映像の数々を。
子どもたちが(中にはとても小さい子どもたちも)無心にスマホを覗いているシーンが矢継ぎ早に映し出されていたのだ。そのあまりにも無防備な様に映画を見終えた誰もが言いようのない感情を抱くだろう。